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第19章_1

タマムシPC横の林の中・・・

「ありがとう、君たちのおかげでアジトを壊滅させることができたよ」
赤帽子がしゃがみこんで俺たちに話しかける。
「リザードの傷が回復したら僕たちは連れて行かれたポケモン達を追いかける。僕達の目的が同じなら、また会うかもね!」
そういって赤帽子はPCへ入っていった―――

「ピカチュウ!私達も連れて行かれたポケモンたちを追いかけましょう!」
ミミロップが俺を急き立てる。
「待て、俺達はまだどこに連れて行かれたかもわかっていないんだ。とりあえず今日休む場所を探すぞ」
「ダメよ!こうしてる間にもあのポケモンたちは何処かに売り飛ばされそうなのよ!」
あれだけたくさんのポケモンたちを運んだんだからこの周辺のポケモンたちに聞けばすぐわかるわ!」
あのひどい有様がよほどショックだったのだろう。ミミロップは一向に引き下がらない。
「だが、俺達は下手にサカキに近づけない。ダークライもどう動いてくるかわからんしな」
「なによ!ピカチュウさっきから変よ?いつもなら『休んでる暇はない』なんていってすぐ出発するじゃない!・・・もしかして『今の俺達じゃ敵わない』とか思ってるの?」
図星だ。
「・・・そうとは言っていない。ただ、いままでのように考えなしにいって勝てるほ・・・」
「・・・もういいわ。」
失望したようにミミロップが歩き出す。
「私は情報を集めにいく。あなたはここでおとなしく待ってなさい」
「僕も行きます」
「ムウマージも~」
ぽつんと俺だけが残された。


「ミミロップさん、いいんですか残してきてしまって?」
ロゼリアが心配そうに聞く。
「大丈夫よ。私はピカチュウを信じてる。きっとすぐいつものピカチュウに戻るわ」
ミミロップはさっきと打って変わって元気そうだ。
「ではなんであんなに強く当たったんです?」
「フフ、それはね・・・」

俺はこれからのことについて考えていた。
ダークライは想像以上に強い・・・へたすればアルセウスの時のように・・・
ふと、あの時の戦いの記憶がよみがえる。
・・・もしやられたら、それで終わりだ。今の俺に皆を守るだけの力があるのか・・・
ふと、金の腕輪が目に入る。あれから皆に気づかれないように訓練してきたが、いまだにうまく使いこなせていない。
・・・そうだ、俺はアルセウスと戦うときでさえ負けると思っていなかった。仲間達を信じていた。
いつの間にか俺だけで戦っているつもりになっていたのかもな・・・

俺はミミロップ達を追いかけようと立ち上がる。
ん・・・・?
鼻の上に冷たいものが落ちる・・・雪だ。
そういえば明日は何の日だったか・・・


「ねえ、何をする気何ですか~?」
ミミロップ達はタマムシシシティを人間達に見つからないように、路地裏から路地裏へと進んでいた。
「……うん、あっちね、近いわ」
ミミロップは鼻をくんくん言わせながら、どこかを目指している。
「ミミロップさんってば~!」
ロゼリアの問い掛けを無視し、ミミロップはどんどん歩いていく。

「あ、あったあった」
路地裏から表通りを覗き込んだミミロップが、嬉しそうに小声で言う。
え? とロゼリアも同じ方向を覗き見ると、その先にあったのはタマムシデパートだ。
店先で人間達がチョコレートを売っている。

「……あのー、何をするつもりですか?」
嫌な予感がして、ロゼリアは不安そうに訪ねる。
「ちょっとあれを拝借に」
「え!? 、もがもご――」
大声を上げそうになったロゼリアの口を、慌ててミミロップが塞ぐ。
「しーッ!」
「ミミロップ、どろぼ~?」
「ち、違うって!」
ミミロップはロゼリアを離し、ジャラッと何かを取り出した。
「これとすり替えるの。堂々と買いになんて、行けないでしょ?」
「それ、人間のお金ですよね? そんなものどこで……」
「ちょっとねー」

――関係無い話だが、自宅から財布等の窃盗の被害を受けたと、ハナダシティ在住の有名なポケモンマニアのM氏から、警察に届け出が出されたという。
しかし、M氏宅に証拠は残されておらず、事件は迷宮入りとなった。
「何でやー!?」
と涙ながらにM氏は語る――


