第7章 - 4

「くらうがいい!!」

こわもてプレートが黒く光ると、暗黒の波動が襲い掛かって来る。
「させないよー!」
ムウマージのサイコウェーブと波動が衝突し、衝撃波を伴い相殺される。
「アルセウスッ!!!」
バチバチと怒りで頬袋から電気を放出させながら、ピカチュウが一直線に向かってくる。
アルセウスが再度こわもてプレートを使い、暗黒の波動を出したと同時に斜め横から10万ボルトが飛んで来た。
石版に命中し、こわもてプレートは砕け散った。

「何!?」

暗黒の波動を受けたピカチュウの体は消滅した。
身代わりによる囮だった。
斜め横から10万ボルトを放った本体がアルセウスに肉迫し、アイアンテールで顔面を強打する。
「はぁっ!!」
その隙をチャーレムが逃す訳も無く、はっけいでたまむしプレートを打ち砕いていた。


「おのれッ!!!」

突如体が重く感じたと思った次の瞬間、動きが鈍くなった一瞬をアルセウスのしんそくが捉えた。
じゅうりょくでほんの一瞬だが、動きを遅くされた!!
攻撃を受け、宙へ浮かんだピカチュウの元にアルセウスが飛んだ。
口を開き、全てを破壊する光が放たれる……!!

はかいこうせんがピカチュウを飲み込む寸前で、ピカチュウの体が横にずれた。
否、ずらされたのだ。
更に追撃をしようとしたが、アルセウスは反動で動けず、ピカチュウはゆっくりと下降していった。

「間に合ったな!七武海のエレキブル参上だ!!」
「フッ、七武海の初仕事はいきなり大仕事だな……。」
「雑用よりマシだろ。」
「……。」

どうやら、さっきのはユンゲラーの念力だったらしい。
降り立ったピカチュウにエレキブル、ユンゲラー、ドクロッグ、ドーミラーの四匹が駆け寄る。
「助かった。敵はアルセウス……あいつだ。あいつの周囲にある石版を破壊すれば、力が弱まるはずだ。」
「了解だ。」「ケッ、楽勝だろ。」「ドクロッグ、あまり相手を甘く見るなよ。」「そういうこと。」
エレキブル達も加わり、再びピカチュウは戦闘態勢に入った。

「何人集まろうと、無駄な足掻きだ。それがまだわからんか!!」
アルセウスの咆哮が辺りに轟いた。
耳が痛い・・・。これは、ハイパーボイス。
「も、もう駄目だぁ~。」
ヤミカラスやニューラ、ユキカブリ達はアルセウスの攻撃に耐えられず、次々と倒れていった。


そこに・・・

「ココハ、ボクタチノデバンダ!」
「ビビビ・・・パワー充 填 完 了 !」
「 超 伝 導 合 体 !」
「 超 蟹 機 神 ! メ タ グ ロ ス !!」
あれはダンバル達・・・、1分しかもたないのに。やられるぞ!

「モードチェーンジ!節電モード!」
ガタン!ゴトン!ガチャーン!
「 超 蟹 貴 神 ! メ タ ロ ー ド !!」
「アレ?ウマクウゴカナイゾ!」
「ウワー!キシキシイッテルヨー!」

「何で、アイツ等動かないんだ?」
と、俺はロゼリアに問う。
「デマポケだからだと思います。」

アルセウスが口を開きだした。色は赤色だ。
もしや、火炎放射?!ダンバル達・・・、早く逃げろー!

「ワー、ミンナブンカイシテニゲルゾー!」
「オー!」
ダンバル達は逃げていった。後ろにいた、ミノマダムとコロトックも火炎放射に恐れて逃げていった。
何しに来たんだ、お前等は。


「くははは!身の程をわきまえぬクズ共が!大人しく排除されればよいものを!」
逃げ惑う奴らを横目で見ながら、アルセウスは嘲笑する。

「俺達はもう、誰かの言いなりになどならん!」
「ケッ!てめえはギンガ団よりよっぽどタチが悪いぜぇ!」
「ゆるさないー!」
エレキブル達は息巻いた。
「ピカチュウ、話は聞いた…自我を持つ事を許されぬ者の苦しみ、俺達にはよく分かる」
「ユンゲラー…」
「自分勝手な奴らの犠牲となった、親友の為にも…俺達は戦う!」
そう言うと、ユンゲラーはアルセウスを睨んだ。

「小癪な!喰らえ!」
黄色の石版が内側から光を放ち、バチィッという音と共に火花を散らす。
次の瞬間、稲妻が束となってピカチュウ達に襲い掛かった。

「雷だ!」
「まかせろ!」
エレキブルが飛び出し、盾となって稲妻を受け止める。
「ぐおおおおお……!」
後ずさる体が、バチバチと青白くスパークする。
「大丈夫か?!」
「こんなの…お前の10万ボルトに比べりゃ…くすぐったいだけだぜ……!」

