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第36章_1

影に飲み込まれ視界が覆われたと思った次の瞬間には、まったく異なる場所に俺は佇んでいた。
墓の内部のようだったギラティナの棲み処とは打って変わり、静謐で澱み気の無い空気や磨き上げられた乳白色の壁面と床板は神殿を思わせる。
だが、その過ぎた潔癖さは、また違った気味の悪さがあった。

『意識はあるか』
頭の中に直接ギラティナの声が語り掛けてくる。俺は心の中で頷いて返した。
『問題ないようだな。では早急に封印の解呪に向かってもらう』
有無を言わせずギラティナは促す。だが、それに取り掛かる前に解消しておきたい疑問が幾つかあった。
ここがどういった場所なのか。ギラティナが支配する領域ではないということは容易く想像できる。
そして、懸念する強大な障害とは何なのか――ギラティナへ尋ねた。

『時が来れば話そう。だが、その前にお前にはやるべき事があるはず。そこから出口は見えるな?』
はぐらかされたようで腑に落ちない思いはしながらも、光が差し込む出口らしきものを見つけ答える。
『外に出るとすぐに巨大な建造物が遥か遠方に臨めるはず。目指すべき地はそこだ。道中、危険が迫った時、すぐに影に身を隠せ。影は我が力。お前の存在を完全に覆い隠すだろう』
ギラティナに対し言い様のない疑念を少しずつ抱き始めつつも、今は従うしかなかった。


『剣はあくまで最終手段と思え。できうる限り他の方法で切り抜けよ。失敗したその時は死以上の苦痛がもたらされることだろう。ゆめゆめ忘れることなかれ』
暗闇に慣れた目を光から守りながら門をくぐり、外へと歩み出る。眩しさに顔を歪めながらゆっくりと手をどけ、徐々に目を慣らしていった。そこに広がる景色は、自分達の世界とあまり変わりが無い。
高原のようで、大地には短い草が生い茂り、先程の建物内と同じ乳白色をした柱や石で組まれた簡素なゲートのようなものがあちらこちらに点在している。
それは想像していたものより随分と平和的な光景に俺の目には映った。どこに恐れるような危険があるというのだろうか。
話に聞いた通りに遥か遠くの切り立った高台の上にに霞む巨大な神殿らしきものを見つけ、目的地と進路を見定める。長い旅路となりそうだ。
ちらちらと青空の向こうで反射するように輝く無数の光達が目に入り、見上げる。
時折、魚が泳ぐかのように移動しているようにも見えるが、一体何だろうか――。
『相も変わらず……。趣味の悪い世界だとは思わぬか?』
ギラティナの領域も、他のことをとやかく言えるような世界では無いだろうと思ったが、伝わってしまわぬように努めた。
『直に真の姿が分かる。さあ、行け』
急き立てられ、俺は再び歩を進め始めた。その時、空の光の一つがこちらの動きに僅かに反応を見せた気がし、注意深く見なおすが、何も変化はないように思える。気のせいだったのだろうか。


歩けど歩けど、一向に神殿にたどり着ける気配はない。もう数時間は歩き続けただろうか。
目に見える神殿の全体像は徐々に大きくなっているため、着実に近づいて行っているのは間違いないのだろうが……。
幸い、不思議と腹は減らないため食料の心配は今のところ無いが、疲れは精神的なものを含めて否めない。
少し休憩しようとそびえ立つ柱の一本の傍に座り、一息をついた。ギラティナも黙認しているのか何も言わない。
それにしても、不思議な材質の美しい柱だ。道中でも同じものを何度も見て気になってはいたが、まじまじと眺め新たな特異性に気付く。
乳白色だけでなく、時に極淡い桃色も帯びた奥行きがある輝きはまるで真珠――。魅入られたようになり、ふらふらと柱に手を触れた。
『たわけが! それに触れるでない!』
ギラティナの声が頭の中で大きく響き、俺はびくりとして手を柱から離した。
柱はびりびりと振動し、周りの柱が音叉のように反響しだす。
『遅かったようだ。何度も、近寄るたびに柱には決して触れぬように忠告はしていたはずだが、届いていなかったとは既に心が捕われていたか。奴らが来る。すぐにその場を離れて物影に身を隠せ』
振動の波は空気を伝わって広がっていく。上空で点のごとく輝いていた光達が散らばり、その一つがぐんぐんとこちらに迫ってくる。
その正体は桃色の鱗をした細長い体系の巨大な魚だ。口先はダーツの矢のように鋭く尖っている。
――魚? 魚が、魚が宙を泳いでいる!
『決して手は出すな、奴らからは逃げることに徹しろ! 下手に危害を加えれば、さらなる“大物”を呼ばれかねん』


