第40章 - 8

「……残念ながらもうカントーにはいないようニャ。カントーとジョウトの間に立塞がるのは、高く険しいシロガネの山脈だけじゃあないニャ。生息する強力なポケモン達、その中でも特に厄介な鋼の怪鳥エアームド共が多く住み着く鋭い茨の森が、長城のように広く張り巡らされていたのニャ。余程のツワモノ且つイカれてる奴でなきゃ近づきもしない堅牢な茨の城塞に、何者かが真っ向から馬鹿でかい穴を開け、ひしゃげた鉄屑の山を築いて越えて行ったのが丁度ニ、三年ばかり前……」
間違いねぇ、マニューラは小さく呟いて、目を鋭く細めた。
「世話になったな」
礼を言って、マニューラは背を向け歩み出した。
「あっちに行ってからの当てはあるのかニャ?」
「ジョウトの事なら多少は知ってる。心配しねーでもすぐに見つけ出して、始末してやるさ」
マニューラはひらひらと後ろ手に手を振り、去って行こうとする。
「あー、そうだ」
その間際、何か不意に思い出したように声を上げ、マニューラが立ち止まる。
「どうしたニャ」
「もし、まず無いとは思うが、シンオウから来る奴が居ても、余計な事は言うんじゃねーぞ。特にクソ――ドンカラスの野郎にはな」


再び、ハクタイの森の洋館――

ちびちびと酒杯を嘗めていたドンカラスの目が、ふと壁の一画に留まる。
いつかマニューラが刻み込んだ、稲妻の形――ピカチュウの紋章。

――いつの日か、俺より強いピカチュウが現れたなら、この紋章を贈って欲しい――

ドンカラスの脳裏に、未だ忘れ得ぬ恩人の最期の言葉が蘇る。
『約束は果たしやしたぜ……ボスのような男が掲げるんなら、何も文句はねえでやんしょ』
それが引き金のように、次々と過去の記憶が走馬灯のように思い起こされていく。
『でもよう、時々思うんだが……いや、馬鹿げた空想かもしれねえが、全く有り得ねえ話じゃねえ。ひよっとしたら……ボスは、あの……』
その時、食堂のドアが大きく開き、ドンカラスはハッと我に返った。

「ん?糞ネコ共はどうしたんでやんすか?あっしの奢りだって伝えたんでやしょ?」
エンペルトが一匹だけで戻ってきたのを見て、ドンカラスは訝しんだ。
「うん、それが……早々にキッサキに帰るって、みんな出て行ってしまったポ……んだ」
「…………そうでやすか……」
ドンカラスは深く溜息を吐いた。
「こんな事は初めてじゃないかな。ドン……一体、カントーにどんな因縁があるんだ?」
エンペルトは傍に腰掛け、空になったドンカラスの杯に酒を注ぐ。
「あっ……い、いや、別にいいんだ。こ、これは、単なる僕の好奇心だポチャ!」
ドンカラスが黙然としているのを見て、エンペルトは慌てて取り成した。
だが、ドンカラスは何かを決したように一気に盃を空け、重い口を開き始める。
「なあ、あっしが……いや、あっしとあの糞ネコが、シンオウの生まれじゃねえ流れ者だった、って、おめえさんに話した事ぁありやしたかねえ?」
「え……?」
「……これは、単なる酔っ払いの、単なる過去の戯言だと思って聞いてくれりゃ結構でやす。もうどのくれえ昔になるか……あの頃、あっしはまだ、一介のケチなヤミカラスでやんした――」