衝撃が治まるやいなや、再び石版が光り出す。
「また来るぞ!ピカチュウ!皆を別の場所へ移動させろ!」
白く発光しながら、エレキブルが叫んだ。
「よし!左右に別れろ!残りの石版を狙え!」
皆が走り出す中、ミミロップが急にもんどり打って倒れ込んだ。
「何してる!早く来い!」
「くっ…!待って…!」
すり抜けた雷が、ミミロップの自慢の足を傷付けていた。


「まったくお前は!」
ピカチュウが走り寄ろうと向きを変えた途端、轟音と共に、動けないミミロップ目掛けて稲妻が走った。
「きゃあああーーーー!」
「ミミロップー!」
だがその時…
遥か後方から急上昇した影が、閃光を一身に浴びる。

ばささっ………

電撃の代わりに、ミミロップの頭上に茶と白の羽毛が降り注いだ。
残りは…
「ム、ムクホーク?!」
焼け焦げた体が垂直に落下し、地面へ叩き付けられた。

ミミロップは足を引き摺りながら、ムクホークの元へ急ぐ。
「ムクホーク!あなたは…!」
「…ロ…ローストチキンに…なっちまた…へへ…」
「バカ…!電気は弱いのに…何で…何で…?!」
思わずミミロップは、煙を上げるムクホークにすがり付いた。

「…へ…へへ…弱気で…情けない…俺が……ちゃんとミミロップたんを…守ったって……さすが…に…ニャルマーも……褒めて…くれ……………」
ミミロップに見つめられ、ムクホークは満足そうに目を閉じた。


「メインディッシュの焼き加減はお気に召したか?」
黒焦げになったムクホークを見下げながらアルセウスはそう言い放つ。
「アルセウス…!!あんた最低よ!」
ミミロップがそう言うと、アルセウスは満足そうに口の両端を歪ませる。
「くくく…生憎、ワインの方はきらしていてな。これで我慢してくれたまえ。」

藍色の石板が光る!
凄まじい水圧の水の刃がミミロップに迫る。
「間に合えぇっ!」
俺はミミロップの方へ駆ける!…だが水の刃の方が早い!
ミミロップまで後数十センチというところまで水の刃が迫ると、三つの影が先にたどり着き刃を凍える風で凍らせ砕く。
生き残ったニューラ達だ!

「ギリギリだったっつーの!」「危なかったわね。」「もー少しで真っ二つ!ギャハハ!」
「あなた達生きてたのね!」
「ほとんどニューラは残ってねえっつーの…」「マニューラも…ね…」「残ったのはオレ達だけ!究極の腐れ縁!ギャハハ…ハ…」
「そう……。」
「悲しんでいる暇なんてないっつーの!」「動けないんでしょ?あたしらに乗りなさい。またあん時みたいに足になったげる。」「でかくなったな、お嬢ちゃん!ギャハハ!」
「ごめん…助かるわ。」


「まだ虫が生きていたか!」
「虫はしぶといんだっつーの!」「ただじゃ死なないわ。」「黒光りして足も早い!ギャハハ!」
「そうか…ならば徹底的に駆除しなければな。」
先程より強く藍色の石板が光る!
ゴゴゴゴゴゴ…と地響きが起こる。
ピカチュウ達が振り返ると数十メートルはありそうな津波がこちらに迫ってきていた!
「死者の川まで流してやろう!」

「マズイッ!飛べる者は出来るだけ高く飛べ!余裕のある者は飛べない仲間を助けろっ!」
「「「は、はい!」」」
俺は急いで指示を出す。
ヤミカラスとゴースト達が飛べない者を運んでいく。
「ボ、ボスも!」
「俺は後回しでいい!」
飛べる仲間の生き残りが少ない。あぶれてしまった飛べない仲間も多い。
「く…っ!」
「俺達の事は気にすんな!」
ドクロッグがそう言う。
「だが…!!」
「どうせ一度死んだ身よ!」
……!!
「念力で上空まで運べるのは後一人で限界だ、急げ!」
ユンゲラーが叫ぶ!
「すまない… !」
そう言おうとした瞬間、青い板状のポケモン…ドーミラーの姿が目に入る。
「いや、他の奴を運んでやれ!ドーミラー!!その一度死んだ身を貸してくれ!」
「わ、わかった!」
「何をする気だ…?」
ユンゲラーが問う。
「ピカチュウ族の器用さをなめるな!」

 波 乗 り だ !!


