第21章 - 3

ワープパネルから現れたのは、ピカチュウ一行だった。
(アイツは地下通路であったツンツン頭……。様子がおかしいな。まさか!?)
そして、ピカチュウにある考えが浮かぶ。
「ミミロップ、お前はここに残れ!」
「ちょっとどういう事!?」
ミミロップが反論する。
「お前は以前、ダークライに取り付かれている!もう同じ目には遭わせられない!」
ピカチュウは真剣に説明する。
「……分かったわ。でも、無事に帰ってきて!」
「よし。皆もミミロップと一緒に居てくれ!そっちが片づき次第こっちに来るんだ!ニャルマーは俺と一緒に来い!」
俺はそう指示すると、ツンツン頭の横を通り抜け、奥のワープパネルに乗る。
ニャルマーが後を付いてくる。
ミミロップ達は、レッドの出したポケモン、リザードンと共に、ツンツン頭のフーディンと対峙した……


「……君達は」
レッドがミミロップ達に気付き振り向いた。
グリーンもそれに気付き、ミミロップ達の方に目をやる。
「何だそいつら。そいつらもお前の道具かよ?レッド」
(やっぱり人間なんてこんな奴ばっかり)
グリーンの言葉にミミロップ達は怒りの表情を浮かべ、グリーンに向かって身構える。
レッドはキッとグリーンを睨んだ。
「道具だって……?ポケモンは道具なんかじゃない!大事なパートナーだ!」
(でも、この人は……。――わからない)
ミミロップは迷うようにレッドを見つめる。
にやにやとした笑みを止め、グリーンは眉間に皺を寄せた。

「フン、オーキドのジジイみてーな事言いやがって……」


「いい子ぶりやがって……。レッド、お前はいつもそうだ!」
拳を強く握り、歯を噛み締めグリーンはレッドに憎悪の目を向ける。
「オレはジジイの孫としていつも周りに期待された。それに答えるためにいつも努力してきた!――でも、お前はいつも適当にへらへらしているだけのくせに、勉強でも、スポーツでも簡単にオレを追い越していく……」

「それは違――」
「うるさい!認めてやるよ、レッド。……お前は天才だ。オレがいくら努力しても勝てやしない――」
グリーンは腰に付けてある空っぽのモンスターボールをぎゅっと片手で握りしめる。――そのモンスターボールには汚い字で“ラッタ”と書かれていた。
「でもオレは……このポケモンだけは、お前にも――もう誰にも負けたくねーんだ!そのためならオレは……悪魔にだって協力する!」

「……!」


「フーディン!気合い玉だ!」
グリーンの指示を受け、フーディンが巨大な光球をリザードンに向けて放つ。
「くっ!リザードン、避けろ!」
リザードンは上に飛び立ち、紙一重で光球をかわす。
光球は床に着弾し、轟音を立てて頑丈そうな床に風穴を開ける。

「すげー力だろ?レッド。あの黒い奴から貰った力なんだぜ」
レッドの頬を汗が伝う。
「グリーン!君は正気なのか!?」
「ああ、正気だぜ。オレは奴の――ダークライが持ちかけてきた取引に乗ったんだ。お前を倒すために……誰にも負けないために!」

――「くく……実に容易い人間だった。少し心を弄って、憎しみを引き出してやっただけでころりと従うとは」――


――時を少し遡りディグダの穴の隠れ家。

「暇なのニャー」
そう呟き、退屈そうにゴロゴロと寝転がっているのはニャース。
「……そうだね」
陰鬱そうに返すディグダ。
「何もやることないよ」
ため息混じりにそう嘆いてるのはパラスだ。
「コノママジャ埃ヲ被ッテ錆ビルゾ」
つい最近ダンバルから正式に進化したメタングも暇そうにしている。
少し前にピカチュウの配下となった彼らだが、なったはいいものの何もすることが無く、毎日を退屈に過ごしていた。

「何か面白いことは無いのかニャー――」
不意にディグダの方を振り向き、凝視するニャース。
「な、何?」
「そういえばその体の埋まっているはどうなってるんだニャー?」
「そ、それはちょっと……」
困ったようにディグダは言葉を濁す。その様子を見てニャースはますますディグダの埋まっている部分に興味を持ったようだ。
「気になるのニャー……」
目を輝かせながらニャースはじりじりとディグダに、にじり寄って行く。
「ちょ、何のつもり――!」
ディグダがそう言いかけたとき、突如何かが崩れるような大きな音がディグダの穴に響く。

「な、何なのニャー!?」


「落盤カッ!?」
「と、とりあえず音がした方を見に行こう!」
隠れ家を飛び出し、ニャース達は音がした方に駆けていく。

「ケホッケホッ、すごい砂ぼこりだニャー。ちょっと吸っちゃったニャー」
ニャース達が音の元にたどり着くと、そこは砂ぼこりがもうもうと立ち込め、天井には大きな穴が開いていた。天井の穴からは大きな高いビルが見える。
そして、その穴の下には大きな銅色をした何かが横たわっていた。
「このとげとげした茶色の岩みたいなのは何だろ?」
「確かこの辺りはヤマブキシティだけど……。これが上から落ちてきたせいで穴が開いたのかな」
「でっかいニャー」
ニャースがその岩の様な物をガリガリ引っ掻くと、ぴくりと岩が反応する。
「フギャッ!?岩が動いたのニャー!」

