第20章 - 1

「もう夜明けか………」
俺たちはヤマブキに着いた。
明らかに他の町とは様子が違う、ロケット団が平然と街中を歩いている。
「これではうかつに動けませんね」
ロゼリアが疲れた声で言う。一晩走って来たのだから無理もない。
「仕方がない、ムクホークと俺でポケモンたちが連れて行かれた建物を探す」
「なんで俺が………」
ムクホークがあからさまに嫌そうな顔をする。
「アンタ伸びててほとんどフライゴンに運ばれてたじゃないかい。」
「その通りだ、それに俺たちだけなら目立たず動ける。」
俺がムクホークに掴まる。
「空から探せばすぐ見つかるだろう。お前たちはその間に体を休めておけ」
「「「は~い」」」
俺とムクホークが空へ飛び出す。

数分後………

「あそこだな……」
俺とムクホークはこの町でも一際高いビルの正面に来た。
「どうしてわかるんですかい?」
「このあたりでわざわざ入り口に見張りをつけているのはあそこだけだ。皆の所に戻るぞ」
俺たちが戻ろうビルに背を向けたとき……
「何だお前は!普通のポケモンではないな!」
見張りの怒鳴る声が響く。
(まずい、見つかったか?)
ほお袋に電気を溜める。
「ククク…朝から騒々しい、しばらく眠っていろ」
見つかったのは俺たちではなかった。


振り返ると、すでに黒い影が見張りを眠らせていた。
「あ、あいつがダークライ?」
ムクホークにも奴の力が伝わっているようだ。
「そうだ、もう時間がない。急いで皆を呼んでこい」
「わかりやした!」
ムクホークが急いで飛び出す。

(どうやら俺には気づいていないようだな………)
ダークライがビルの中に入っていく。
(………しかし、なぜバンギラスが一緒にいない?自分ひとりで十分ということか…)
ダークライの姿が見えなくなった。騒ぎが起こらないところからすると片っ端から眠らせて進んでいるのか、それとも………
考えを巡らせているうちにミミロップたちが到着した。


「ここね、ポケモンたちがいるのは」
ミミロップが小声でささやく。
「そのはずだ、ムクホークから聞いたと思うが状況が変わった。皆で正面から突っ込むぞ。」
「そんなことしたらすぐ見つかってしまわないかい?」
ニャルマーが俺に問う。
「いや、騒ぎが起こらないところからするとダークライが片っ端から眠らせて進んでいるようだ。今なら最低限の戦闘で済むだろう」
俺はみんなの顔を見回す。
「………わかっていると思うがダークライの力は強大だ。下手すれば命の危険もあるだろう…。それでも俺についてくるか?」
「当たり前じゃない!」
「今までだってずっとそうだったじゃないですか。」
「ムウマージ、ピカチュウしんじてる~」
………聞くまでもなかったな。
「アタシもいまさら引かないよ」
「ぼ、僕だって!」
「俺も(ミミロップたんのいく所なら)何処までも!」

「よし………いくぞ!」
「「「おーーーー!」」」
俺たちはビルの中へと入っていった―――


「本当に誰もいませんね………」
「これならすぐに追いつけそうね」
ビルに入って数分………まったくロケット団の姿は見えない。
「でもわざわざ見張りまでつけているのに中に誰もいないなんておかしくないかい?」
「………………」
………奴が眠らせて進んでいるなら眠りこけたロケット団が倒れていてもおかしくないはずだが………
「もし罠だとしても進むしか………止まれ」
人間の声だ………あの部屋の中からか?

「今の内に逃げましょう!」
「いや………下手に動いて奴らに見つかったら何されるか………」
「駄目よ!さっき上に進んでいったロケット団の目は普通じゃなかったわ………まるで何かに操られてるみたいに………」
「しかし、あのツンツン頭の子がまだ上から戻って来ていないじゃないか!」
「それは………」

「………!ピカチュウさん!今の話が本当なら!」
「あぁ、シオンタワーの時と同じだ。」
ツンツン頭とはカメールを持っていたあいつだろうか………無事だといいが。
「先を急ぐぞ!」


その頃ビル上層………
「ククク…所詮人間などこんなものか」
「く、くそ………」
ツンツン頭がボロボロになったカメックスをボールに戻す。
「お前もこいつらと同じように俺の手駒となれ!」
ツンツン頭をどす黒い霧がつつむ………
「うっ………」
「ククク、これで邪魔者はいなくなった………」

………感じるぞ………我に匹敵するほどの強者の気配だ………

「………まだ、残っていたか。お前の出番だ」

グギャオオオォォン………


戻ってピカチュウたち………

「そろそろ追いついてもいい頃だ。ここからは静かに行くぞ」
「さっきから気になってたんだけど………このパネルって踏んだらどうなるのかしら?」
「前と同じだ、どうせまたどこかに飛ばされ………」
「きゃあ!」
またか。
「どうします?」
「仕方がない、俺たちも行くぞ」