「じゃあ、ムウマージちゃん、例のアレで援護お願い」
「うん」
「ちょ、ちょっと」
ムウマージが怪しい光を放とうとするが、
「きゃーっ!?」
突然、人間の悲鳴がした。
「な、なに~?」
「み、見つかった!?」
「いえ、こっちを見ていません。どうやら違うようです」
ミミロップ達は人間が悲鳴を上げたほうを見る。
すると、でっぷりと太った大きな黒いポケモンが、大きな足音を立ててデパートを目指していた。
「に、逃げろ! カビゴンだー!」人間達が逃げ出す。
「お、お、美味しそうな甘い匂いがするでよ~」
どうやらチョコレートの甘い匂いにつられ、人里にやってきたようだ。
カビゴンはチョコレートが並べられた棚を持ち去ろうと、手を伸ばす。
「このままじゃ、ぜんぶとられちゃう~?」
「ええ! ……させない!」
ミミロップは駆け出す。
「ちょ、ミミロップさ~ん!」
ロゼリア達もそれを追う。
「待ちなさいッ!」
「んあー? お、お、お前ら、誰?」


「アンタねー、独り占めなんてダメなんだから!」
ミミロップはビシッとカビゴンを指差す。
「お、おでは腹減ってるんだな。こ、こ、こ、これは絶対に渡さないんだな」
カビゴンは固くチョコレートの棚を抱え込む。
「説得は駄目そうですね」
「仕方ないわ。それなら力付く!」
ミミロップはカビゴンの方に駆け出す。
何だか最近ピカチュウさんに似てきましたね――ロゼリアは呟く。
カビゴンの手前でミミロップが低く跳ね、飛び蹴りを繰り出す。
しかし、
「ぜ、全然痛くないでよ」
カビゴンの大きなお腹にボヨンと跳ね返された。
「んな!?」

体勢を崩されたミミロップは、背中から地面に落ちてしまった。
「いたた……何、あれ!?」
チョコレートの棚を脇に置き、カビゴンはぽりぽりと蹴られた部分を掻く。
「厄介なお腹ですねー……」
「トランポリンみたい~」
「た、食べる邪魔するなら、おでも容赦しないでよ」
戦闘体勢に入ったカビゴンが、地面を両腕で叩くと、コンクリートの地面にヒビが入り地が軽く揺らいだ。
とんでもない馬鹿力だ。
「ねえ、私達もしかして……ピンチ?」
「……ええ」
「やばいかも~」


カビゴンはその細い目を吊り上げて地面を揺るがしながら、ミミロップ達に近づいてくる。
「ど、どうしよ……」
「あは、あはは……」
「ぜったいぜつめ~」
そんな時、
「ラフレシア、痺れ粉です」
お嬢様風の、和服を着た人間の女性がラフレシアを繰り出し、カビゴンを麻痺させた。
後ろにはたくさんの女性トレーナー達がずらりと並んでいる。
「お、お、お、お、お~?」
麻痺したカビゴンを女性トレーナー達が取り囲む。
「女の敵に鉄槌を。皆さん、やってしまいましょう」
お嬢様風のトレーナーが、女性トレーナー達に笑顔で指示する。
「は~い!」
とカビゴンをボコボコ蹴り始める女性トレーナー達。

「な、何なの~?」
「さ、さあ?」
「たのしそう!ムウマージもやってこよ~」
「私もやってこようかな」
ミミロップとムウマージも、こっそりそれに加勢する。

数分後、ボロボロになって気絶しているカビゴンが、そこに残されていた。
「……よく分かりませんが、女性は怖いということですかね」


「ひゃ~、女は怖いな~。僕が手伝うまでもなかったや」
そう言いながら、あの時の赤服がミミロップ達の方に駆けてくる。
「ミュ……(あれは……)」
「や、また会ったね。君たち」
フレンドリーに赤服はミミロップ達に挨拶する。
そしてカビゴンの方へ、近づいていった。
「……さて、こいつも何かかわいそうだし、ポケモンセンターに連れてってやるかな」
気絶しているカビゴンの額に、モンスターボールを直接コンとぶつけ、赤服はカビゴンを捕まえた。
「それじゃあ」
手をひらひらミミロップ達の方へ振ると、赤服はポケモンセンターの方に走っていった。