異様な状況ではあるが、驚き竦んでばかりはいられない。言われた通りに物影を探し周辺を見渡す。
『サクラビスか。あまり目も頭も良い方ではないが、油断はするな。そうさな、あの場所に丁度良い場所があるではないか。行け』
言葉と共に即座に頭の中に暗い祠のようなもののイメージとその位置が浮かび、そこに向かって俺は一目散に駆け出した。
柱の間を縫うようにして走りぬけ、少し開けた所に出る。祠まで後もう少しと言うところで、背後から少し籠もったような甲高い泣き声が発せられる。
駆けながら振り向くと、先程のサクラビスが十メートル後方にまで迫り、今にも渦巻く水流をこちらに放とうとしていた。
『あれに捕まるでないぞ。抵抗できなくなった獲物に鋭い口を突き刺し、ゆっくりと生き血を啜るのが奴らの嗜みと聞く』
他人事のような言い回しに苛立ちを覚えながらも、何とか祠までたどり着き、滑り込むようにして中に入り込む。
その瞬間、竜巻のごとく渦巻く水流が外を過ぎ去った。巻き込まれていれば血を吸われる迄もなく窒息死していたのではないかと、ぞっとする。
俺の姿を見失ったのかサクラビスは祠の上空辺りをぐるぐると見回り始めた。
そして、とうとう入り口を見つけたのかこちらへと向かってくる。
これはまずいと真っ暗な祠の奥に進もうとするが、すぐに何か固い感触のものにぶつかり、尻餅をついてしまう。
恐る恐る見上げると、幾つもの大きな丸い目がぼんやりと輝いていた。
『ふーむ、先客が居たか。無礼を詫びても、そやつは許しはしまい』


外からはサクラビスが迫り、中にはさらなる敵――退路は完全に断たれた。光は尚一層輝き、内部を照らす。
奥に潜んでいたものは大きな顎をした蛇のような怪魚だった。幾つもの目だと思っていた光は体の模様だ。

『なあに、案ずるな。そのままじっとしていろ』
――何を考えている、このままおとなしく丸呑みにされろというのか? 冗談じゃあない。
大きな顎を開き、怪魚はこちらを振り向く。こちらに牙を剥いて襲ってきた瞬間に、言い付けなど無視して電撃を見舞ってやろう。
しかし、怪魚は俺の姿などまったく見えていないかのように横を過ぎ去り、外のサクラビスに飛び掛かった。
俺が呆気にとられている中、二匹は激しく争いながら祠から遠退いていく。

『ハンテールの弱々しい光ごときで、我が加護はかき消せんよ』
気付くと、俺の体にはいつの間にか色濃い影が外套のように纏わりついていた。



安全を注意深く確認し、ゆっくりと祠から歩み出る。
外の光を浴びると、たちまち影の外套はかさぶたみたいにぼろぼろ体から剥がれ落ちて溶けてしまった。
粘液状になった切れ端達は意思を持っているかのように一つに集うと、そそくさと暗がりへと逃げ帰っていく。
『陽光を逆に侵食する程の力は今は出せん。この先、そうそう都合良く物影が見つかるとも限らん、先程のような失態はおかすなよ』

