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第23章_1

突然、膝の力が抜け、俺は崩れ落ちるように倒れこんでしまう。
急激に体の力が吸い取られるかのように抜けていく。
必死に身を起こそうとするが――駄目だ、意識もはっきりしなくなってきた。逃れられない。
床が影に溶け闇が口を開ける。徐々に体が床に、闇に飲み込まれていく。

暗い。悲しみ、怒り、憎しみ――嫌な感情が渦巻く黒い海を俺は沈んでいっている。深い、どこまで続くのだろうか。

「起――さい」
頭に声が響く。

「起きなさい」


「――ッ!?」
頭に響く声により目覚め、俺は上半身を起こして辺りを見回す。
周りには、不気味に揺らぐ木が生い茂り、地には根のようなものが蠢いている。
すべてが色を奪い取られたかのような灰色の世界。
……少なくともビルの中では無さそうだ。

「今日は来客の多いこと。貴方で一人と二匹目」
後ろから不意に声をかけられ、俺は身構え振り替える。
この声は……。
そこにいたのは、この灰色の世界にはふさわしくない、色鮮やかな不思議な生き物だった。
頭部は三日月を模した冠を被っているようで、煌びやかな光のベールを羽織った体は、丸みを帯びた船のような形をしている。
まるで三日月の化身のようなその生き物は、灰色の茨の檻籠に捕らえられていた。
「このお二方は貴方のお知り合い?」
籠の傍らには、ニャルマーと、人間……あれは確かサカキ――が倒れている。
やはりそうだ。この声は先程、頭に響いた声と同じ。

「ああ、そうだ。……ここは何だ?そしてお前は?」
「ここは悪意の体内。……そして私はその悪意の半身である善意」


悪意の体内…
―――そうか俺は闇に飲まれて…

「つまり…ここはダークライの中ということだな?」
コクリ、とその生き物が小さくうなずく。
「そうです、私の名はクレセリア。ダークライの半身であり、相反する存在。…しかし神が力を失ったために均衡が崩れ、すでに私に力は残されていません…」
「―――ここから出る方法は?」
「・・・・・」

クレセリアはうなだれ、一瞬の沈黙が流れる―――
「残念ながらこの空間に出口は…」
「―――ッ!いったいどうなってんだい?」
フラフラとおぼつかない足取りでニャルマーが起き上がった。
「大丈夫か?」
「あぁ、なんとかね―――!?」
顔を上げたニャルマーの目が…まるで目の前で起きていることが信じられないとでも言うように、大きく見開かれた。

「ア、アンタ…その尻尾」
俺の尻尾だと?


身をよじり、尻尾を顔の前にもっていく。
「―――クッ!?」
いったいどうなっている?
俺の尻尾の半分はすでに輝きを失い、この空間と同じ灰色に染まっていた。
そしてなお、ジリジリと灰色の部分が増え続けている。

「すでにあなたたちの体は悪に蝕まれ、この空間に力を奪われています…このままではいずれこの空間と同じように虚無に飲み込まれてしまうでしょう。」
よく見ればすでにニャルマーの体の一部も色を奪われていた。
そしてサカキも―――



小ネタ

~クチバシティ~
「助かったでござる!」
「元気でな~」
ザングースとスターミーはクチバに到着した。ホエルオーとはここでお別れである。
「しばらくカントーにいるから、海を渡りたいときは呼んでくれ」
ホエルオーは海に潜っていった。
「良い奴だったでござるな!」
「カントーはシンオウに比べて海が多いですから、あいつには多分すぐ会えますよ」
「出発でござる!」
ザングースとスターミーは歩き始めた。(スターミーは浮遊して陸に上がった)
「そういえばカントーにはザングースさんの主君がいるんですよね?」
海上ではヒマでしょうがなかったので、ザングースはピカチュウがシンオウを制覇する話を一通りしていた。
だからスターミーもピカチュウがカントーにいることは知っている。
「確かにこの地には主君がいるでござる。しかし、もし会ったとしても同行はしないでござる」
「何でですか?自分のことなら気にしなくていいですよ?」
ちなみに「自分」とはスターミーの一人称である。
「拙者は自分を磨くためにカントーに来たのだ」
「まあ確かにそうですけど・・・」
「それに、人数が増えすぎるとピカチュウ殿が困るでござる。旅は4人くらいが動きの統制がとれてちょうどいい」
歩きながら話をしていると大きな洞穴を見つけた。
「これは何でござるか?」
「ディグダの穴ですよ」
「中に強い敵が居そうでござる!出発!」
スターミーも後に続いた。二匹は、奥深くまで進んでいった。
「何も居ないでござるな・・・」
「いつもはディグダがわんさかいるんですが・・・!?」
スターミーは異変に気付いた。ここは地下なのに、光が差し込んでいる場所がある。


