第41章 - 8

そもそも、こいつらを逃がし、ヘルガー共と戦い、アジトからデパートでの逃走劇に至るまで、危機続きで一度も心身ともに休めるような暇はなかった。
とっくに限界が来ていたっておかしくねえ。
「が、頑張れ!駄目だ駄目だ駄目だ、諦めちゃ。ここまで出来た君ならまだまだやれるって!」
いつになく慌てふためいてマフラー野郎は捲くし立てるようにあっしを励ましてくる。
――いつもどこか自信たっぷりにスカしていたあいつがあんなにも泡を食ってやがったのは、後にも先にもあの時くらいだったかもな。
「そ……そうだよ!男だろ、しっかりしな!せめて、もう一踏ん張り、どこかに不時着しとくれ!」
同じくあたふたした様子のニャルマーが続く。チビのやつも周りのただならぬ気配に飛び起きた。
だが、いくらぎゃーぎゃー騒がれたところで、例えガマ口財布のごとくひっくり返されて揺すられたって、出せないものは出せない、無いものは無い。出るのは精々、オンボロ小屋に吹き込む隙間風みてえな絶え絶えの息だけだ。みるみる内に高度は下がっていき、徐々に意識も薄らいでいく。
「駄目か、クソッ――」
マフラー野郎が何やらごそごそとマフラーを探りだす。その間にもぐんぐんと地上の森は迫り、あっしの意識も一気に真っ暗闇へと沈んでいった。

――あっしはどうなっちまったのか。まるで逆吊りにされているみてえに、頭ん中がふらふらと揺れている。
ああ……あの世ってのは地獄も極楽も無く、案外こんなもんなのかもしれねえ。
きっと、抜けちまった魂は干物か洗濯物みてえに前の記憶が乾いて無くなるまで吊るされて、乾ききったらまた別の新しい体にぶち込まれるのさ。
今度生まれる時ゃもうちっとマシな生き方をしてえもんだぜ。
不意に鼻っ面をカサカサとした感触がくすぐる。死神さんが魂の乾き具合ってやつを確かめにきたに違いねえ。
生憎、こっちは吊るされたてのホヤホヤだ。意識もしっかりと残ってるし、生まれ変わるには早すぎるだろう。
今わの際までドタバタさせられてあっしもいささか疲れてんだ、もう少し静かに休ませておくんなせえよ。
それでも尚、カサカサとした感触は執拗に鼻先をさすってくる。しつこい奴だ、さすがのあっしも段々と苛立ってくる。
と同時に、鼻のむずむずが堪え切れない程に一気に押し寄せてきた。


「……ぶぇっくしょいッ!」
大くしゃみと共にあっしは目を覚まし、鼻を羽先でごしごしと拭った。
動きに合わせるように、体がぶらぶらと宙に揺れる。
ひやりとして辺りを見回すと、周りは木々も枝葉も全て天地が逆にひっくり返ったような森の中――ではなく、何かが足に引っ掛かってあっしの体は蝙蝠みてえに逆さに吊られているようだ。
足元を見てみると、太い枝に見覚えのある細長く伸びたマフラーが絡まっていて、あっしの足はそれに括り付けられている。
その根元すぐ傍らに、チビ助の姿もあった。先っぽに葉のついた小枝を片手に、太い枝の上からこちらを少し心配そうに見下ろしている。
「しつこく突っついてやがったのはおめえか、チビ助。ま、おかげで頭に血が上りきる前に目が覚めたぜ」
あっしは羽ばたいて枝の上までよじ登り、嘴でマフラーの枷を足から外した。それにしても丈夫なマフラーだ。
どう考えても普通の生地じゃねえ。
「マフラー野郎――おめえの親父と、ニャルマーのやつはどうなった?無事か?」
あっしが尋ねると、チビ助は少しきょとんとした後、無言で下方を指差した。
見やると少し下の枝のところで、ニャルマーがあっしと同じようにマフラーで体を吊られて気を失っていた。
ずっと伸びている長いマフラーの先を更に目で追っていくと途中でそれは宙で途切れ、地べたにまで視線を下ろすと草の中に黄色い姿を見つけた。
やつは草むらに横這いに倒れ込んだまま、ぴくりとも動いていないように見えた。
チビが不安そうにあっしの羽をぐいと引っ張る。
「へ……へっ、あの野郎がこの程度でくたばるわきゃねえだろ。ちょっと待ってろ、先に様子を見てきてやる」
あっしは自身にも言い聞かせるようにチビに言うと、一足先に地面に降り立ち、恐る恐る近づいて確認する。
どうやら息はあるようだ。気を失っているだけらしい。特に目立った怪我も――前面を見渡し、背中側に至った所で、あっしは絶句した。
一体、どうやったら、何があったら、こんな傷を負うというのか。
今までマフラーの裾や背負ったチビに隠れていてわからなかったが、あいつの背にはまるで稲妻のように縦にジグザグに裂けた大きな古い傷の跡があった。