ピカチュウの波乗りで、しずくプレートは砕け散る。
「水は大切にしろよ。なっ?」
「こ、この野郎っ!」

残るプレートはいかずちプレート。
そしてもう1つ…なんだろうか。このプレートには不思議な力を感じる。


「も…も、ダメ…」
ドーミラーが目を回して倒れる。
乱暴に乗り回した上、あれだけの波に乗るために無茶な念力を使わせたのだ、無理もない。
……すまん。

「ぐう…我が加護は既に受けていないというのに…何だというのだ!?」
「ピンチをチャンスに変えるあの力…!」
「今までの勝利もアルセウス様のお力だけでは無かったということでしょうか…?」
「この賭け、もしかしたら本当に…!?」
アルセウスとエムリット達は驚いているようだ。
自分でも無理は感じていた。ドーミラーの形状、常識では考えられないほどの津波、ドーミラーは本当によく耐えてくれたと思う。
「…あ、カブトとプテラが見える…死んだはずの古代の旧友達が川の向こうで…」
「ド、ドーミラー!そっちに逝っちゃダメだ~!」
ドクロッグがドーミラーを呼び戻そうと必死に揺すっている。
……すまん。

「ふん、少し驚いたが、そのような曲芸が出来たところで何だというのだ。我に勝てるわけがない!」
…さて、無事に波を受け流したからといって安心している暇などない。
気を入れ直すとしよう。

飛べない者を飛べる者に救出させたが、飛べる者の数はもう少なく……。
…ユキノオーの姿が見当たらない。傷つき倒れた仲間達の亡骸も…。
「ボロきれ共は無事に死者の川まで流れたようだ。ギラティナ亡き今、転生はかなわんがな…くく」
「お前の挑発にはもう乗らない…!」
俺はアルセウスを睨む。

「それは残念だ。」


水は徐々に引き始めたが、アルセウスの前では黄と紫の石版が、同時に鋭い光を放つ。
「まとめていくぞ!その減らず口、あの世で後悔するが良い!」

轟音と共に激しい雷が轟き、衝撃と共に竜巻が俺達に迫る。
「……くっ!」
俺達は吹き飛ばされまいと足を踏ん張り、少しでも電撃を避けようと身を屈めた。
その時、
「危ねえ……!どけ!」
「…むうう!絶対零度……!」
手前に飛び出した影に稲妻は大きく弾け、竜巻は凍り付いた大気の壁に阻まれ勢いを失った。
「エレキブル!ユキノオー!生きていたか!」
「ああ…今のはちと効いたがな…」
俺との死闘の時同様、エレキブルの背中から白煙がもうもうと上がっていた。
「わしだけは何とか持ち堪えた……だが、ユキカブリ達はもう…」
ユキノオーの巨体も、今までの戦いでボロボロに崩れかけていた。
あと一撃でも喰らえば、こいつらは……
だが……

「…攻撃は、全部俺が受け止める!お前らはその隙に石版へ突っ込め!」
エレキブルは、戻って来たユンゲラーとドクロッグに言った。
「また親友を失ってしまった…このまま、ただで死ぬ訳にはいかん!」
「おう!ドーミラーの仇はぜってえ取るぜ!」

「あれは竜の力じゃ……ならば、わしが体ごと氷を叩き込めば…」
ぐらりと倒れかけるユキノオーを、ニューラ達とチャーレムが支えた。
「ジジイ一人じゃ無理だっつーの!」「あんたとは同盟者だからね」「年寄りは労らなきゃ!ギャハハ!」
「我が囮となろう…竜の目がこちらへ向いた時、皆で一斉に攻撃するのだ」

「待て!お前ら!まさか……?!」

特攻…玉砕……という言葉が、俺の頭を過った。


「あの石版は、俺達七武海が引き受ける!お前らは、ただまっすぐにあの馬面を狙え!」
「そうじゃ…アルセウスを倒せるのは、ピカチュウ殿の他に誰もおらん!」
止めようとする俺に、エレキブルとユキノオーが同時に叫んだ。
「あなた方は、私達がお連れしますよ、あそこまでねヒヒヒヒヒ…」
ゴースト達を引き連れたサマヨールが、アルセウスの方を指差した。
「こんなの柄じゃないが…ゲンガーだけに正義の味方ヅラさせるのは癪ですからねヒヒヒ…」

「ピカチュウさん!行きましょう!」
「あいつやっつけよ~!」
「拙者共は一蓮托生にござる!」
「あなたと一緒なら、たとえ地獄へ墜ちても怖くない!」
手下共も俺に叫ぶ。
「ここで倒れてはなりません。あなたはシンオウの、いえ、全ポケモンの希望なのです」
「もうちょっとよ!平気、へいき~!」
「早く終わらせてご飯食べよ~!」
エムリット達も俺に言う。

「お前ら……」
俺は目頭が熱くなり、思わず拳を握り締めた。
こいつらの為に、倒れていった者達の為に、そして、何より俺自身の為に…
俺はアルセウスを倒す!

「分かった……だが、一人でもいい、なるべく多く生き残れ!」
「おう!」
「行くぞ!」
「おーーーーーー!!!」

皆は腕を振り上げ、それぞれに配置へ…
「あ、ちょっと待って…」
ふと、メスのニューラが近付き、
「これが終わったら、ミミロップにもう少し優しくしてあげなさい!」
俺だけに聞こえるように囁いた。
「ここ…こんな時に!な、何を!!!」
「絶対に忘れないでよ!じゃあね~!」

そして俺達は三方へ散り、恐らくは……最後の攻撃へ打って出た。

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