第32章 - 3

ゴローン達の速度は速く、どんどんと距離を縮めてくる。
「少しでも足止めを……」
走りながら、横でロゼリアが両花から毒々しい色をした撒き菱をばら撒いていく。
菱を表面に食い込ませたゴローン達は転がるバランスを崩し速度を落としたが、すぐにそれらは抜け落ち、再び回転数を増し勢いをつけ始めた。赤い点滅と膨張の間隔も短くなってきている。
曲がり角に差し掛かると、レッドはホルダーからボールを一つ外した。
「追い付かれたらお仕舞いだ。だけど、カーブの近くに来れば奴らもスピードを緩めざるをえないはずさ」
道を曲がりきり、レッドが先の方へ先程外したボールを放り投げる。中から飛び出したのは、背中に大きな花を生やしている蛙のような大柄のポケモン――フシギバナだ。
「フシギバナ、こっちに向かって特訓した例のアレを思い切り放り投げろ!みんな、すぐに伏せてくれ」
フシギバナは一瞬、戸惑う素振りを見せたが、花の中心から巨大な種子をこちらへ向けて射出した。
レッドは片手で帽子を押さえながら、飛び込むように地面に伏せる。ただならぬ様子にすぐに俺達も続いた。
種は煙を吹きながら俺達の頭上を越えていく。顔を上げ、行方を目で追うと、種はそのまま角に向かって飛んでいった。
ほぼ同時に、角からゴローン達が手足でブレーキをかけながら滑るようにして姿を現す。
種は奴らの足元にからからと音を立てて虚しく転がり落ちた。吹き出していた煙も止み、何も起こらない。
……何だ?失敗なのか?
ゴローンの一匹が嘲笑うようにそれを踏み潰しかけた瞬間、種が息を吹き返したかのように大きく輝いた。
危険を感じ、俺は頭を抱え込み地に顔を戻す。立て続けに響く三つの爆発音。
衝撃にマントが捲り上がり、激しく煽られる。地面にしがみ付き、吹き飛ばされぬよう耐えた。

――パラパラと砂利が降り注ぐ。立ちこめる砂煙に咳き込みながら、俺はゆっくり身を起こした。
同じようにして、他の者達も起き上がってくる。
「げほ、ごほ――良かった、みんな無事のようだね」
ゴローン達は跡形もなく吹き飛び、居たはずの場所は浅く地が抉れていた。
爆発で角にあった岩の一つが崩れ、その先にも岩の道が続いている。
「大変だったけど、結果オーライってところかな。おかげで近道ができそうだ」


まったく、無茶をしてくれる。何が結果オーライだ。
体についた砂埃を払いながら俺はレッドを睨み付ける。
非難の視線を浴び、レッドは頬を人差し指でぽりぽり掻きながら苦笑いを浮かべた。
「あはは……君の自慢のマントを汚してしまったのは謝るよ。ごめんごめん、ちょっとさっきのは危なかった」
はあ、とため息が漏れる。あまり悪びれていない様子の軽い態度に、何だか怒る気も失せてしまった。
元はと言えばムウマージの不手際だ。あまり強くも言えん。
「さあ、気を取り直していこう!こっちでいいのかな?わかった所まででいいから案内してもらえるかな」
道の先を指差してレッドはムウマージに振り向く。こくりと頷き、ムウマージは先導を始めた。
「じゃあ、皆であの子についていこう。はぐれないようにね。フシギバナは最後尾の警護を頼むよ。リザードンは最前列、あの子の横だ。爆発音を聞き付けた新手がいつ現れるかもわからない。気を引き締めて行かないとね」
俺はフシギバナと共に最後尾につくことにした。
レッドとアブソルは列の中央に置かれ、その右横をロゼリアが、左横をミミロップが固めるような隊列となって進んでいく。

しばらく迷路のような道をぐねぐねと折れ曲がりながら進んできたが、幸いまだ敵に襲われる気配は無い。
「お前の主人はいつも先程のような無茶をしているのか?」
間を持て余し、俺は横のフシギバナに声をかけた。
いきなり声をかけられたためか、フシギバナはびくりと体を揺らす。同時に背の花が揺れ、がさりと音を立てた。
「……どうした?そこまで驚くこともあるまい」
びくびくとした目でフシギバナは俺を見つめる。
「ぼ、僕を食べたって美味しくないよ。そんなに睨まないでよ」
「……別に獲って食うつもりは無い。目付きが悪いのは元々だ」
こいつも何だか一癖ありそうだ。奴の手持ちには丁度良い性格をしたまともな者は居ないのだろうか……?


