第21章 - 5

「リア……(ふぅむ……)」
ロゼリアが繰り出された三匹を見て、何やら難しい顔をする。
「ぼわーん?(どしたの~?)」
「リィ、リィリア(いえ、いやにバランスのとれた三匹だと思いまして)」
三匹のタイプは炎、草、水――弱点をうまく補いあえる組み合わせ。
ロゼリアは嫌な予感がしていた。

「ピイィーー!(へんっ、それがどうした!)」
そんな時、ムクホークが飛び立つ。
「リィ、リァーリリィ!?リァリァ!(ちょっと、ムクホークさん!?待ってください!)」
ロゼリアが止めるのも聞かず、翼を広げ敵に突進していくムクホーク。
ブレイブバード――そんな勇気ある鳥の頭の中は、
「(ミミロップたんにアピールするチャーンス)」
……下心で一杯だった。

「来るか!ウインディ!」
グリーンに指示され飛び出すウインディ。
「グルルル――ガウッ!」
「ピッ!?(ひっ!?)」
ウインディに威嚇され、ムクホークは少し怯み突進の速度が落ちてしまう。
「ウインディ、さがれ。カメックス!甲羅で攻撃を止めろ!」
ウインディが後ろに飛び退き、入れ替わりにカメックスが前に出る。
カメックスは頭と手足を甲羅に引っ込め、突撃してくるムクホークに正面から挑む。
「ピビィッ!」
弾き飛ばされるムクホーク。
頑丈なカメックスの甲羅は弱まったブレイブバードなどいとも簡単に防ぎきった。


「ナッシー、眠り粉!」
グリーンの素早い指示でナッシーは、弾き飛ばされ宙でまだ体勢を直せていないムクホークに、容赦無く眠り粉を浴びせる。
「ピュルィ……(ふにゃ……)」
昏倒し床にどさりと落下するムクホーク。

「リィリァー……(見事な連携ですねー……)」
悪い予感が的中し、ロゼリアは嘆くように右手で自分の額を押さえる。
「リィリィ……リリア――リィ。リィリア(困りました……予想以上にあの人間とポケモン――やります。ばらばらに動いてはあの通り)」
「フリャー……(しっかりして下さいよもう……)」
フライゴンが眠っているムクホークの下に電光石火の速度で急いで近づき、ムクホークを引きずりながらとんぼ返りの要領で戻ってくる。

「リィ――(こちらも――)」
「こっちもうまくチームプレーしないと、勝てそうにないね」
「リ!?(え!?)」
自分達の話が伝わっているかのようなレッドの言葉に、ロゼリアは驚く。
「君達、今だけ僕の指示に従ってくれないか?ばらばらに戦ったらグリーンには――きっと勝てない」
「……リィリリ、リィリ(……その通りです、今はこの人に従いましょう)」
「……ミィ(……わかった)」
「ぼわん(いいよ~)」
レッドはにこりと微笑む。
「ありがとう、君達。やってくれるんだね。よし、まずは――」

「(まさか……ね。ポケモンの言葉が人間に通じるわけ無いですよね)」


「とりあえずそこの寝てる子を起こしてくれないか?えーと、そこの――薔薇君。君、そう言う技が使えるね?」

「リィ(ええ)」
レッドに指示されロゼリアはムクホークの下に駆け寄って行く。

「リア……(それでは……)」
ロゼリアが両手の花を掲げると、辺りに心地の良い香りが広がった。
癒しの香り――アロマセラピーの効果を受けムクホークが深い眠りから目を覚ます。
「ピッ!?(はっ!?)」
飛び起き、きょろきょろとムクホークは辺りを見回す。
呆れ顔で自分を見つめるミミロップ達に気付き、申し訳なさそうにムクホークは自分の頭を掻いた。

「よし、それじゃあ作戦を話すよ――」


「何をこそこそやってんだ?へへんっ、いいぜレッド。何を企んでるか知らないが先に仕掛けさせてやるよ」
「じゃあ、行くよ!リザードン、火炎放射だ!」
「無駄だッ!カメックス!ハイドロポンプ!」
リザードンが吹く火炎を、カメックスが甲羅の砲台から水流を撃ちだし相殺する。
水が激しい炎で蒸発し、水蒸気が辺りに深い霧のように立ちこめる。
「ふんっ、この程度かよ?」
霧の向こうでグリーンが勝ち誇ったように言う。