平和的な世界などではないということは十分わかった。狂暴な魚が空飛ぶ異形の世界だ。
一体、どうなっているのか。ただの幻覚とも思えない。
『左様、幻覚などではない、あの魚共は確かに存在する。お前にとっては陸であっても、奴らにとっては水の中だ。この世界は、幾つもの空間を重ねて、無理矢理一つの平面に仕立てているのだよ。一枚捲ればまったく別の環境だ』
幾つもの空間が一つに? さっぱり意味が分からない。
『……言葉だけでは理解できぬだろうな。興味があるならば、戯れに実際に体験してみるがいい。幾つか意図的に境界が薄くしてある地点がある。あの門をくぐってみろ』
石組みのゲートの一つをくぐってみるように促され、怪訝に思いながらも近場にあるものに向かった。

ゲートを潜り抜けた瞬間、砂塵が顔を吹き付け、足裏にサラサラとした砂の感覚が伝わる。
驚愕して辺りを見回すと、緑溢れる高原は、乾いた砂が吹き荒れる不毛の地に一変していた。
だが、神殿や柱等の建造物の位置関係は変わってはいない。
衣装を変えるかのように、景色だけが全くの別物と化している。
『垣間見て、少しは理解したか? ろくな世界ではない。一見して、どのような種族とも同じ地に住める理想郷に見えるかもしれん。だが、実際は明確な住み分けができず、小競り合いが絶えないのだ。魚と鳥が空で争うなど何とも悪趣味だろう』


―――平たい石の上で座禅を組み、ミミロップは深く目を閉じる。
だが、その集中力はすぐに途切れて煩悩まみれの妄想に耽り、つい口元が緩む。
「喝ッ!」
その一声と共にビー玉程の気弾が放たれ、ミミロップの額でバチンと音を立てて弾けた。
「いたーッ!?」
いささか大げさな声を上げてミミロップは額を押さえ、恨めしげに低く唸ってルカリオを見やる。
「ええい、そこまで痛がる程に強くやってはいないわ!まったく成長がみられない。本当にやる気はあるのか、やる気は! ……うう、頭が痛い」
ルカリオの指導を受け始めてから数日経った。しかし、ミミロップに進歩は見られず、寧ろ昔教えていた頃に比べて更に退化した腑抜けた態度にルカリオは随分と頭と胃を痛めていた。
手合せの後もルカリオの希望でミミロップの監視役として残ったチャーレムも、呆れた顔でその様子を見守っている。
「ありますってー! それに、昔はできなかったこんなこともできるようになったじゃないですか。ほら、ぴゅー」
頭を抱えるルカリオに、ミミロップは指先から水鉄砲のように弱々しい青い波動を出してみせる。
ルカリオは苛立たしげに片手でそれを振り払った。
「そんな小火も消せないような水の波動でなんになる!」
再び喝を入れられ、ミミロップは大きく仰け反って倒れた。
そして泣きじゃくりながら――当然ながら泣き真似だが――起き上がる。
「だってこれ昔から退屈で苦手なんですもん。もっとズババーッと派手で楽に強くなる方法ないんですかー」
「無い。そんな方法があれば自分でやっているわ、愚か者めが。鈍りきって基礎の基礎まで満足に出来なくなっているお前が悪い。波導は言わば気、心の力。清流のごとく心身を澄ませ、地道に鍛練を積むものだと何度も言っているだろう。
さあ、やり直せ! お前のような不肖の弟子を世に出しては、自分だけにでなく先祖の顔にまで泥を塗ることになる」
「ひーん……」
ピカチュウの道のりと同じように、こちらも長く険しい――。



―――これが砂漠というものか。今まで生きてきて話には聞いたことがあっても直接経験した事の無い景色に感嘆を覚え、半ば呆然となりながら暫し海岸とはまた違った砂の感触を楽しみながら歩んだ。
アブソルもこのような気持ちで旅をしていたはず――早く助けてやらねばな。
我に返り、気を引き締めなおす。とにかく、こんななれない環境を長距離歩くのは難儀すぎる。
早々に高原に戻りたいところだ。元来た方向へ向かおうと踵を返すと、
ゲートを挟んで遠方から数匹の魚がこちらへ迫っていることに気付く。
幸い、まだこちらには気付いていないようだ。だがゲートまで戻っていては見つかってしまうだろう。
しばらくはこのまま進むしかない。余計な好奇心が仇となってしまった。

