第41章 - 3

突然、何を言ってやがるんだ、こいつは。
今日初めて会った、それも自分を捕らえた憎い奴らの仲間である奴に対して、まるで友人に簡単な頼みごとをするみてえな気軽な物言いだ。
そいつのあまりに己の立場を理解していないような言葉にあっしは心底呆れ返った。
「出来るわけねぇだろ、そんなこと」
小馬鹿にして鼻で笑い飛ばしてやると、「だろうなぁ」とそいつも気さくに笑い返した。
「……おめえ、今、自分がどんな立場で、どんな状況にいるのか分かってんのか?」
絶望的な状況だというのに、そいつのその飄々とした気楽な態度に、日頃の鬱憤が溜まっていたのもあって、あっしはどんどん腹が立っていった。
「分かっているさ。君が看守で、俺が囚人。このまま大人しくここに居たら、どこかに売り飛ばされるか、あるいは殺されるか、だろうね。だから出してくれって君に頼んでいるんだけど」
「そんな頼み、はいそうですかと聞くはずがねえだろうが」
「どうして?」
「てめえみたいなのを見張って逃がさないようにするのが、俺様の言いつけられている仕事だ」
「へえ、好きでこんなかび臭くてみすぼらしい場所で、言われるままひどい仕事をやっているのか。ま、自身がそれで満足しているなら、俺から他に言うことは無いけれど」
そいつのその言葉は、あっしの心に深く突き刺さった気がした。
「そんな分けねえだろうが!俺様だってこんな掃き溜めみてえな場所で、いけ好かない事を続けるなんてごめんだ。だがよ、選択肢なんて、俺様には最初からありゃしねえ。俺様はここを仕切る黒ずくめのクソッタレ人間共に、都合のいい道具として使われるためだけに生まれてきたのさ。逆らえば、始末されるだけだ」
気付けば、溜め込んでいたものを全て吐き出すようにあっそはそいつに叫んでた。
「だったら、君も逃げればいい」
「……出来るわけねぇだろ、そんなこと。奴らは自分達の悪事の尻尾を掴まれねえよう、ポケモンの脱走をゆるさねえ。例え運良くここから出ることが出来ても、追っ手を放って確実に始末しにくる」
俯いて力なく言い返し、悔しさにひびが入りそうな程に嘴を噛み締めていると、
「絶対に逃げ切れる。俺と協力さえすれば」
そいつは、確固たる自信を持って言い切りやがった。見上げると、その目には力強い光が戻っていた。


その自信が何を根拠としているのか、全くもって分からなかった。
何せそいつの姿といったら、ヤミカラスのあっしよりも小さく、鋭い爪も牙も無ければ、短い黄色い毛に覆われた丸っこい体と、饅頭みたいに赤くて丸い頬はちょいと嘴の先で突いてやっただけで簡単に穴が開いてしまいそうだ。
お世辞にも強そうになんて見えやしない。

――
「おっと、ボスにはあっしがこんなこと言ってたなんてチクらねえでおくんなせえよ。一応別の奴の事とはいえ、同じ種族でさぁ。機嫌損ねられたら厄介だ」
ドンカラスは急に思い立ったように取り繕う。
「へぇ。さて、どうしようかな。ああ、そういえばドン、書庫の一番隅にある本棚の裏に羊羹を隠しているな?見つけた時は黙ってそっとしておいたけれど、高級そうな箱に入っていて美味しそうだったなぁ、いいなぁ」
エンペルトは悪戯っぽくニヤついた。
「うっ……勘弁してくだせえよ……」
「はは、冗談だ。僕だってボスの不機嫌のとばっちりは受けたくないからな。続けてくれ」
――

ただ自分が檻から出たいが為だけの妄言だ。そう切って捨てるのは簡単だ。
だが、そうできない、そうさせない何かがあった。
「……おい、マフラー野郎」
威圧するように、あっしは眉間に皺を寄せそいつの顔を睨み込んだ。
「ん、協力してくれる気になってくれたのかい?あと、俺の名前はマフラー野郎じゃなくて、ピカ――」
「てめえの名前なんざどうでもいいんだよ。そこまで自信満々に言い張れるなら、何か明確な脱出プランがありやがるんだろうな、んん?」