「トンボ君、穴を掘るだ!」
「フリャッ」
レッドの指示でフライゴンは床に大きな穴を開け、地響きを立てながら掘り進んで行く。
「ん、何だ?――地面タイプの技か!防ぐぞ、ナッシー!」
――草タイプに地面タイプの技は効果がいまひとつ。あのポケモンの攻撃を耐えた後、カウンターに眠り粉を浴びせてやる。
地響きに気付きグリーンがナッシーに指示を出す。
立ちこめていた霧が晴れた――地面が盛り上がり、そこからフライゴンが飛び出そうとする。
「来たぞ、ナッシー!」
ナッシーが盛り上がった地面の前に立ち塞がる。

「ピイィィィッ!」
「な、何ぃっ!?」
しかし、盛り上がった地面に穴を開け飛び出してきたのは、フライゴンでは無くムクホークだ。
穴から勢い良く飛び出したムクホークは、急降下しナッシーの体を切り裂く。
「ピュイッ!(汚名返上ぉッ!)」


「ずっりぃ、こんなの有りかよッ!?」
「ナッシィー……」
飛行タイプの技――燕返しに耐えきれず、倒れるナッシー。

レッドの作戦。
霧で辺りが見えにくい内にムクホークを、穴を掘るフライゴンに続いて進ませていたのだ。
地面タイプの技を、草タイプのナッシーが防ぎに来るのをレッドは読んでいた。
相殺されるのが目に見えている火炎放射をリザードンに命じたのも、水蒸気を発生させて目眩ましにするためだ。

「ちくしょうっ!ウインディ、あの鳥をやっちまえ!」
「ガウッ!――ギャインッ!?」
ウインディがムクホークに飛び掛かる。だが、開いた穴から大きな影が飛び出し、ウインディを跳ねとばした。

「フリャッ!(まだ僕がいるんですッ!)」
ウインディを跳ねとばしたのは穴に潜んでいたフライゴンだ。

「……大成功」
レッドはにやりと微笑んだ。


「おーい、ドーン!」
――いつものビッパの呼び声。……少し野太い?
「ちっ、うるせえな。何でえ?」
――見に行った先にはビッパの姿は無く、そこにはビッパをより間抜けにしたような顔の、ずんぐりむっくりしたポケモンがいた。
「……何だてめぇ」
「元ビッパのビーダルだお。進化して色々パワーアップしたから見てほしいおっ。まずは影分身!」
――みるみるビーダルの姿が増えていく。不快なニヤけ面を引っ提げて大勢でこちらに迫って……。
「や、やめなせえ!その暑苦しい顔をアップにするのは!」
「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ。」――

「ぎゃーーーーーーッ!」
いつもの部屋で昼寝をしていたドンカラスが大声を上げ飛び起きる。
叫び声を聞き付けたエンペルトがドタドタペタペタと足音を立てながら、大急ぎでドンの居る部屋の様子を見に来た。
「ど、どうしたポチャ!?ドン!」
「はあっ、はあっ……ゆ、夢ですかい……」
余程嫌な夢を見ていたのかドンカラスは冷や汗でびっしょりだ。顔も少し青ざめている。

「おーい、ドーン!」


ビッパの呼び声。ドンカラスはビクリと体を震わせた。
「お、おい、エンペルト。代わりに見てきて下せぇ。」
「どうしたんだ?断るよ。ビッパの相手は僕の管轄外だ。それに他の仕事もあるから」
「ちっ、冷てえ野郎だ。あっしが行きゃいいんでしょ、行きゃ」
文句をたれながらドンカラスは部屋を出ていく。少し何かに怯えた様子で。

エントランスにたどり着いたドンカラス。手摺りに飛び乗り一階を見下ろすと――
「あっ、あれがドンだお!」
下にいたのはビッパをさらに間抜けにしたような顔の、ずんぐりむっくりした体系のポケモンだ。
「な、な、ビーダル!?まさ、正、ゆ、ゆめ――」
そのポケモン――ビーダルを見た途端、がたがた震えだし、泡を吹いてドンカラスは倒れる。

ビーダルの後ろからひょっこりビッパが姿を現した。
「今日連れてきたのはビーダル君――ってドン、どうしたんだお!?」

次の日からビッパにはかわらずの石が強制的に持たされる事になったという。

続かない。

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