「本当かい?野性のポケモンは怖い奴ばかりだからなあ」
「本当だと言っているだろう。そんな小心でよくチャンピオンのポケモンが勤まるものだな」
体格に似付かわしくない小心翼翼とした態度に苛立ち、つい語気を荒げてしまう。
「うわわ、怒らないでよ。信じるから」
こういう手合いは苦手だ。扱いに困る。話し掛けてしまったことをほとほと後悔した。
「お前はいつ頃、奴の配下に加わったのだ?三年前には見かけなかったが」
脅かさないよう、慎重に言葉と口調を選んで俺は話す。
「……うん、僕がレッド君のところに来たのは二年前くらいのことさ。ヒトカゲとゼニガメと僕――今はリザードンとカメックス、その時の僕はフシギダネだね。僕と二匹は三匹ともオーキド爺ちゃんの研究所出身なんだけど、レッド君とグリーン君の旅に僕達の中から誰か二匹がパートナーとして同行することになったんだ」
「ふむ。見るからに臆病そうなお前はどちらにも選ばれなかったのだな」
「むむ……まあ、その通りだよ。結局パートナーに選ばれなかった僕は、その後もしばらく研究所で過ごしてたんだけど、二匹が急に居なくなって寂しかったなあ。みんな兄弟みたいに仲が良かったんだから」
「ヘイ、フッシー。あんな鈍亀と兄弟だなんて冗談でもやめてくれ。全身の鱗が逆立ちしそうな気分だ」
前にも聞こえていたらしく、肩越しに長い首をこちらに向け、リザードンは言い捨てる。
そして不機嫌そうに鼻をフンと鳴らし、前を向き直った。
「昔はあの二匹も仲良かったのになあ……」
フシギバナは苦笑いを浮かべ、少し悲しそうに呟いた。
「それで、一匹になった後はどうなったのだ?」
「うん、そんな僕をオーキドの爺ちゃんが見兼ねて、仕事も忙しくて自分も中々構ってあげられないからって、僕はリーフちゃんに預けられることになったんだ」
「リーフちゃん?」
「グリーン君と同じ、レッド君の幼なじみだよ。マサラに住んでた女の子なんだ。楽しかったなあ。僕のことたくさん可愛がってくれたし」


「では、なぜ今はそのリーフとやらの下に居ないのだ?捨てられたわけではあるまい」
「うん……2年くらい前のある日、リーフちゃんがどこか遠い国に行かなくちゃならなくなったんだ。事情で僕は一緒に連れていく事はできないらしくて、預かり手を探しててね。チャンピオンになら、リーフちゃんも安心して託すことができるって事で、レッド君に預けられたんだ。 最初はどうなることかと思ってたけど今は結構レッド君のところも気に入ってるよ。時々、怖いけど」
「なる程な」
出身が同じ他の二匹に比べ臆病な性格は、リーフという人間に過保護に育てられたせいなのだろう。
温室育ちというやつか。