ここで少しでも怯んだり言いあぐねる様なら、もう話はお仕舞いだ。
あっしはここで踵を返し、いつもの見回りに戻り、それを終えたらまた明日も同じだ。
その内このスカしたマフラー野郎は売っ払われるかして、変わらない毎日があっしがくたばるまで続く。

……嫌だ。
思えば思うほど、嫌で嫌でしょうがなくなっていた。
今までは、言い切れないほどに不満はありながらも、生きているだけでもありがてぇ事なんだと思って、目を背けるようにしてきた。
だが、こいつのせいでまざまざと向き合わされちまった。
自分の生きてきた日々、いや、生かされてきた日々は、どれだけ最低でクソッタレか。
一度気付いてしまったら、もう戻ろうとしても戻れやしない。
このまま後悔と心の呵責に耐えることなんて出来ず、体より先に頭がイカれ果てちまうだろう。

どうか、違う明日をくれ。
生かされる、じゃあなく、生きているんだと思える日々をくれ。
そいつを覗くあっしの顔は、脅しかけるものから縋るような表情に変わっていたかもしれねえ。
そんなあっしを見て、そいつは当然だろうと言いたげに薄く微笑んだ、気がした。
「ああ。この場所は地下にあるんだよね?どこかじめじめしてて窓がどこにも見つからないし、何よりあの大きな換気口」
そいつは天井近くの壁に開けられた網格子付きの四角い換気口を示す。
「あの中を潜って外まで行こうってのか? 確かに俺様とてめえの体格なら潜り込むのは容易だろうが、残念だったな。中にゃしっかりとセンサーが取り付けられてんのさ。すぐにバレて出口で待ち構えられて、とっ捕まるだけだ」
「うん、そのくらいの警備はあって当然と覚悟しているよ。まあ、最後まで落ち着いて聞いてくれ。ここに運ばれてくる途中、檻に被せられた覆いの僅かな隙間から外を窺っていたんだけど、どうやらここは元々アジトとして作られた場所じゃあなくて、組織とは関係ない倉庫の一画を間借りしているだけに過ぎないように見えるんだけど、どうかな?
途中で見た山積みのダンボール箱群に、どれも人間の文字でたぶん『コガネ百貨店』って書かれているのが見えた。その百貨店と手を組んでいるとも考えたんだけれど、すれ違った普通の従業員らしき人達は怪訝な顔をして俺達の入っている積荷を見ていたから、それにしては変だと思ってね」


「確かにおめえの見立て通り、このアジトは組織とは関係がねえ堅気がやってる百貨店の地下の一部を、騙くらかして借りているそうだ。汚い悪事に使われているなんて当事者以外は知りゃしねえよ。だが、それがどうした。換気口から上の百貨店の方に抜け出て、大勢いる人間共に助けてくれって言いにでも行くのか? クハッ、笑えるぜ」
あっしは呆れたように羽をひらひらと横に振るう。やっぱりこんな奴に少しでも期待したのが間違いだったのかと、落胆しかけていた。

「ああ、その通りだ。人間達に助けになってもらう、という点では違いない」
「イカれてんのか?俺様達の言葉なんて人間共には通じねぇ。取り合われないどころか、大騒ぎになっちまうのがオチだ」
「大騒ぎ、今に限っては好都合じゃないか。こんな所にこそこそと隠れてアジトを構えているような奴らが、真っ当な買い物客や店員達が騒ぎ立っている中に表立って出てくるのを好むと思うかい?もし仮に現れたとしても、人ごみを素早く潜り抜けて行くことに小さな俺達と大きな人間、どちらが向いている?このままここで何もせず腐っているよりも、賭けてみる価値はあると思うけれどな」
挑戦的な表情を浮かべるそいつ。
示された目の前の道は、見るからに危ういとても細くて険しい最低にクソッタレなものだった。
だが、きっと先には違う明日がある。がむしゃらに危険を切り抜けていく日々は、誰かに生かされているのではなく、己の力で確と生きているのだという実感を嫌というほど味わわせてくれるだろう。
「――その話、乗ってやる。マフラー野郎」
「おお、ありがとう!でも、俺の名前はマフラー野郎じゃあない。ピカ――」
「知ってるよ、確かぺカチュウだろ?待ってろ、とりあえずまずは鍵をくすねてきてやる」
「ちょっと間違ってるんだが……まあ、いいか」