「う――」
不意にマフラー野郎が呻き声を上げ、僅かに身を揺らす。ふと、あっしは正気づいて、助け起こそうとマフラー野郎の肩に羽をかけた。
「おい、大丈夫かよ?」
声をかけながらあっしはマフラー野郎の体を軽く揺り動かす。ヤツは耳をぴくりと反応させ、まだ意識がおぼろげな様子でおもむろにあっしの羽を握り返すと、うなされる様に何かを微かに呟いた。
はっきりと聞き取れなかったが、それは誰かの名前だったように思えた。
ぎょっとして振り払えずにいると、急にマフラー野郎はぱちりと目覚めて、あっしと目が合う。
そして、握った手とあっしの顔を交互に見て、ぞっと顔を青ざめさせた。
「な、なんのつもりだい。俺にそんな趣味は全く無いぞ」
言いながら、マフラー野郎は素早く起き上がってあっしから後ずさっていった。
「そりゃこっちのセリフだ、バカヤロウ!テメーがいつまでも目を覚まさねえから気を利かせて助け起こしてやろうとしていたら、てめえの方から急に俺様の羽を握ってきたんだろうが。寝ぼけてんじゃねえぞ」
ひとが折角心配してやったのをなんて誤解をしてやがる。あっしにだってそんな趣味はねえ。
言い返すと、思い出したようにマフラー野郎はぽんと手を打つ。
「ん、ああ、そうか。君達を木に引っ掛けた後、俺も気を失って――。いや、それはすまなかった。そうだ、他のみんなは?」
「まだ上だ」
あっしはニャルマーとチビ助のいる木の上を指し示す。ニャルマーも呻いて目を覚ましそうな兆しを見せ、チビ助はマフラー野郎が無事とわかった途端、『早く下に下ろせ』と言いたげな様子で図太く構えていた。
さっきまでの不安げな慎ましい態度なんてまるで嘘だったかのようだ。
「良かった、どうにかみんな生きてたみたいだね」
二匹の様子を見上げ、マフラー野郎は安堵の息をついた。


「無茶苦茶させがって。どうにか生きてるなんて不思議なくれえだ。最高の初飛行と初墜落だったぜ」
皮肉をたっぷり込めた口調であっしは言う。
「確かに今回ばかりは俺もちょっと焦ったかな。少し昔を思い出したよ」
「ケッ、背中の傷もその昔とやらからこんな風に無茶ばかりしてきた結果か?」
あっしの言葉を受け、虚を衝かれた様子でマフラー野郎は首元と背中を手で探ってから、木にぶら下がって脱げているマフラーを見上げ「あちゃー」と気恥ずかしそうにマフラー野郎は頬をぽりぽりと掻いた。
「はは、見られちゃったか。この傷は――罪と、然るべき罰ってところさ」
呟くようにマフラー野郎は言う。瞬間、その顔には少し暗い影が落ちたように見えた。
「ああ?」
意味を汲めずあっしは首を傾げる。
「ひゃ!ちょ、ちょっと!なんだいこれ!」
木の上から、ニャルマーの悲鳴が響いてくる。どうやら目を覚ましたようだ。
「おっと、それより今は早くお嬢さんとチビ助をおろしてあげないと。手伝ってくれるかい、ヤミカラス」
誤魔化すように話を切り上げ、マフラー野郎は木の下へと急いだ。