迷路の終わりらしき降り梯子を見つけ、俺達はほっとしながら歩み寄っていく。
「――だろ。どうなって――」
下の階より人間らしき声が聞こえてくる。
しっ、とレッドが人差し指を縦にして唇につけ、俺達を止める。ぴたりと歩を止め、俺達はそれに従った。
「信じられねえ……。天罰か……そりゃ団員として悪事ばかりしてきたが……」
今度はしっかりと人間の声が聞こえた。
俺達は梯子が通された穴に忍び寄り、そっと下を覗き込む。
「悪い夢だよ……な。誰か、誰でもいい、助けてくれえ……」
しかし下に人間の姿はどこにもなく、代わりに一匹の黒い子犬のようなポケモンが水溜まりを覗き込んで震えていた。
声を発するスピーカーらしき物も見当たらない。
「なんでポケモンになっちまってるんだよオォォッ!」
――何だって……?
ぱらり、と不意に穴の端が少し欠け落ち、地で破片が砕けて音を立ててしまう。
「だ、誰だ!」
怯えるように人間の言葉で叫び、黒い子犬は吊り上がった目でこちらを睨み上げた。


見つかったか。
舌打ちし、俺は穴を飛び降りる。ミミロップ達も続いて降り立ってきた。
俺達の姿を見ると、黒い犬は更に恐怖に顔を歪め、声にならない声を上げながら後退りを始める。
「お前達は……く、来るんじゃねえ化け物! 俺のそばに近寄るなああーッ!」
「落ち着け。通じるか?俺達は他の凶暴化した奴らとは違う」
黒い犬は耳をぴくりとさせ、動きを止めた。
「……人間の言葉じゃねえ。なのに何を言っているか理解できる……」
人の言葉を話すポケモン――厳しい訓練により人間の言葉を身につけた者もいると噂に聞いたことはある。
だが、この黒い犬は自分が元々はポケモンではないかのような言動をしている。
異様な光景ではあるが、前にもこのような者を見た覚えがあった。確か何といったか――。
「よっと」
軽い掛け声と共に、すたりと軽快に降り立つ音が響く。ようやくレッドが降りてきたようだ。
「うん、僕達は君に危害を加える気はない」
なだめるようにレッドは言った。
「人間だ!助かった!」
黒い犬は俺達を押し退け、飛び付くようにレッドに寄っていく。
「おい、アンタ!信じてくれ、俺は人間なんだ!」
「ああ、信じるよ。前にも機械のせいで同じような状態になった人を一度見たことがあるから。マサキさんっていうんだけど」
そうだ、マサキだ。ということはレッドも奴の家に行ったことがあるのだろうか。
マサキは遺伝子配合装置とやらでポケモンと融合したと言っていた。
その装置を開発したのはロケット団――グレン島で行われていた遺伝子の研究、生み出された恐ろしいポケモン――
俺の頭の中で様々なものが結び付いていき、一つの形をなそうとしていた。
全ての元凶はロケット団。奴らとの因縁は未だ深く牙を食い込ませ、毒を流し続けていた。


「機械で――ってことはまさかあの野郎、俺を……!」
黒い犬は何か思い当たったような顔をし、唸り声混じりに呟いた。
「どうかしたかい?」
訝しげにレッドは尋ねる。
「いや、何でもねえよ。それよりもアンタらは何者なんだ?こんな危険な洞窟に来るなんてよ」
黒い犬は表情を取り繕い、誤魔化すようにして聞き返した。
「調査でね。ちゃんと許可も得ている。その質問は、君にも答えてもらいたいところだよ。もう大分落ち着いたみたいだし、こんな危険な洞窟にいるまっとうな理由をね。君がそうなる前の前後に何があったのかも聞かせてもらいたいな」
レッドの表情は穏やかだが、鍔下の目は射ぬくように黒い犬を見つめている。
焦りの色が一瞬、黒い犬の顔に浮かんだ気がした。

