第6章 - 4

「ねえ…ここ…入り口よね…?…入ってきたところよね?」
「戻ってきちゃったよ…。どんだけ方向音痴なんだ…。」
ニャルマー達はかわいそうな子を見るように話す。
「…そ、そうみたいね。あは、あはは…ん!?あれは…ピカチュウ!?」
ミミロップは外にいるピカチュウの姿を見つけた。
「やっと王子様のお出ましってやつ?」
「い、今更何しに来たって言うのよ!道を戻りましょ!さっきの赤い帽子の人間も確か見たことある奴だから気になるし!」
「やれやれ…。」


「あぁあのエレキブルですね。それならあそこに。」
ロゼリアが指したところにはあの野郎がなぜか横で寝ている。
「ちょっと待て。じゃあどうやってあの子供はここを突破したんだ」
「ああ、ゴローンさんが影から援護したら気絶したのでその間に抜けていきました。」
「ほぉ。よくやったなゴローン。」
「いいってことよ」
「かっこい~」
「拙者も見習わなければ」

と、エレキブルが目を覚ました様子だ。
「貴様、のこのこ逃げた奴がまた来るとはな。ここで会ったが100年目、ついでださっきの腹いせに特上の攻撃を食らわせてやるぜ。」
「望むところだ!さっきの俺とは全然違うぜ!」


「病み上がりで悪いが、少し眠ってもらうぜ!」
「何だと!俺は体力の回復も普通の奴より早いんだ!1発攻撃でも食らわない限り俺はダウンしないぜ!」
俺は手下に向かって叫んだ。
「おい!お前らは一切手を出さなくていいからな!自分の事は自分でケリを付けてやる!」
「わかりました!さぁ、みんな壁際に。」
「ぼわーん」
「何だ俺の出番じゃないのか」
「了解でござる」

「さてと、いくぜ!」
「はいはい!せいぜい俺を楽しませてくれよ!」
電気と拳が衝突する!


「食らいやがれ!10万ボルト!!」
「ほう、さっきよりも早いな。しかしまだまだ!気合いパンチ!!」
巨大な電気をエレキブルは拳で受けとめた。ボンっと爆発音を伴って。
「ちっ、やるな」
俺はつぶやく。
「お前もやるじゃないか。」
さすがに一筋縄ではいかないか。ここは撹乱してやるか。
「でんこうせっか!」
「ちっ、ちょこまかと。」
俺はあいつの周りを数回回って一度静止する。
「ほれ、止まったぜ」
「馬鹿にするな。炎パンチ!」
「でんげき!」
またしてもボンッと音を立てて拳は煙が立ち上っている。
俺は気付いた。やはりな、パンチを出す瞬間に一瞬の隙ができている。そこを叩き込むか。
「俺を楽しませてくれと言っただろう。こんなものじゃすぐ回復するぜ。」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ!」
「むかつく野郎だな!もう立てないようにしてやる!」
「それはこっちのセリフだ!」
そしてまた俺は回り始める!


さすがに向こうも疲れが見えてるな。対して俺は冷静だが。

「ピカチュウさんどうしたんでしょう。いつもだったら一発で決めるのに」
ロゼリアは不安そうに言った。
「いつもとちがう~」
「うむ、変だな」
そこにザングースが口を開いた。
「ピカチュウ殿は悟ったのでござる」
「悟りですか?」
「さとりってなに~」
「ほう」

「あぁ、似たところで言えば瞑想と近いのでござるが…いわば物事の隙を見抜く力でござる」
「そうなんですか…ということは」
「うむ、殿はあやつの隙を探している。一見素早い速さで隙などないようにも見えるでござるが必ずそういった隙は隠せないでござる。」
「なるほど…」
「ゆっくり待つ~」
「ふむ、ということはただ突っ走ることだけじゃ勝てない事がわかっているわけか」
珍しくゴローンが返答した。
そこでザングースはうむ、1度の経験でもう普通じゃ勝てないとわかっているんだろうと返した。


エレキブルは気付いていないだろうが俺はでんこうせっかに混じらせ、こうそくいどうを使っていた。
徐々に悟られない様にスピードを上げているから、あいつは気付いていない。

「……お前…チッ、こうそくいどうか!!」
そして気付いた時には……

「遅ぇんだよっ!!」
一気にフルスピードにし、エレキブルの目の前に現れてやると、予想通りあいつはパンチを出してきた。
「燃えちまいな!ほのおのパンチ!!」
俺は軽くパンチを避けて、あいつの顔面に尻尾をたたきつける。
思わず目を閉じた隙にでんこうせっかをぶち込んだ。