「やれやれ、酷い目にあったよ……」
地上に下ろされ、毛についた葉っぱや小枝を払いながらニャルマーはぼやく。
「やあ、悪い悪い。もうちょっと余裕があればもっと安全に降り立つ方法も用意できたんだが、いかんせんその猶予は無かったからね。どこか痛むところはない?」
チビを背負ってマフラーを巻きなおしながら、マフラー野郎は尋ねた。
「平気さ。すぐにでも行けるよ」
手足をふるふると振るって、ニャルマーは答える。


「それじゃあ全員無事みたいだし、またコリンクの行方を追おう。あまりもたもたもしていられない」
「ああ。確かあの怪しげなトラックが走っていたのは鉄橋の側だったねえ。とりあえず、ここからも見えるあの鉄橋の一部を目指してみようじゃないか」
マフラー野郎とニャルマーが算段を立て始め、早速出発しようとしている。あっしはそんな二匹の背を、立ち止まったまま眺めた。
「どうした、ヤミカラス?」
あっしの様子に気付いたマフラー野郎が振り返る。
「……ああ、そういえば、元々君の目的は奴らの手から逃れることだけだったものな。これ以上は無理に付き合う必要もないか。短い間だったが協力してくれてありがとう。達者でな、ヤミカラス」
ふっと仕方なさそうに笑みを浮かべ、マフラー野郎は再び歩き出した。
あっしは少し迷っていた。確かに元々のあっしの目的はロケット団から無事に逃げ出すことで、ろくに関わりのねえガキがどうなろうと本来ならば知ったこっちゃねえ事だ。
こいつらの後をついて行くよりも、あっし一羽だけで逃げた方がよっぽど安全無事に逃げ切られる可能性が高いかも知れねえ。
だが――

「勝手に決め付けてんじゃねえ。これから追っ手が来ねえとは限らねえんだ。まだ完全にロケット団共の手から逃れられたとは言えねえ。協力して無事に安全な所まで逃げ切らせるってのが、てめえを檻から出してやる条件だったはずだ。ちゃんとそれが果たされるまで俺様は意地でも離れねえぞ」
照れ臭え話だが、こいつらはあっしにとって初めてできた仲間と呼んでもいい存在だ。
例え危ない目にあおうとも、まだこいつらと一緒にいきてえ。その思いが勝った。
「そうか。……ありがとな、ヤミカラス」
本心を見透かしたように、そっとマフラー野郎は礼を言う。
「別に何も感謝するところじゃねえだろ。単なる利害の一致だ」
気恥ずかしくなって目を背け、あっしは毒づいた。


鉄橋沿いのあまり整備の行き届いていない道路へとあっしらは差し掛かり、剥き出しの地面に残されたまだ新しいタイヤの跡を見つける。
きっと例の怪しいトラックが残していったものに違いねえと、あっしらはその後をつけてみることにした。地面に注意を向けながらしばらく進んでいると、途中でタイヤ跡はスリップでもしたかのようにグネグネと曲がりくねって、道路を外れた藪の中へと突っ込み、細い木々を強引に薙ぎ倒しながら進んでいったようだ。
「なんだか随分と焦っていたみたいだね」
苦笑めいてマフラー野郎が言った。
「……妙だな」
その横で、あっしはその痕跡に違和感を覚えて呟く。
「どうしたんだい?」
「ああ、サツ共に追われでもしている時ならともかく、大事な商品を輸送している最中だってのに、こんな荒っぽい運転をするなんてありえねえと思ってよ。いくら悪の組織だろうと取引に関しちゃあ最低限の信用ってもんがねえとやっていけねえ。余程の事がねえ限り、届けなきゃなんねえ商品に傷をつけるような真似は避けるはずなんだが」
「つまり、その余程の事があった可能性が高いってことじゃないか。アイツに何かあったらアタシゃ……」
ニャルマーの顔と言葉に焦慮が滲む。こいつの魂胆の一端を以前に垣間見たあっしにとっては、この態度もあのコリンクってガキ自体を純粋に心配しているというよりも、アイツに何かあった後で自分自身に降り掛かってくる不利益を厭んでいるように思えた。
「急ぐぞ」
表情を少し強張らせ、マフラー野郎は先んじて木々が折られタイヤ跡が続く藪の中へと向かっていった。