「噂の洞窟がどんなものか気になってな。肝を試すつもりで入り口辺りまで来てみたんだ。そしたら突然背後から何者かに襲われ、俺は気を失った」
暫しの間の後、黒い犬は答えた。
「何者か?」
「そうだ。それはポケモンだったかもしれねえし、人間かもしれねえ」
黒い犬は探るような目をレッドに向け話す。
「ふうん……目覚めた時の状況は?」
「気付いたら俺はおかしなガラスケースに入れられて、ヤバそうな奴らに囲まれててな。ケースが開けられた隙をついて命からがら逃げ出して来たらこのザマだ。ああ、俺を囲んでた奴らも人間かポケモンのどっちだったか思い出せねえなあ。何せ必死だったからな。そういやアンタ、どっかで見た顔だな。有名人かい?」
「一応、リーグのチャンピオンをね」
「そうか、アンタが……。あー、思い出した。俺が襲われたのはポケモンだったぜ。俺をこんな目にあわせたのもあいつに違いない。白くてでかい奴だった。あんな危険な奴を野放しにしてちゃマズいよなあ。チャンピオンくらいの腕前があれば退治できるかもしれねえが」
急に態度を一変させ、黒い犬は話しだす。勝ち誇って笑んでいるようにそれは見えた。


「そのつもりさ。じゃあその場所まで案内してくれないか。君を元に戻すには機械が必要だろうし、僕達といるほうが一人よりまだ安全だろうしね。それと、君の名前は?」
「ああ、いいぜ。名前は……あー、このポケモンは何ていうんだ?」
黒い犬は右前足を上げ、骨製の輪が巻かれたような足首をぶらぶらさせる。
「黒い毛並みと、髑髏の飾りを額にくっつけている犬のような見た目からして、デルビルってポケモンだと思うけど」
「じゃ、とりあえずその名で呼んでくれりゃいいぜ」
「何か名前を言えない理由でも?」
「思い出せねえだけさ。仕方ねえだろ?ま、しっかり護衛を頼んだぜ、チャンピオンさんよ。俺みたいな民間人が巻き込まれてんだからな」
嫌味ったらしく口の片端を吊り上げ、デルビルはレッドの脛辺りをぽんと叩いた。
――随分と都合の良い記憶喪失だ。
その横柄さと、時折垣間見せる怪しい素振りに、苛立ちと不信感が募っていく。
「わかってるよ。じゃあ早速で悪いけど先導していってもらえないかな。リザードン、横について護衛してやってくれ」
「おう。こっちだ」
リザードンを連れてデルビルは奥へ歩んでいく。
これでいいのか、と俺はレッドを見上げた。と、丁度レッドと目が合った。
小さくレッドは笑う。
「君は勘が良さそうだ。あいつの行動を見張ってくれないかな。不審な動きを見せたら教えてほしいんだけど」
しゃがんでレッドが囁く。俺は無言で頷いた。

「何をもたもたやってんだ。早くしてくれねえか」
苛立たしげにデルビルがこちらを振り替えり、急き立てる。
「待たせてすまない、すぐに行くよ。ちょっと靴紐が緩んでね。しっかり縛り直したから大丈夫さ。しっかりとね」


吹き出された紅蓮の炎が意志を持ったように渦を巻き、レアコイルを呑み込む。
銀色をした三つの球体で構成された無機質な体は、不快な電子音の断末魔を上げて三角隊形を崩し、遠心力で散り散りに吹き飛ばされていった。
「よくやった、リザードン。ピカチュウ君もナイスアシストだったよ」
凶暴化したポケモン達の数度の襲撃をレッドと協力して退けながら、俺達は進み続けた。
俺はデルビルのやや後ろの位置につき常に監視も怠らなかったが、まだ不審な動きは見せない。

「さっきからジロジロ睨みやがって。何のつもりだ、このネズ公」
視線に気付いたのか俺の方に振り向き、デルビルは声を荒げる。
何気なく装い見張っていたつもりだが。こういう輩は変に視線に敏感で面倒だ。
「偶然だ。睨んだつもりもない。お前の姿など拝んだところで何の得もないだろう」
興味がないように振る舞い、俺は言い放った。
「いっぱしの生意気な口聞きやがる。畜生のくせによ」
「我等とて心はあるのだ。お前が今までどのような態度でポケモンに接してきたか知らぬが、少しは思い知ったか」
ぐ、と言葉を呑み込み、ばつが悪そうにデルビルは顔を背けた。
「ケッ、こんな姿もすぐにおさらばだ。てめえらの言葉がわかることも無くなる。――そろそろ目的地だぜ」