テンガン山へと向かう、ハクタイシティの外れ――
辺りに誰も居ない事を確かめ、三匹のニューラは揃って大きく息を吐いた。
「はあ~……ヒヤヒヤしたっつーの……」
「いつバレるかと気が気じゃなかったぜ、ギャハハハ!」
「まあ、何とか誤魔化せたみたいだし……もういいんじゃない?」
「ひゃはは~!……にゅ~ん」
途端にマニューラの形がグニョグニョと崩れ、紫色の軟体に姿を変えた。
「しっかしよぉ、何だって俺らがしなくていい苦労をしなきゃなんねーんだっつーの!」
「マニューラの奴、言い出したら聞かねえからな、ギャハハ!」
「まったく、急にカントーに行くなんて、一体どういうつもりなのよ……あ、もしかして……ああ見えて、やっぱり薔薇の王子様に惹かれるお年頃だったりするのかしら?」
「……何言ってんのか全っ然訳わっかんねーっつーの」
「ないない、奴に限ってそれは絶対ない!ギャハハハハハ!!」
笑いながら彼らが再び歩き出そうとした時、メタモンがメスニューラの尻尾を引っ張る。
「にゅにゅ~ん」
「ちょっと!何すんのよエッチ!……あら? 何それ?」
メタモンはニューラ達に、何やらボロ布に包まれた物を差し出した。
結び目の間に、マニューラが書いたと思われる、手紙らしき紙切れが挟まっている。
「何だこりゃ……相変わらず汚ねー字だっつーの」
ブツクサ言いながら、オスニューラは手紙を開いた。

『いつもテメーらには世話掛けて済まねえな。こいつはちょっとした礼ってやつだ。
万が一、オレが戻ってこれねえ時にゃ、テメーらのうちの誰かが使いやがれ。くれぐれも、糞カラスやピザデブ共とケンカなんかすんじゃねーぞ。
こわいこわ~いピカチュウさま~にカミナリ落とされっからな。そんじゃ、あばよテメーら。達者でな。
強くて優しくて美しくて可愛くて格好よくて理知的なマニューラちゃんより』


「ったく、ざーけやがって。しかしまあ、あいつが礼なんて、珍しい事もあるっつーの」
「何が入ってんだ?食いもんか?ギャハハ!」
「ちょ……ちょっと……そんなんじゃないわよ……こ、これ……!」
包みを開けていたメスニューラの声が震え、心成しか顔が蒼ざめている。
覗き込んだオスニューラ達の表情も、みるみるうちに強張っていく。
それは、滑らかに研ぎ澄まされ、尖った切先が銀色に光る――

するどいツメ――本来なら、相手の急所を狙い易くする戦闘道具の類いである。
だが、彼らニューラ族にとっては、進化に関わる重要な代物でもあった。
おいそれと入手できる物ではない故に、そこには特別な意味が伴っていた。

「ど、どーゆー事だっつーの?!」
「そんなの決まってんじゃない!あたし達のうちの誰かが、マニューラの後を継げってワケ!」
「じゃあ何か?!あいつは……最初からそんなつもりで……ギャ…ハ……」
「ち……畜生ぉ!!!」
オスニューラは怒り立ったように、包みを引っ掴んで地面へ投げ付けた。
「あいつはいっつもそうだっつーの!!肝心な事は何一つ言いやがらねえ!!はん!俺ぁゴメンだね!こんなもん、おめーらの勝手にしやがれっつーの!!」
「ギャヒー!冗談じゃねえ!俺だって勘弁して欲しいぜ!!」
「あたしだってお断りよ!こんな他人のお情けで強くなったって意味ないじゃない!!」
一頻り憤り、喚いた後――三匹の間に、長い長い沈黙が続く。


――
「……とにかく、だ……このツメの事だけは、仲間連中にも内緒だっつーの……」
やがて、漸く落ち着きを取り戻したニューラ達は、ボツボツと当面の事を話し始める。
「まだ、帰ってこねー、と決まったワケじゃないかんな。ギャハ」
「ノコノコ戻ってきたら、そん時にでも突っ返してやればいいわ。でも……どんなロクデナシが嗅ぎ付けるとも限らないから、巣には持って帰れないわね」
「じゃあ、どっかに隠しとくかっつーの」
「ヘタな場所じゃあ、すぐ見つかっちまうぜ、ギャハハ!」
その時、ふとメスニューラの目に、街外れに佇む、古びた竜の石像が映った。
その巨大な姿は、まるで月に向かって咆哮するかのように見える。
「あ、そうだ!」
何かを思い付いたかのように、メスニューラは包みを拾い上げ、石像へと走り出した。
「おいおい、どこ行くんだっつーの?」
「ボーマンダ……ディアルガ様に預かって貰うのよ!」
メスニューラは軽々と台座に飛び乗った。
「ああ~ん、元の神々しいお姿も、ス・テ・キ」
暫しウットリと眺めた後……
石像の上へ駆け上がり、その大きく開いた口の中に、奥深く包みを押し込んだ。
「ディアルガ様、しばらくお願いね。早く帰ってくるよう……あのバカを守ってやって頂戴」
メスニューラは石像の耳元に囁くと、一気に下へ飛び降りた。