まるで機械仕掛けのイノムーみてえなパワーでもってトラックは豪快に藪を無理矢理切り開いて突き進んでいたようだが、その猛進もどうやら長くは続かなかったらしい。
タイヤ跡が途切れた先にあったものは、こちらに腹を向けて無残に横転したトラックの姿だった。あっしらはすぐさま駆け寄って様子を確認する。
だが、既にトラックは運転席も、覆いが剥がれて覗いている積荷の檻の中身も、もぬけの殻だった。
車体には二本の鋭い爪で引っ掻いたような二本傷がそこら中に刻まれ、タイヤの一つに――季節は秋の中頃ぐらいだったから、雪も降る筈がないって言うのに――どういうわけか溶け掛けた氷の塊が挟まりこんでいた。
「一体、何があったっていうんだい……」
呆然とニャルマーは立ち尽くして、変わり果てたトラックを眺める。
「この無数の二本傷、木々にぶつかって出来たであろうものとは明らかに違うね」
車体の不自然な傷をマフラー野郎は触れて調べる。背のチビ助も目をぱちくりさせてトラックを見回していた。
「こりゃ、奴らの仕業かもしれねえ」
あっしはその犯人に大体の察しがついていた。
「何か心当たりがあるのか?」
真剣な面持ちでマフラー野郎が問う。
「ああ、団員や元同僚のポケモン共づてに聞いた話だが――」
近頃、ジョウトではこうした襲撃が度々起こっていた。
襲撃者の正体は、徒党を組んだニューラ達――二足で歩く黒猫みたいな奴らだ。元々、集団による狩りが得意な奴らではあったが、人間に対しては時々こそ泥を働くことはあっても、車両を襲うような大それた事はしなかった。
だが、ここ数年になって奴らは変わった。


その昔まではニューラはジョウトでは北東の辺境、シロガネ山脈とフスベシティの付近で時折姿が確認されるくらいだった。
しかし、今やその活動範囲をコガネからキキョウシティの付近にまで活発に広げ、実際に襲撃事件まで起こしている。
奴らが襲うのは、殆どが後ろ暗い積荷を載せている車ばかりだった。
義賊気取りなのか、それともワケありの荷物を運んでいるような人間は、例え略奪されても自分達のやっている薄汚いことまで白日の下に晒される事を恐れ、声高に助けを求めることなんて出来やしないことを狡猾に見抜いてやがるのかはわからねえが、とにかく団員共は随分とニューラ達には悩まされているようだった。
「シンオウにもあの黒猫共は生息しているから奴らの事は知っているよ。姿形は一見して小奇麗な奴らだけど、本性はその毛並みの色の如くドス黒く残忍さ。奴らのえげつない鉤爪に比べたら、アタシの爪なんて紙切りナイフみたいなもんだよ」
ニャルマーの言うように、奴らの鉤爪は非常に鋭く恐ろしい武器だ。少し掠めるように爪先を引っ掛けられただけで、碌に身を守る体毛も堅い鱗も無い人間では大怪我しちまうだろう。
そんな爪を持つ奴らが何匹も、それも連携の取れた動きで容赦なく襲ってきやがるなんて、脅威以外の何者でもない。
その中でも特に恐れられていたのが、ニューラ達が活発化し始めたのとほぼ同時期に現れるようになった、異形のニューラの存在だった。
『奴が現れたら積荷か命を諦めろ。もし奴の機嫌が悪けりゃ両方だ』
そんな風に囁かれていた。
普通、ニューラってのは片耳だけが赤色をしていて長いんだが、そいつは両耳が赤くなっていて、頭には大きな扇状の赤い鬣が広がっているそうだ。
鉤爪はより鋭く研ぎ澄まされて、二本爪から三本爪へと変貌し、体捌きはより敏捷だという話だった。