手下から歓声が上がっているが、気にしている余裕はない。
俺は吹っ飛んで倒れたエレキブルに軽くでんきショックを浴びせてやった。


「……どういうつもりだ。俺がでんき技を受けたらパワーアップするって言ったはずだぞ。」
「でんき技受けてパワーアップしないとまともに戦えないんだろ?」
「なに?」
俺は皮肉めいた口調で言ってやった。
「俺に勝った時もそうだったよなあ?パワーアップしないと何にも出来ないんだろ?でんきショックじゃハンデとしては少ないっていうならかみなりでも落としてやろうか?」
「なめるな!!」

さっきよりスピードが上がったエレキブルが俺に襲い掛かって来る。
まさかここまで簡単に挑発に乗るとは思わなかったが。
パンチを繰り出してきたエレキブルをひょいっとかわしてやり、今度は軽く蹴飛ばしてやった。

「あわわ、凄いスピードです…なんでピカチュウさんはあんな事を…。」
「なるほど…。」
「…?どうしたの?」

ザングースが何か納得した様子を見せているのに対し、疑問符を浮かべるムウマージ。
「ピカチュウ殿は相手をわざと怒らせたのでござる。怒りや焦りは冷静さを欠かせ、正常な判断が出来なくなる。勝てる相手にも勝てなくなってしまう事もあるのでござるよ。」
「……うん、確かにそうだね……エレキブルが移動するスピードは確かにあるけど、攻撃の動きが単調になってる気がする。」
「じゃあ、ピカチュウさんはそれを狙ったんだ!凄いや、そこまで考えてるなんて…。」


傍目から見れば俺ばかり攻撃しているから、有利なのは俺だろう。
だが、エレキブルは強い。
さっきからずっと攻撃しているが、どれもこれも決定打にはなっていない。

またエレキブルがかみなりパンチを繰り出してきた。
俺はそれを飛び越え、顔面にでんこうせっかで体当たりをした後、たたきつけるを4回。
「調子に乗ってんじゃねえっ!!」
「ぐっ!」
ほのおのパンチでなぎ払われた。軽く焦げの臭いが漂う。
咄嗟に避けてダメージは最小限に留めておいたが、それでもかなり痛む。
戦闘に支障は無さそうだが…。

「ピカチュウさん!」
ロゼリアが叫んでいる。
手下達に動揺が走っている様だが、俺はまだ倒れたわけじゃない。

「ちょこまか動きやがって……だったらこれならどうだ?」
バチバチと音が聞こえる。
エレキブルが電気を溜め始めているのがわかった。


「まずい、ロゼリア殿、ムウマージ殿!ゴローン殿の後ろに!!」

エレキブルを中心に、電撃が広まりながら向かってくる!!
「でんげきは…これなら逃げられねえぜ!おねんねしなぁっ!!」
ふん……それでも、周囲に拡散すればするほど効果は弱くなるはずだ。
俺は後ろに下がると、迫り来る電撃にでんきショックをぶつけた。

次の瞬間、俺の電撃とあいつの電撃がぶつかり、あまりの光に視界が白く染まった。
だがそれもすぐ回復し、舌打ちするあいつの姿とゴローンの後ろに隠れてる手下達の姿が見えた。

「続きと行こうぜ?」
くいくい、と中指を立ててやる。確か人間のよくやる挑発のポーズだった気がする。
でんげきはを止められた事・挑発された事に更に怒り、エレキブルが襲い掛かってきた。
もちろん、当たってやる気は無い。
俺は軽々と避けてやった。


さて…どうするか。
奴は攻撃を出す瞬間…自らの力を放出する瞬間は電気を吸収できないようだ。
それはわかった。だが構えを見てから攻撃しては奴の力の前に電気は相殺される。
奴が攻撃しようと力を放出する瞬間を先読みし、電流をたたき込まねば。少しでも早ければまた吸収されてしまう。
ふん…今の俺の力で破裂するまで電流を流し込んでやってもいいが、この後にエムリット達を助けに行かねばならん。後はミミロップか……。
力は温存しなければならない。

「どうした?逃げ回るだけか!?」
「………。」
なんとか奴の攻撃を誘発する手段を考えなければ…。
!そうだ!あれを使えばいい。
ピカチュウは突然隙だらけでエレキブルに飛び掛かる!
「バカめっ!」
とエレキブルが力を放出しようとした瞬間、エレキブルの側面に強力な電流が襲う!
「なあっ……!?」
エレキブルは背中の触手がショートし煙をあげて両膝をつく。ぼよん、と人形がエレキブルにぶつかった。
「身代わりをお前に向かって投げたと同時に、俺は横に回り込み電撃を放った。普通ならもう一瞬反応が遅くて電撃を吸収されてしまったんだろうが、お前のその反応速度が仇になったな!」

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