黒い三匹の影と、それを追い掛ける一匹の影が、テンガン山の山中へと消えていく。
それを見たのか見なかったのか、月の明かりか雲の加減か……一瞬、石像の目に、白い光が宿ったように見えた。


濃厚な闇が包む地下を、俺達は黙々と歩を進めていった。
代わり映えの無い一寸先も不明瞭な暗闇を延々と歩いていると、耳に届いてくる周りの者達の足音も何だかくぐもって聞こえてきて、足裏に感じる冷たいコンクリートの感触もどこか曖昧になり、手足がどこにあるのかすら茫漠としてきて、本当に今この場に俺の体はあるのか、実は意識だけが本体を置いてけぼりにして歩いてきてしまったのではないか等と妙な錯覚と妄想に捉われてしまう。
いよいよもって変になってしまいそうな寸での所で正気を繋ぎ止めてくれる唯一の救いは、トンネルの壁に定期的に備え付けられている非常灯だ。
例えその光が風前の灯火の如く弱々しく、一つ一つが離れた間隔でしか用意されいないとしても、まだ辛うじて自分の体がここに存在していて、着実に前へと進んでいるのだと知らせてくれる。

どのくらいの間、そうやって歩き続けたのだろう。地上はそろそろ空が白み始めた頃だろうか。
こんな地下トンネルの中ではまったく窺い知る事は出来ない。
「ねー、ちょっと休まない? ちょっと疲れてきたんだけど」
気だるげなミミロップの声が暗闇に響く。それを皮切りに、他の者達も口々に疲労を訴え出した。
ペルシアンの所から殆ど休まず歩き通しだ、無理もないか。俺も少々疲れた。
「そうだな。次の電灯の下で少し休憩するとしよう」
前方の電灯を示し、俺は言った。
ようやく電灯の下まで辿り着き、俺は立ち止まって全員の点呼を取る。
ミミロップ、ロズレイド、ムウマージ、アブソル、デルビル、俺を含めて計六匹、ちゃんと揃っているようだ。
無いよりはまし程度の薄暗い明かりながら、自分自身や他の者達の姿をぼんやりとでも目で確認できるというのは、大分気分的に楽になる。
俺は安堵の息をつき、近場の壁に背を預けて座ろうとしたところで、急にミミロップがぴくりと耳を反応させて動きを止めた。
「誰か、後ろから来てる」
「なに?」
ミミロップはその場にしゃがみ、床に手を触れた。
「えーと、数は一人、いや、一匹……?」
集中した様子で目を閉じ、ミミロップは呟く。


不可解な行動ながら、冗談や何かでやっているようには思えない。
「一体、何をやっているのだ?」
直接声をかけるのも何か躊躇い、俺はロズレイドに小さく尋ねてみる。
「しっ。波動を読んでいるんですよ」
そういえば、俺がいない間に何やら修行をして来たといっていた。その成果がこれか。
「何だかちょっと、黒くて冷たい嫌なものも少し感じる……殺気、恨みの類かな? 気をつけた方がいいかも」
ミミロップはすくと立ち上がり、俺達が今まで来た暗闇の方に向かって構えを取った。
「……アブソル、下がっていろ」
「う、うん」
俺はアブソルを後方にやり、頬に電気を集める。
ロズレイドも手の花から毒針を伸ばし、ムウマージも目を吊り上げてローブの裾を揺らめかせ始めた。
その横でこっそり自分も安全な背後に逃れようとしているデルビルをとっ捕まえて前線に引き戻し、俺達は暗闇を注意深く見張る。
じっくりと耳を澄ましてみれば、確かに微かな何かの足音が聞こえてきた。足音はどんどんと強まり、闇の中に浮かぶ光る二つの眼がすぐそこまで近づいてきているのが確認できる。
俺達は息を呑み、姿が薄明かりに晒されるのを待った。暗がりの奥から現れたのは――。