洞窟の先に、場に不釣り合いな機械と円柱状の大きなカプセルの群れが並んでいる。
機械は様々な色のランプをチカチカと忙しなく輝かせ、透明なカプセルには不気味な薄緑の液体が満たされていた。


次に相まみえた時、奴は再び問うと言っていた。服従か死か――無論、どちらも選ぶつもりはない。
強大な敵はすぐそこに潜んでいることだろう。今まで以上に気を引き締め俺は歩んでいく。
「それ以上大事な研究機材に近づくんじゃあない」
自分以外の全てを見下しているような、高圧的な声が空間に反響する。それはデルビルとはまた違う人間の声だった。
「誰だ!」
レッドが声を上げ、辺りを見回す。と、音も無く一瞬の内に、俺達の前に人影が現われた。
「騒がしかったのはお前たちの仕業だな。どうやってここを嗅ぎつけたのやら」
人間の言葉を話し、人型をしてはいるが、人間と姿は大きく異なっていた。
狐に似た大きな頭部を持ち、それを支える身体は不釣り合いにか細い。ユンゲラーの進化形、フーディンだ。
「この声、間違いねえな!あいつは俺の仲間だ」
そう叫び、デルビルがフーディンに駆け寄っていく。
「お前も奴のせいでポケモンにされちまったのか。安心しろ。こいつらにあの化け物は始末させ、すぐに元に戻れるぜ」
ふん、とフーディンは鼻を鳴らす。
「元に戻る?何を馬鹿な。折角、授けて頂いた素晴らしい力を手放すものかよ」
「お前、何を言ってんだ……?」
困惑するデルビルに構わず、フーディンは両手に銀色のスプーンを構え、鋭い目で俺達を見回す。
そして、俺に目を止めると「ほう」と呟き、スプーンを下ろした。
「これはこれは。大事な客人方だったか。あの御方の予知で、本物のお前達が近いうちに来るとは聞いていた」
フーディンは眉間に皺を寄せ、念じる。
「――ミュウツー様、お目覚めください。件のお客様がお見えです」
脳内に直接フーディンの声が響き渡った。奥のカプセルの一つが、大量の蒸気を上げながらゆっくりと開いていく。
俺の喉がごくりと鳴った。


「あの二人、仲間割れしているのか……?さて、一体何が起きてるんだ」
戸惑いながらもレッドは油断なく身構える。

開ききったカプセルから、大きな異形の人影がゆっくりと一歩を踏み出した。
立ちこめていた蒸気が強風が吹き抜けたかのように掻き消え、影はその正体を晒す。
「待っていた。お前達との再開を」
感情の読めない声で言い、ミュウツーは浮遊したまま宙をゆるやかに滑るようにしてこちらへと向かってくる。

俺は冷静に構えるように努めた。しかし、手のひらや額にじわりと冷たい汗が滲むのを感じる。びりびりと空気が震えてる気さえする。
奴に突き付けてやる答えは簡単だ。断る、と一言いってやればいい。だが、その後にあの強大な超能力に立ち向かい、打ち勝たなければならないのだ。例えレッドがついていようとも簡単ではないだろう。
あの元人間の二匹もどうでるかわからない。

「白い皮膚、長い尾――目撃情報と一致するな。確かに今まで見たこともないような奴だ。見た感じエスパータイプのポケモンだとは思うけど……すごく強いな、きっと」
いつになく緊迫した調子でレッドが話す。

俺達の数メートル手前でふわりと姿勢をかえ、ミュウツーは地に降り立つ。そしてゆっくりと口を開いた。
「再び問おう。私と共に来い、お前達。力ある者達の世界を創り上げるために」
その声は、絶対的かつ冷酷に洞窟に轟いた。そこに拒否する権利など既に微塵も存在してはいなかった。
だが、決して屈伏するわけにはいかない。喉の底から声を必死に引っ張り上げた。
「断る!俺の答えは変わりはしない!お前の凶行は必ず食い止める!」

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