「ザングースさん、あそこ行きましょう!」
二匹が近づいて見ると頭上に大きな穴が開いていた。空が見える。
「一体何があったでござるか・・・?」
「ここはシルフカンパニーの近くです。なんかビルにも穴が開いてますね・・・」
「あ、あの・・・」
近くにいたディグダが声をかけた。
二匹が振り返る。
「ここに大きいバンギラスが落ちてきて・・・」
ディグダはここで何があったかを二匹に説明した。
「マジかよ・・・バンギラスといったらジョウト一の実力者だぞ」
「何、それは本当でござるか!?」
「本当です・・・。僕の仲間は全員、ビルの中に入っていきました・・・僕は行かなかったんです。そしたら臆病者って言われて・・・」
ディグダは少し落ち込んでいる。
ザングースは考え込む。そして言葉を発した。
「よし。バンギラスを追うでござる」


「正気か!?」
「無理だって!」
スターミー、ディグダは必死で止める。
「ジョウト一の強者と戦ってみたいでござるよ」
「危険だって。殺されますよ?」
「僕はすごい殺気を感じたよ・・・」
「スターミー殿。拙者がカントーに来たのは、ストライク殿やバンギラス殿のような強者と戦うためでござるよ」
「でもビルん中入らなくていいんですか?ピカチュウさんが居そうですけど・・・」
「関係ないでござる。スターミー殿、ディグダ殿!行くでござるよ!」
「ええ僕も!?」
「君も仲間にバカにされてくやしいだろ。自分やザングースさんと一緒に修行して、見返してやろうぜ」
スターミーはディグダを引っ張った。
「よし!ザングースさん!行きますよ!」
「合点承知!」
「これからどうなるんだろ・・・僕・・・」
こうして修行の旅にまた一人仲間が加わった。
彼らはバンギラスを探し出し、打ち破ることができるだろうか?



「ククク…残るは脆弱な神の手駒のみ…」
ドカリッと、ダークライが椅子に体を預ける。
「もう誰も俺を止めることは出来ない…」

(―――どうだにゃー…?)
部屋の前まで来たニャース一向―――、慎重にメタングが中を覗き込む。
(オカシイ、中ニピカチュウ達ノ姿ハナイ)
(も、もしかしてもう…)
三匹の間に流れる重い空気―――

―――おい、パルキア。
ええ、どうやらピカチュウ達はダークライに飲まれてしまったようですね―――
―――どうする?今の我らでは勝負にならん。
いえ、これは逆にチャンス―――まだピカチュウが生きていればの話ですが―――
―――どういうことだ?


―――危険な賭けだ、不安要素が多すぎる。我らが言うのもなんだが…まさに神頼み・・・
これしか手は無いでしょう、グズグズしていられません―――

「ふぎゃッ!?」「グオォッ!?」「――ッ!?」

「…準備はいいですか?」
「無論だ…しかし、予想以上に力が入らんな」
ニャース―――もといディアルガがグッと拳を握る。
「仕方ないでしょう、無理すれば器が先に参ってしまいますよ」
「フンッ、目的さえ果たせれば多少の犠牲は仕方あるまい」
メタング―――ギラティナがボキボキと腕を鳴らした。
「……行きますよ―――」


部屋に勢いよく飛び込むニャース達。
「そこまでだ! ……ニャー」
ニャースは爪を伸ばし、びしりとダークライを指差す。
だが、やる気が無さそうに付け足した語尾のせいで、どうにも決まらない。
――何も口調まで真似る必要は無いだろう……。
――何事も念には念を、です。

「死の律をビビッ――死ノ律ヲ乱ス愚者ニ裁キヲ」
メタングが発する、ノイズ混じりの電子音で紡がれたその言葉に、神の威厳や凄味は無い。
――馬鹿馬鹿しい。
――お似合いですね、ギラティナ。
二人を見るパラスの顔は笑いを堪えているように見える。

ダークライは椅子に座ったまま、まるで地べたを這う虫でも見るような目で、じりじり距離を詰めてくるニャース達を見やる。
「まだこんな虫けら共が潜んでいたか」
なめきった様子で右手だけをニャース達に向け、ダークライは波動を放とうとする。パラスは不敵な笑みを浮かべた。
今までの緩慢な動きが嘘のように、ニャース達は素早く散開する。
油断しきっていたダークライは、がたり、と椅子を揺らし、ニャース達の動きを目で追った。

――今です。
――この状態で止められる時は一瞬。抜かるな。

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