「何だ、オメーら。まだこんな所でチンタラしてやがったのか」
その正体に、俺達は気が抜けたように息を吐き、構えを解く。
「ま、マニューラさんっ!どうして!」
 素っ頓狂な声を上げ、ロズレイドは飛び付きそうな程に喜び勇んだ様子でマニューラに駆け寄っていった。


「いよう、ロゼ。なんだ、行く時は捨てられた犬みてーな面してたくせに、もう元気じゃねーかよ」
マニューラは飼い犬を撫でる様にぐしゃぐしゃとロズレイドの頭を撫でる。
……最早、師弟というより主人とペットだな。

「おっかしーなー、嫌なものを感じ取ったような気がするんだけど……修行不足?」
ミミロップは首を捻り、ぼそりと呟く。
俺は心の底から溜め息が漏れた。やはり、またマニューラが付き纏ってきた。
どうしてこう予感というものはろくでもない物に限って当たってしまうのだろうか。
「今度はどういうつもりだ」
聞いてもろくな答えが返ってこないとはわかりつつ、半ば形式的に俺は尋ねる。
「オレもジョウトに用事が出来た、それだけだ」
予想の範疇にぴたりと収まる、おざなりな答えが返ってきた。
「勝手にするがいい。俺達はここでしばらく休んでから行く」
俺は投げ遣りに言い、壁際に座った。
「そーそー、敵に備えて体力は大事に温存しなきゃーな。オレも飛ばしてきて疲れたし、ご一緒させてもらおうか」
くく、と挑発的に笑い、マニューラはどかりと座り込んだ。
「……もう好きにしろ」


さて、休憩をとるにしても、全員で一斉に寝入るわけにはいかない。
今は一時的に停止しているとはいえ、仮にもここは人間の縄張り内だ。
常に最悪の状況を想定しておくに越したことはない、数匹ずつ交代で仮眠をとるのがいいだろう。
……信用のならないデルビルとマニューラに対して、見張りを立てるという意味も有る。
組み合わせは、そうだな――デルビルには、正体を察している俺が直接目を光らせた方がいいだろう。
マニューラの方は、ロズレイドが適任そうだが、一匹だけだと何か悪い口車に乗せられかねない。
二匹に何かしらの理解のあるらしきミミロップを付ければいいのではないだろうか。
俺は、交代で仮眠をとる事と、その組み合わせを提案する。
「ねえ、ボクとマージは?名前が呼ばれなかったんだけど」
少し不安そうにアブソルが尋ねる。
「お前達は気にせず、ゆっくり休むがいい。寝る子は育つというし、子どもにあまり無理はさせん」
「……ボクばっかり――」
むっとした様子で、アブソルは俯き加減に何やら呟いた。
「どうした?具合でも悪くなったのか?」
予期せぬ態度に、戸惑いながら俺は顔を覗き込むようにして問い返す。
「違うよ、もういい」
しかし、アブソルはますます不機嫌そうに、ぷいと顔を背けてしまう。
「ボクもピカチュウと一緒に起きてる。……子どもみたいに心配されなくても大丈夫だから」
「じゃあ、マージも~」
突っ撥ねる様に言うと、アブソルはムウマージを連れていつもより俺から少し離れた位置に座った。
どうしたというのだ、今までこんな聞き分けのないことは殆ど無かったというのに。
俗に言う反抗期という奴だろうか、子どもは分からぬ。自然と機嫌が直るまで待つしかないか、やれやれ。