積荷を枕に大いびきをかいている元飼い主の下っ端団員に、あっしは慎重に忍び寄ってベルトに付いた鍵束をそっと盗み取り、檻の前まで戻って鍵を開けてやった。
檻から出ると、そいつは体を解す様に呑気にぐっと伸びをする。
「いやー、助かったよ。やっぱり君は根はいい奴そうだな、ヤミカラス」
マフラーに付いた埃をぱんぱんと手で叩いて払い落としながら、そいつは爽やかに笑いかけてきた。
「いい奴だなんて、虫唾が走るからやめやがれ。さあ、さっさとてめえの危なっかしいプランを実行しに行くぞ」
「ちょっと待ってくれ、騒ぎを起こしてしまう前にここで調べておきたい事があるんだが」
不意に、そいつは言った。更なる面倒が舞い込んできそうな嫌な予感はしながらも、あっしは「なんだ?」と聞き返しちまった。
「うん、少し前にここにうちのチビ助――もとい、ピチューの子が捕まえられて来なかったかな?見た目は俺を一、二周りか小さくした感じで、耳の形がもっと三角形で幅広なんだ」
「そんな感じの奴らなら、確か隣のフロアに捕まっているが。まさか……お前のガキか?」
「まあ、そんなもんだよ。普通のピチューより、無口で、無愛想で、生意気で、ジト目気味で、全然懐かなくて、他人から見たらちょっと可愛くない奴だから、見さえすればすぐに分かると思うんだけど。俺はその子を助けに来たんだ」

――
「へえ、そのピカチュウ、子どもを助けるためにわざと捕まって潜り込んだのか。勇気があるというか、無鉄砲というか……。同じ種族でも、慎重派に見えるうちのボスとはまるで似てないな」
エンペルトは感心とも呆れともつかない口調でエンペルトは言う。
「ああ、あいつとの逃亡劇は今考えても無茶なことばかりで、休まる暇なんて殆どありゃしやせんでした。だがよぉ、あいつがいればいつでもどんなことでもどうにか乗り越えられた。何でも出来るって気にさせられた――」


「もー、いい加減機嫌直してよ、ピカチュウ」
宥めようとするミミロップの声を無視し、俺は口を硬く結んで押し黙り続ける。
裏切り者かもしれないマニューラを単独で追うなどというロズレイドの危険な独断を助長したあげく、あろうことか止めに入ろうとした王たる俺を羽交い絞めにして妨害するなど、到底許せるものではない。
普通の悪を掲げる組織であれば即追放もの、いや、処刑されてしまってもおかしくはないだろう。
そうしない俺のなんと温情溢れることか。シンオウのリッシ湖とエイチ湖とシンジ湖を合わせて満たしても、まだ溢れてくるに違いない。
現に危惧した通り、いくら待ってもマニューラどころかロズレイドさえ戻ってくる気配は無い。
俺はじろりと横目でミミロップを睨む。
「ロゼちゃんなら絶対大丈夫。あんたがいない間に、ただ進化して体が大きくなっていただけじゃあない。心身共にばっちり鍛えられて強くなったんだから。中々戻ってこないのは、きっとちゃんとマニューラに追いつくことが出来たからよ」
「ちゃんと追いつけたのであれば何故すぐに連れ戻してこない。追っ手として返り討ちにされてしまったか、あるいは言いくるめられて何か良からぬことを結託したか、最悪の結果しか想像できんな」
苛立つままに言い返すと、ミミロップは呆れたように溜め息をつく。
「あの強情そうなマニューラを早々簡単に説得できると思う? 口にも顔にも殆ど出さなかったけど、マニューラも何か悩んでたみたいだった。私の波動読みの実力じゃその理由まではっきりとは分からないけれど、結構根深そうだったわ」
「ふん、あれが何かに思い悩むようなタマか?」
奴のお得意な皮肉めいた不敵な笑みを思い返し、ありえないと俺はせせら笑う。
「あのねー、なんでそんなにマニューラを邪険にするようになったわけ?シンオウからの仲間じゃない」