俺たちは広めの部屋に飛ばされた。
「大丈夫か?」
「う、うん………」
「どうやらパネルからパネルへ一瞬で移動できるみたいですね」
「時間がない、急いで戻るぞ」
俺が飛ばされてきたパネルに乗ろうとしたとき。
「グギャオオオォォン!」
轟音とともに砂嵐が吹き荒れる。
「何!?」
「………くるぞ!」


「ぺっぺっ、くちにすながはいっちゃったよ~!」
「痛たた!何なんですか、これ!?」
吹き荒れる砂嵐が俺達を飲み込み、傷をつけていく。
奴が――バンギラスが砂塵の向こうから、大地を踏みならしながらゆっくりと姿を現わした。
そして俺達を品定めするように眺めた後、ふん、と鼻を鳴らす。
「……塵芥共ばかりか。」
バンギラスはつまらなそうに、そう呟いた。

「え?何?どういう意味?」
よくわからなかったのか、ミミロップがロゼリアに、バンギラスの言葉の意味を尋ねる。
「えーと、『ゴミ』って意味ですかね」
「何ですってー!」
自分がゴミ呼ばわりされたことを理解したミミロップは怒り、ロゼリアの胸ぐらを掴み上げた。
「い、言ったのは僕じゃないですよ~!」
「あ、そうだった」
ぽろりとロゼリアを離すミミロップ。
こんな時に緊張感の無い奴らだ。

「あの片方潰れた眼、銅のような体色、間違いない。あいつは………」
ニャルマーが足を震わせながら、バンギラスを見ている。何だ?


「そこの鼠」
バンギラスが俺を睨む。
「……何だ」
負けじと俺もバンギラスを睨み返す。
「あの者から話は聞いている。貴様を追い詰めれば、神のごとき力を持った強者が姿を現わすと。弱者をいたぶるのは我の本意では無いが――」
砂嵐が一層強く吹き荒れ始める。
「強者との戦いは我が望みなり! 貴様には犠牲となってもらおう!」
バンギラスが咆哮を上げる。
奴の狙いは、俺が窮地に追い込まれた時に現われるであろう、ディアルガとパルキアのようだ。
戦いは避けられそうもない。――どうするか。

「……お前達。ここは俺に任せて先に行け」
幸か不幸かバンギラスの狙いは俺だけだ。
後にダークライとの戦いも控えている。ここでミミロップ達を疲弊させるわけにはいかない。
それに――“神の加護”達が俺にはついている。それにも期待させてもらうとしよう。

「でも――」
「俺は大丈夫だ、早く行けッ!」
「は、はいッ!」


砂嵐が容赦なく俺に吹き付ける。
…長引けば俺に勝機はない。

「いくぞッ!」
皆に背を向けバンギラスに突っ込む。
「一人で挑もうというのか…身の程知らずが」
腕を振り上げ、投げるようにバンギラスが黒い波動を放つ。
「くッ…」
体を捻り、ギリギリのところでかわす。轟音が耳をつんざく。
もし当たればただではすまないな…
奴に近づくほど砂嵐が強くなる。
「身に傷が付こうと尚も我に向かってくるか…」
「悪いが、お前の望み通りになるつもりはない!」
鋼の尻尾を奴に叩きつける。
ガキッ!!

鈍い金属音と共に攻撃した俺の方が吹き飛ぶ。尻尾が痺れる。
「愚かな…その程度の力では我に傷ひとつ付けられまい。」
…確かに俺が攻撃したはずの場所には傷ひとつない。
生半可な攻撃は奴に効かないか…


すでに俺の体は砂嵐で傷だらけだ。少しでも砂嵐から逃れるために一度距離をとる。
「これだけ力の差を見せてもまだ諦めぬか。」
この砂嵐では電撃も奴に届かないだろう…

…あの技に賭けるしかないな。
金の腕輪に力を込め、緑の光弾を奴の足元に放つ。
「ほぅ、何をする気だ?」
緑の光弾が地面にぶつかる。
…うまくいってくれ。
一気にツルが飛び出し、バンギラスの足に絡みつく。

「この程度では無駄だと…」
言葉の途中で奴が口を閉じる、すでに俺は凄まじい電気を帯びて奴に向かって走り出していた。
「これでは動けんな…なかなかの攻撃だ…面白い!」
奴が攻撃を捨て完全な防御の姿勢にはいる。
「来るがいい!」
「喰らえッ!」
ボルテッ…………

ドクンッ―――

…なんだこの感覚は。
俺の中の何かが…本能とでもいうのだろうか…俺の体を支配する。
……………

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