乾ききった細かい砂地を歩き続けるのは想像以上に体力を奪っていく。
そして定期的に風に乗って目と口に襲い来る砂が集中力を鈍らせ、気力を奪った。
何度目かも分からない砂嵐の襲撃から目を守りながら進んでいると、急に片足が砂に沈み込んだ。
そのまま両足を取られてしまい、ずるずると下へと体が滑っていく。
見れば俺はすり鉢状となった深い窪みに滑り落ちていっている様で、止まろうと藻掻いても掴む所が無く、むしろ藻掻けば藻掻く程に砂は流れ落ちて底へ底へと運ばれていく。
これは、非常に嫌な予感がする。アリアドスというポケモンが獲物を捕らえる際に張る糸の罠は、かかったが最期、獲物が抵抗すればする程にその身に糸が絡まり、窮地に陥れるのだと聞いたことがある。これもその類ではなかろうか。
その時、底の砂が蠢き、何かが姿を現した。それはギザギザの亀裂が入った、大きな卵のような丸い物体だ。
その物体は表面に開いた目らしき黒い穴の奥で光る十字の瞳で滑り落ちてくる俺を確認すると、
嬉しそうに大きく亀裂を開き、ガチガチと噛み鳴らし始めた。
嫌な予感は的中していた――!



―――逃れようとする足に巨大な口に並ぶ鋭い牙が食い込む。
苦痛の悲鳴を上げる間もなく、そのまま瞬く間に体は下へと引きずり込まれていった。
「たべられた~! キャハハ~」
テレビだけが灯る暗い部屋で一匹、ムウマージは無邪気に笑う。
ドンカラスはヤミカラス達を連れ立って夜の見回りに出掛け、エンペルトは自室へと帰ってしまったが、ムウマージは飽きる事なく映画を見続けていた。傍らには山のように見終わったビデオが積まれている。
映画も終盤、主人公らしき人間が巨大鮫の口内にボンベを押し込み、ライフルで狙いを定めた。
銃口が火を吹いた次の瞬間、ボンベが爆発し、鮫は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「あーあ、やられちゃった~」
退屈そうにムウマージはビデオを止め、次のビデオを探すが、好みに合うものが見つからない。
もう既に洋館にあるすべてのホラー映画は見終わってしまい、残るのは任侠物や録画されたロボットアニメなどあまり興味の無いものばかりだった。
ちぇ、と舌打ちしてムウマージはテレビの電源を落とす。しかし、スイッチは切れているにもかかわらず、画面にはぼんやりと顔のようなものが映りこんで消えなかった。
ムウマージは首を傾げて電源のONとOFFを繰り返すが、いつまでもそれは消えようとしない。
そこでムウマージは前にも感じていた違和感を思い出した。――やっぱりテレビの中に何かいる。
波長を霊のそれに合わせ、ムウマージはテレビに顔を突っ込むと、狭い空間の隅でうとうとと眠る、橙色をした小さなゴーストポケモンの姿を見つけた。
「きみ……だ~れ~?」

この時、用をたしに目覚めたついでに様子を見に来たエンペルトは開けかけたドアの隙間からその一部始終を見ていたが、部屋に入ることなくエンペルトはそのままそっとドアを閉めた。
きっと自分は寝呆けているのだろう。目をこすりながらエンペルトは自室へと帰った。
これから洋館で巻き起こる数々の騒動の前触れとも知らず――。