「状況が状況だ。目的も告げずに付き纏おうとしてくるような相手を信用できるはずがあるまい。それに、ひとの耳に急に齧りついてくる様な輩に好感を持てというのが無理な話だ」
後は、奴と関わるたびに引き起こされるようになった妙な頭痛――。
「だから、その目的を聞き出すためにもロゼちゃんは一番適任だったでしょ。耳を噛むくらいほんの些細なイタズラじゃない。私だって隙あらばしたいくらい――って、違う違う。とにかく!もっと仲間を信用しなさい。こんな状況だからこそ、疑うよりもまず信じることが必要だと思うの」
「ええい、そう簡単に信じていてはその内足元をすくわれる!」
「疑ってばかりいたら何でもかんでも怪しく見えて、それこそ敵の思う壺だってば!」
いつもであればそろそろこの辺りで引止めに入る役も、今は不在。アブソルやムウマージ、ましてやデルビルでは務まるはずもなく、互いに譲らない平行線の言い争いは延々と続いてしまった。
俺も最早引っ込みはつかず、ミミロップも同様だろう。双方意見は言い尽くし、果てには日頃溜まった互いへの些細な鬱憤にまで言及しそうになっていた時、上空から鳥でも獣のものでもない高く鋭い声が響く。
「うおーい!電気ネズミの旦那ァー!」
見上げれば、俺達の頭上で翼を広げ旋回する灰色の翼竜、プテラの姿があった。
十分に高度を下げると、プテラは広げた翼を大きくバタつかせながら、ゆっくりと俺達の前に降り立つ。
「また会えてよかったぜぇ、電気ネズミの旦那ァ。おおっと、ピカチュウの人生っと。いやー、またあちこち飛び回されてくたくたでェ。まったく旦那はポケ使いの荒い――んん?」
言葉の途中でプテラは俺とミミロップを交互に見やり、ばつが悪そうに翼に生えた爪でぽりぽりと頬を掻く。
「んー、どうも痴話喧嘩ってやつのお邪魔をしちまったみてぇで。わりぃなァ、おれっちどうもそういうのにゃ鈍感でよォ」
俺は口を歪め、ぶんぶんと首を横に振るった。
「断じて違う。我らに痴話などありえぬ、ただの意見の相違による口論だ!」
声高に俺は否定する。横でミミロップはムスッと表情を顰めた。
「ありゃりゃ、そうだったのかい。そいつァ重ね重ね失礼しやした」


「……まあ、いい。ところで、一体何故お前がここに?ペルシアンはシロガネ山を越えるのは危険だと、鳥達を送るのには難色を示していたはずだが」
「おう、怪しい情報を見つけたらすぐさま届けて、さぽぉとするようにと旦那方にゃ仰せ付かっててよ。鈍り切った最近の軟弱な鳥共ならいざ知らず、おれっちは白亜の韋駄天……いや、ジュラの韋駄天だったっけなあ?それとも、三畳……?まぁいいや、とにかくそんな感じの韋駄天の異名で、大昔は大空をぶいぶい言わせてたんでぇ。今でも鋼に包まれたウスノロ共の翼なんざすいすい擦り抜けて、ぶっちぎりよォ!」
鼻高々と言った様子でプテラは答える。
韋駄天だのジュラだの何だかよくわからないが、とにかく速さを象徴するらしい異名を自信満々に名乗れるだけの相応の実力は確かに兼ね備えているようだ。
「ふむ。それで、その怪しい情報とやらは見つけてきたのか?」
「おうおう、それなんだがよォ……んん? ところで、薔薇のにぃちゃんと黒猫さんはどこに行っちまったんだ?」
俺達をぐるりと見回し、プテラは首を傾げた。
「ああ、奴らなら――」
俺はプテラに事情を話す。
「ははあ、あの黒猫さん、中々のとらぶるめぇかぁってやつのようで。こりゃ好都合――ってな感じでしょうなぁ、敵さんにとっちゃ」
「まったく、その通りだよ。困ったものだ」
ふん、と俺は鼻を鳴らす。
「まるで人事みたいに言ってるけど、ピカチュウ、あんたにも責任があるんだからね」
「……して、プテラ。本題へと戻ろう。何か手がかりになりそうな情報を見つけたのではないのか?」
釘がたっぷり付いた横槍をかわし、俺はプテラに尋ねる。