――

そろそろ交代の時間だ。
俺はデルビルと共に――結局、あれだけ張っていた強情より眠気の方が勝り、アブソルとムウマージは眠ってしまっていた――ロズレイド達を起こしにかかる。
まだ眠いとぶつくさ文句を言いながら起き上がる三匹を尻目に、俺はごろりと横になってさっさと目を瞑った。
途端に、腹を減らした睡魔がごちそうが来たとばかりに大喜びで触手を伸ばし、あっと言う間に意識を絡みとって、俺を深い深い深遠へと飲み込んで――

茶色の横縞が二本入った黄色い大きい背と、その背に安心しきっておぶわれている小さな俺。
これは、いつかにも見た夢だ。だが、以前見た時と大きく違うのは、俺はその背の偉大さを知っている、感じる温もりの意味を分かっている。
……そのせいだろうか。濃い霞に包まれたように見えなかった、背と俺を取り巻く周りの情景にも、少しばかり目をやることが出来るようになっていた。ここはどこの林の中なのだろう。
葉を紅く綺麗に色づかせた木々が並ぶ、見たこともない景色だ。少なくともカントーではないように思う。

横に並ぶようにして飛んでいる柄が悪そうなヤミカラス――何だか、見覚えのある仏頂面な気がする――は仲間だろうか。
そして、もう一匹、まだ誰かこの場にいる、いや、いたような気がする。
“それ”を思い出そうとすると、急に背にぞわぞわと怖じ気が走り、体がずんと重くなり、左耳がひりひりした。
確か、この感覚は――
答えが出掛かった時、急に俺は何かに捕まれて黄色い背中から引っぺがされ、後ろから押さえ込まれ、成すすべなく――
そうだ、“これ”は、や、やめ、やめてくれー!……――

『ガブッ!』


左耳の先を襲う、尖った何かで挟み込まれたような激痛。

「むぎゃぁーッ!」

取り巻いていた眠気など微塵もなく砕け散り、喉から叫び声と共に吹っ飛んでいった。
俺は痛みと黒い手の内から逃れようとじたじたと暴れ、放電しようと頬に電気を集める。
「おおっと」
充電しきる前に手の主は俺を放り、ひょいと身を離した。
俺はぜえぜえと息を切らしながら、左耳の先が食いちぎられていやしないか恐る恐る確認する。
まだちゃんと付いている、ほっと息を整えてから、俺は痛みの元凶を睨みつけた。
「何のつもりだ、貴様ァ!」
「何って、もうテメーで決めてた出発の時間を過ぎそうだってのに、どんなに声掛けても揺すっても、起きやがりゃしねーお寝坊さんに、熱ーい目覚めのキッス代わりをくれてやっただけさ」
鋭い牙を見せ付けるように、マニューラはにやりと笑う。先に起きていた他の者達も、くすくすと笑った。
「う、む……」
俺はそれ以上何も言えなくなり、ばつの悪さを誤魔化すようにしてマントの埃を払って立ち上がる。
「それにしても、どんないい夢見てたんだよ?随分締まりなくへらへらしてやがったぜ、ヒャハハ」
「うるさい、そんなこと覚えておらぬわ」
目覚めの衝撃に掻っ攫われ、夢の内容なんて殆ど何も覚えちゃいない。残っているのは、この左耳の先のろくでもない痛みだけ。まったく、最悪の寝起きだ。

こうして、一時の休憩を終えた俺達は、再び暗いトンネルをジョウトに向かって歩き出した。
騒がしい同行者が増えた以外に、まったく代わり映えのしない地下道を進むこと数時間。
一体、今どの辺りまで来ているのだろうか。太陽の光が、いい加減恋しくてたまらない。
そんな風に考えながら緩やかなカーブを抜けた矢先の事、暗雲のように立ち込める闇の先に、一番星の如く輝く一点の光を見つける。
こんなに離れていても、人工の弱々しい光とは力強さがまるで違って感じる――間違いない、あれは外の光だ!

ジョウト編 序章 はここで完結です。次のページからは『過去編』となります。
現在この先はリニューアル作業中のためしばらくお待ち下さい。

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