―――藻掻くのをやめたところで少しずつ滑り落ちていくことには変わらず、あのトラバサミのような顎に挟まれるまでの間が少し引き伸ばされるだけにすぎない。
『ナックラーの熱烈な歓迎を受けているようだな。親愛なる友としてでは無いのは言わずもがな、か』
「言っている場合か! この状況をどう切り抜ければいい!?」
『騒ぐな。砂の流れが早まるぞ。まだ奴に察知されたくはないが……こうなっては止むをえん。攻撃を許可する』
今更な攻撃の許可がおりたはいいが、ろくに身動きも取れず圧倒的に不利な状況ということには変わらない。
底は徐々に、確実に迫っている。
覚悟を決め、俺はナックラーへと電撃を放った。しかし、確実に直撃していたにも関わらず、ナックラーは少し驚いたような素振りを見せただけで、ほとんど効いた様子は無い。
電流のほとんどは奴には伝わらず、地面へと散ってしまったようだ。
中々滑り落ちてこない上に獲物の思わぬ反撃を受けて腹を立てたのか、ナックラーは短い前足で砂を叩いて揺らしはじめ、流れ落ちる速度が早まってしまった。
更に追い打ちをかけるように状況は悪化していく。聞き覚えのある甲高い声――。ここで足止めをされているうちに追い付いてきた、サクラビスの一匹が、上空からすぐそこにまで迫ってきていた。
絶体絶命だ。サクラビスを電撃で撃退できたとしても、ナックラーには為す術がない。
『好機が来たというのに何を遊んでいる。お前の腕輪は何の為に付いているのだ』
俺が引き出せる腕輪の力でどうにかできる状況とは思えない。奴らの頭に間抜けな花でも咲かせろとでもいうのか。
『我が力で補助をする。簡単なイメージでいい。草、蔓だ。魚に向けて放て』
ええい、ままよと俺は腕輪に意識を集中させ、言われた通りに蔓をイメージしながら大きな力へ心の手を伸ばした。
腕輪は透き通った高い音を立て緑色に輝き、光から数本の太い蔓が伸びてサクラビスの胴へと巻き付く。
『蔓を引け! 決して離すなよ』
ぐい、と力を込めて蔓を引いてやると、サクラビスはそれに条件反射的に抵抗して逃れようと逆方向へ泳ぎだす。
蔓を掴んだまま砂地を滑るように俺の体は引っ張られ、逃すまいと食らい付いてきたナックラーの顎を寸での所でかわし、とうとう砂地獄から脱することができた。


ナックラーから逃れた後もサクラビスは絡んだ蔓を振り払おうと暴れるように泳ぎ続ける。
砂地を乱暴に引きずられ、時に叩きつけられながらも俺は蔓を離さなかった。
この好機を逃すわけにはいかない。何とか動きを捕らえられている内に仕留めなければ。
身を隠せる場所が見当たらない今、逃してしまえば鳥以上に縦横無尽に宙を泳ぐ敵から逃げ切るのは難しく、真っ向から相手にせざるを得ない。そうなれば苦戦は必至だ。
もたもた戦っている間に他の魚達も集まってきて袋叩きにされかねない。

だが、こんな引きずられている状況では中々電撃の狙いは定まらん。もう少し距離を寄せることができれば――。
その時、俺の思いに呼応するように蔓が縮まり、引きずられていた体が少しだけ浮いたことに気付く。
蔓の伸縮程度なら今の俺でも操れるようだ。そうと分かればやることは一つ。
思い切り縮め、と心の中で命じた途端、俺の体は勢い良く浮き上がり、サクラビスへと引き寄せられていく。
しかし、あまりに念じが強すぎたのか勢いがつきすぎ、蔓はゴム紐のようにしなって俺はサクラビスより高く跳ね上がる。
叫び声を上げてしまいそうになるのを堪え、放り出されてしまわぬよう躍起になっている内に、遂にサクラビスの背に取り付くことができた。
サクラビスは振り落とそうと金切り声を上げて暴れるが、奴の胴に巻き付いている蔓にしっかりと俺は身を固定し、うるさくがなり立てる細長い口を轡のように縛り付けてそれを手綱代わりに掴んだ。
もはやどんなに暴れられようとも振り落とされる気はしない。後は煮るなり焼くなりだ。

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