「敵さんへの手がかりになるかわかんねえが、こっから南西辺りにあるヒワダタウンってチンケな町が、何やら妙な事になってるらしくてよォ」
「妙な事?」
「電気ネズミの旦那は、ヤドンってぇポケモンは知ってるかい?」
俺は、全身ピンク色をしたマヌケ面の四足獣を思い起こす。
「知っている。締まりのない顔をして、年中ボーっとしている奴らだろう」
カントーで暮らしていた頃に見かけたことがあるが――一度、奴らの性分を知らずに会話を試みようとして、随分と苛立たされたものだ――こちらにも生息しているのか。
「奴らがどうしたというのだ?事件や荒事とはまったくもって無縁な、能天気の極みに座している奴らだぞ?」
「おう。ヒワダタウンは、そんな奴らにピッタリな何にもねえ穏やかな町でよォ。普段はヤドン共も町のそこら中で一日中ボーっとしてやがるらしいんでぇ。だが、ある日、そのヤドン共が急に町中からすっかり姿を消した……」
「なるほど、確かにそれは尋常では無いな。奴らは敵を目の前にしても、ぼんやりとしているような奴らだぞ。それが一斉に姿を消すなど……何か裏があるとしか思えん」


「誰かに攫われたり始末されたのかもしれない、ってこと?だけどそのヤドンってポケモンがピカチュウの言ってるように人畜無害なのなら、わざわざそんなひどいことする理由がわからないけど」
ミミロップは顎に手をやり小さく首を傾げる。
「へっ、無知だねえ。奴らの尻尾は珍味で、そこそこの値段で売れるのさ。切ってもまたその内トカゲみてえに生えてきやがるから、大量に捕らえておけば大儲けってワケだ」
得意げにデルビルは答えた。
「ほお、やけに事細かではないか。まるで目の前で見ていたかのようだな」
俺はじとりとデルビルに視線をやり、わざとらしくトゲを持たせた調子で言った。
案の定、デルビルはぎくりとしたようにびくつき、顔を強張らせる。
「い、いや、一時期そんな風な密漁が問題になって、ニュース番組で取り上げられてるのを見たんだよ」
誤魔化すようにデルビルは苦笑いした。
「今回のヤドンの失踪もそれが原因だと思うか?」
あまりにあからさまな態度と嘘に、思わず鼻で笑い飛ばしそうになるのを内心に留めて、俺は訊いてみる。
「その可能性は高いだろうなあ。奴らの使い道なんて、思いつく限りじゃそれぐらいだ」

「ひどいや、そんなの……」
アブソルは悲しそうに俯き、足を微かに震わせて呟いた。
「ねえ、ピカチュウ、ヤドン達がいなくなったのが本当に悪い奴らに捕まっているせいなら、助けに行ってあげることはできないかな?ずっと尻尾を切られ続けるなんて、あんまりにかわいそうだよ」
顔を上げ、アブソルは潤む目で俺を見つめて言った。
「けっ、俺達にゃ今、フーディンと化物共の行方を追うっていう、ピンクのマヌケ顔の救出なんかよりも優先しなきゃいけないことがあんだろうが。ガキの偽善になんて付き合ってる暇はねえ、だろ?」
デルビルは嘲笑し、同意を求めるように俺を見やった。
「……確かに、最も優先するべきはミュウツー達の追跡だ――」
「ピカチュウ……?」
ショックを受けた様子で、アブソルは今にも泣き出しそうに表情を歪める。

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