地響きを起こしながら、大きな銅色の岩は立ち上がる。ニャース達が岩だと思っていたのは、頑強そうな岩の鎧に身を包まれた巨大なポケモンだった。
「グギャオオオォン!」
そしてその銅色のポケモンは大きな咆哮を上げた後、鋭く凶悪な隻眼で辺りを見回す。
「落とされたか。おのれ、油断したわ」
銅色のポケモンは天井の穴を見上げながらそう呟いた。
「まずは傷を癒さねばな……また会おうぞ、新たな宿敵よ」
銅色のポケモンはよろよろとトキワ方面に出る出口に歩いていった。ニャース達の事はまったく眼中に無いようだ。


「な、何だったのニャー」
「怖かった……」
「戦闘力測定不能。バ、化ケ物ダ!」
すっかり竦み上がっているニャース達。
「あんなのが落ちてくるなんて都会は地下でも怖い所なのニャー」
「上どうなってんだろ……」

「行ッテミルカ?」
「んー、ここにいても暇だしそれもいいかな」
「ちょっと怖いけど行ってみるのニャー」
「ヨシ、ジャア腕ニ捕マレ。上マデ運ンデヤル」
メタングの腕に捕まるパラスとニャース。
だが、ディグダは浮かない顔を浮かない顔をしてそれを無言で見ている。
「ドウシタ?早ク捕マレ」
「い、いや、僕そういうのはちょっと……」
そう、ディグダはどういうわけか地面から決して離れないのだ。
「?変ナ奴」
「臆病者は置いてくニャー」
「ウム」

こうして彼らはディグダを残し、ヤマブキシティに向かった。
果たして活躍できるのだろうか?


――シンオウ、キッサキ。マニューラのアジトにて。

広間の真ん中に氷柱が二本立てられ、その間にハンモックが吊してある。
マニューラはそこに寝転び昼寝をしていた。
そんな広間にいつものメスのニューラがやってくる。何かマニューラに伝える用事があるようだが、急ぐ様子もなく気だるそうに、寝ているマニューラの方へ歩いていく。
ニューラはだらしない格好で寝ているマニューラを見て深いため息をついた後、ハンモックが吊されている柱の一本を強く蹴った。
支えを蹴られたハンモックはゆさゆさと激しく揺れ、上に寝ていたマニューラを振り落とす。

「ヒャンッ――!?」
文字通り飛び起こされたマニューラは地面にびたんと落下した。
「いたた……てめー、何しやがる!」
「普通に起こしても起きないでしょ?それにあんなだらしない格好で寝るのは止めなさいな。あんたは一応――」
「……それよりオレをわざわざ起こして何の用だ?」
ニューラの小煩い小言を切る様に、マニューラはひょいと起き上がり用件を訪ねる。
「ああ、そうだったわ。ユキノオーから会食のお誘いよ、マニューラ。小難しいことたらたら言っていたけど、要するに一緒にご飯食べてもっと仲良くしましょうって事ね」
「げ、マジかよ」
ユキノオーからの誘いの話を聞き、マニューラはあからさまに嫌な顔をする。
元々ユキノオーとマニューラは敵対関係にあったし、ピカチュウの手により半ば無理矢理、同盟を組まされた後もニューラ達はユキカブリ達を嫌っていた。
機敏に動ける彼らにとって(普段はアジトでぐうたら暮らしているが)、のろまで鈍臭いユキカブリ達は見ていて苛々するらしい。
そして陽気なニューラ達はユキカブリ達の“ノリ”の悪さを何より嫌がるのだ。
マニューラも同じ理由でユキノオーとユキカブリ達を嫌っている。気が乗らないのも無理は無いだろう。
マニューラにとってつまらない会食になるのは目に見えている。


「パス――」
「ダメよ。一応、あいつらとは同盟組んでんだから、こういうのにも参加しないと。鼠にまた何かうるさく言われるのもウザったいわ」
「……確かにそれはウゼーな。」
ふう、と諦めたような息を吐くマニューラ。
「しょーがねえ、行ってくるぜ」
「そう。じゃあ、くれぐれもニューラ族に恥をかかせる真似はしないでね」
「へー、へー」――

「とは言ったものの――」
今だにマニューラはアジト周辺の森をだらだら進んでいた。
ユキノオーと会食なんて面倒臭くてたまらない。どうにかしてすっぽかす方法は無いか――マニューラはそんなことばかり考えていた。
約束の時間は刻々と迫る。そんな時――
「にゅ~ん」
紫色の軟体がマニューラの目の前に現れた。


――ユキノオーの集落。
「ようこそ、マニューラ殿。(……はて?こんなにシンプルな顔つきだったか?)」
「ひゃは~!」
「(ちょっと違う気もするがいつもの笑い方だが、わしの気のせいかの)ささ、こちらへどうぞ」

――ハクタイの洋館。
「……何であっしがてめぇなんかにメシ奢んなきゃなんねえんだ」
「ダチ連れてきた借りがあんだろが?つべこべ言わずもっとメシと酒の追加だ、ヒャハ!」
「ちっ、食い終わったらさっさと帰りやがれよ!糞ネコが」

その日、ユキノオーの集落ではマニューラが突然形を崩して溶けたり、ユキノオーが二匹に増えたり減ったり増えたり減ったり減ったり増えたりで大騒ぎになった。

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