――
「なあドン、もしかして、それが……!」
「今のキッサキのマニューラじゃねえかってかい?残念ながらハズレだ、エンペルト。まあ、大きく関係してはいるけどな。そもそも、あっしらが進化したのは、シンオウに来てからさ。
あっしも、クソネコのヤツも、それぞれの群れで一から成り上がって、ドンカラスとマニューラの座を手にしたんでえ。あいつらの為にも、どんなに辛かろうとあっしらは精一杯に生きてかなきゃならねえって、ひたすら我武者羅な日々だった」

――
「それはたぶん、マニューラってポケモンだよ。この地方にはまだあまり知れ渡っていないのかもしれないけど、ニューラには進化系がいるのさ」
空っぽの檻を何やら探りながらマフラー野郎は答えた。
「アタシも名だけは聞いたことがある。普通のニューラよりも更に輪をかけて狡猾で残忍だってこともね。もしそんな奴らにコリンクは連れていかれたんだとしたら……。団員共が連れていったって方がまだ救いがあるよ」
「うーん、どうも、コリンクはニューラ達の方が連れて行った可能性の方が高いかもしれないよ、お嬢さん」
言って、マフラー野郎は壊れ落ちていた南京錠を拾い上げて俺達に見せた。その表面には深々とした三本傷が刻まれている。
「――ッ!なんて、ことだい……」
愕然として、ニャルマーはへたり込む。
「まだ希望を捨てちゃいけないよ、お嬢さん。まだコリンクが死んでしまったと決まったわけじゃないんだ。それに連れて行かれたところで、殺されてしまうとは限らない」
「そんなこと言ったって、ニューラ共は肉食のハンターだよ。悪い想像をするなって方が無理さ!」
ニャルマーは狼狽して言った。
「……昔、俺にはマニューラ族の友達がいたんだ。確かにがさつで乱暴なところもあったけれど、根っから悪い奴じゃなかったし、いざって時にはとても頼りになって、何度も助けたり助けられたりしたっけ――。まあ、つまりは何が言いたいかって、その種族ってだけであまり偏見を持つのは良くないってことだ」


そう言って、マフラー野郎は宥める様に微笑みかける。ニャルマーは不服そうにしながらも、うろたえる言葉を呑み込んで押し止めた。
それにしても、このマフラー野郎がぶっ飛んだ奴だってのは十分に分かっていることだが、ニューラ共よりも更に残忍だというマニューラ……猫と鼠がばったり出くわして無事に済んだ挙句に友達になるだなんて、一体どうまかり間違ったらそんなことになりやがるのやら。
まさかどこかのトゥーンアニメよろしく――下っ端野郎がぼんやりと何気なく眺めているのを、あっしも横で見ていた――仲良く喧嘩している内に奇妙な友情が芽生えでもしたんだろうか。
何にしても、またそんな風にコリンクを攫った奴とも打ち解けられるとは限らないし、もう一つ根本的な問題があった。
「ところでよ。もし、あのガキが生かされたままニューラ共に連れて行かれたとして、どうやって後を追うってんだ?奴らの本拠地は団員共だってはっきりとは掴めていねえんだぜ」
あっしは苦言を呈する。団員達もやられっぱなしではいられないと、ニューラ共の巣窟を見つけ出して一網打尽にしてしまおうと目論んだことがあった。
しかし、奴らは神出鬼没の上、逃げ足の速さたるやまさに電光石火の如しであっと言う間に行方をくらましてしまう為、追跡もままならないのだ。
「それこそ草の根を掻き分けるようにしてでも痕跡を捜し出していくしかないだろうね」
マフラー野郎は伏せるようにして地面を探り出す。
そして、雑草が踏まれて微かに倒れている箇所と、土の上に薄っすらとついた爪の跡を見つけ、それが続いていく先を手で辿って指し示した。
「……テメーのその目ざとさは褒めてやるがよ、一々地面に這いつくばって進んでいたら日が暮れるどころじゃすまねえぜ。もしも途中で一雨でも来たりしたら、その跡だっておじゃんだ」

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