「……行ったわね。よし、人の少ない今のうちにチョコを取って来ましょう」
「は、はい」
「うん」


(確かにこっちのほうに行ったはずなんだが・・・)
俺は皆を追いかけて林の奥に来た。
が、なかなか見つからず、かなりの時間が経ってしまった。
「どうやら仲間はいないようですね。」
この声は・・・
「・・・ミロカロスか。何のようだ?」
「ダークライのことについてです。事態は私たちが予想していた以上に深刻になってしまいました」
ミロカロスの顔にいつもの余裕は無い。
「どういうことだ?」
「ダークライとバンギラスが手を組みました」
・・・バンギラスとはあの銅色のポケモンのことだろうか?
「時間が無いので単刀直入に言います。あなたはダークライの件から手を引いてください」
「・・・なぜだ?」
「ダークライの強さはさっきの戦いでわかったと思います。しかし、あのバンギラスというポケモンは戦闘能力だけ見ればダークライと同等、もしくはそれ以上です」
「それで逃げ・・・いや、後ろから誰も追ってこなかったということか・・・」
「そうです、もうあなたたちのことなど眼中に無いのでしょう。やつらはヤマブキシティに向かっています。たぶんそこにいるロケット団のボスを倒し、乗っ取るために・・・。やつらの力なら難しいことでは無いでしょう・・・」
「・・・悪いが俺は手を引くつもりはない。」
「なぜです?これは私たちの問題、あなたたちにそこまでしてもらう必要はありません」
「勘違いするな、俺の目的は世界を征服すること、ただそのために邪魔なヤツを潰すだけだ。」
「しかし・・・」
「さっきから何の話をしているの?」


振り向くとミミロップが不機嫌そうに立っていた。
(先を越されたわ・・・これじゃ渡しづらいじゃない!)
「ピカチュウさん!ポケモンたちの連れて行かれた場所がわかりました!」
「ガーディからきいた~ヤマブキシティだって~」
続いてロゼリアとムウマージが出てきた。
「・・・そういうことだ。おれたちもヤマブキに向かう」
「そうですか・・・恩にきます」
「だからお前たちのためにするわけではないと言っているだろ!」
「フフフ・・・あなたにこれを渡しておきますわ」
ミロカロスがわざと皆に聞こえるようにそう言うと、俺に白い箱を渡した。
「きっとあなたたちの役に立ちますわ。でもいざというときまで絶対開けないで下さいね」
(キ~なによッ!また貢ぎもの!)
「それでは・・・」
ミロカロスは去っていった。

「・・・ところでお前の持っているものはなんだ?」
俺はミミロップの手にある箱を見る。
「な、なんでもないわよ!(何言ってるのかしら私!)」
ミミロップが慌てて後ろに隠す。
「そうか・・・まあいい。すぐヤマブキに向かうぞ」
「・・・どうやらいつものピカチュウに戻ったみたいね」
「それでこそピカチュウさんですよ!」
「ぼわ~ん」
俺たちはヤマブキシティに向かった―――

「・・・・いいのかパルキア?あれを渡してしまって」
ボーマンダとミロカロスがピカチュウ達を見下ろしている。
「この際しかたがないでしょう。このまま戦いに挑んでも勝てる見込みは限りなく低いです・・・」
「だが・・・」
「こうなってしまった以上、あの猫には犠牲になってもらうしか道はありません。わが主が復活しなければ本当に世界が終わってしまいます・・・」
「そうだな・・・」


一方その頃ニャルマー達もカントー上空に来ていた。

「もう下におりようぜ。俺もうなにも見えねえよ・・・」
「我慢しな、あと一枚なんだ。ここら辺のはずなんだけどね・・・」
もう日はすっかり沈んでいる。
「あぁ!今日はバレンタインだってのに一日中飛びっぱなしだよ・・・ん?こ、この匂いは!」
ムクホークは急降下していく。
「石板を見つけた・・・わけではないでしょうね」
フライゴンももうムクホークのことを理解したようだ。
「だろうね、しかし鳥目でなにも見えないはずなのによくあんなことできるね・・・しかたない、アタシ達も降りるよ」
フライゴンも急降下する。

ムクホークは地面で伸びていた。横には地面に激突したであろう穴ぼこができている。
「ったく、鳥目だからってこんなことするから・・・」
そのとき、石板が強く反応する。
「これは・・・」
周りを見渡すと、白い箱から黄色い石板がはみ出していた。
「へぇ、アンタも役に立つときがあるんだね」
ニャルマーが石板に手を伸ばす。

「もう、何なのよいったい!」
ミミロップが叫ぶ。
「急に空から何か降ってくるのだもの・・・」
「アンタ、ミミロップじゃないかい。」
「え、あ、あなたニャルマー!」

(ということはさっきの箱はコイツらのだね・・・)
ニャルマーが気づかれないように素早く箱を元に戻す。

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