第18章 - 5

「!!?!??!!!」
チョコを口にするとドンカラスの顔が青くなった後、嘴がみるみる赤く腫れあがる。
「が、辛゛ぇ゛!! み゛、み゛ず、水゛~!!!」
ドンカラスは悲鳴を上げながら食堂の方に急いで走っていった。
奥からドンガラガッシャーンと何かにぶつかって皿が割れた音と、他の誰かの悲鳴が聞こえた。

マニューラ達はその様子を見て腹をかかえて笑いだす。
「ヒャハハハハハハ!見たかよ、アレ!?大成功だぜ!」
「ぷっ、ぷぷ…」
「キャハハ! まさか本当に成功するとは思わなかったわ」
「マトマの実を煮込んだ超激辛ジャム入りチョコ美味しそ!プギャー!」
食堂の奥からはまだドンカラスの悲鳴が聞こえる。
「じゃっ、てめーら帰るぞ!」
「いいもん見れたっつーの」
「そーねー」
「みんなにも話してやろ!ギャハ!」
ニューラ達は洋館を満足そうに出ていく。

「…ま、詫びの品だからな」
マニューラはニューラ達に気付かれないように、そっと何か小さな箱を洋館の中にポイッと投げて置いていった。
真相、真意不明。


小ネタ『本気のビッパ』

「何でドンは僕の友達を追い出すんだお…」
とある洞穴の中でビッパは考えていた。
「今度の友達が最後だお…慎重にいくお」

そして翌日
「ドン~!友達連れてきたお!」
一方、ドンカラスは……
「もう出っ歯の連れてくるのは信用ならんからほっときやしょ」
「ちょっと見てくるポ……ぞ」
エンペルトが洋館の扉を開けると…
「ドンー!あれ?」
「友達はどうしたんだポ……?」
「あの時のポッチャマだお!全然変わってないお!」
「う、うるさいポチャ!」
ドシーン!ドシーン!
「?」
「最後の友達のリングマ君だお!」
「何でぇ何でぇ!」
慌ててドンカラスが駆けつける。
「あ、ドン!このリングマ君は凄いお!力が強いんだお」
「へぇー…そりゃ採用…」
「zzz…」
「へ?」
「しまったお!まだ冬眠の季節だお!」
「帰れ」

続かない


一方ピカチュウ達………・
「………そろそろだな」
通路の途中には気絶したロケット団が何人か倒れていた。
赤帽子たちがやったのだろう。
「あの扉の向こうが騒がしいですよ!」
どうやらあそこにサカキがいるようだ。
「いくぞ!」
届かないボタンは無視して一気に扉を破壊する。

「イーブイ、シャドーボールだ!」
赤帽子とサカキが戦っている。
ミミロップたちはなぜか後ろの方に隠れている。
「あっ、ピカチュウ!よかった無事で!」
俺たちに気づいたミミロップが叫ぶ。
「当たり前だ、なぜお前たちは加勢しない?」
「僕たちではダメなんです。下手に近づくとボールで捕獲されてしまいます。」
よくみるとサカキが見たことも無いボールを持っている。
「さっきもリザードがボールを弾いてくれなかったら………」
ロゼリアはアロマセラピーでリザードの体を癒していた。
「僕たちをかばったためにサカキのサイドンの攻撃をモロに受けてしまったんです」


サカキが俺たちの存在に気づいた。
「ちっ、足止めもできないとは使えんやつだったな………・まあいい」
サカキがさらにポケモンを繰り出す。
「く………」
どうやら赤帽子にはあとイーブイしかいないようだ。だが俺たちは下手に近づけない。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
サカキが攻撃の命令を出………
「大変です!例のポケモンが逃げ出しました!」

下っ端が部屋に飛び込んできた。
「なんだと!………仕方ない、今日のところは見逃してやろう」
サカキはポケモンたちを戻し、部屋から出て行こうとする。
「待ちなさい!逃げるつもり!?」
ミミロップがサカキを追いかけようとする。
「………俺たちも退却だ」
「え?」
「退却だと言ったんだ。もうアジトは壊滅した、ここにとどまる必要は無い」
「そ、そうよね!(………いつものピカチュウらしくないわね)」

今の俺ではあのドサイドンにすら敵わなかった。
いまへたにサカキを追いかけてダークライと出くわしたら………・
「ピカチュウ、だいじょうぶ~?」
ムウマージが心配そうに聞く。
「あ、あぁ………」
………こんな気持ちになったのはギンガ団のとき以来か………

「よし、急いで外に出るぞ」
俺たちは逃げるようにロケット団のアジトを後にした………・


時を戻ってここはオツキミやまの手前
まだ夜が明けていないにも関わらずピカチュウは起きていた。

(………さて、みんな寝ているな)
俺は皆を起こさないように少し離れた林に来た。
適当な岩に向けて手を突き出す。
キィンッと音が響いて緑色の光球が強く輝き、緑色の光が手の平から放たれた。
岩に花が数本咲く。
(うむ...まだまだ実践では使えないか)
俺は同じことを繰り返す。
花は一本だったり大量だったりとまちまちだった。
(なかなかコツがつかめないな、威力も安定しないか………)
その時、ひとつの石に花ではなくおおきな植物のつるが出てきた。
(これは………いけるかもしれん)
もう一度おなじように、たださっきよりも力を込めて放つ。
さっきよりもおおきなつるが勢いよく飛び出した。
(これなら相手の足を止めるくらいならできそうだな………全力で放ってみる価値はある)
俺は力をためる。緑色の光球がいままでより大きく光る。
(………・いまだ!)
しかし緑色の光は放たれず、さらに光が大きくなった。
(これは………まずいな………)
大きくなりすぎた光は、ついに弾けとんだ。
俺は反動で吹っ飛ばされる。
放たれた巨大な光は小さな石にぶつかったが何も出てこない。
痛みを堪えつつ顔を上げると、もう日が昇っていた。
(しかたない、今日はここまでにしてみんなを起こすか………)


数分後………
さっき巨大な光が当たった石が突然動き出した。
さらに石から腕のようなものが生えてくる。
「ギギ………ピ、ピカチュウ……」
その石はピカチュウたちが進んでいった道をゆっくり進みだした。
そしてオツキミやまPCの前………
ピカチュウたちが入っていったオツキミやまに進んでいくその石を女の子がふんずけた。

「いたッ!つまずいて ころんじゃった
 ポケモンの イシツブテだわ!」

その後、その石がどうなったかは不明―――――


――ハクタイの森、洋館。
ハクタイの森に住み着く、ピカチュウ配下のポケモン達が洋館の食堂に集まっていた。
「……で、奴らにも招集はかけやしたか?」
ドンカラスは珍しく真剣な表情で話している。
「ヤミカラスが無事に伝えて来たみたいポ……ゴホン、伝えてきたようだ。直に来ると思う」
エンペルトが報告する。ドンカラスは「そうか」と頷いた。

 玄関の方からギイーと扉を開ける音が聞こえる。
「来やしたか」
エレキブルがドーミラーを連れて、食堂にやってきた。
「七英雄エレキブル、参上。他の七英雄は、ドーミラー以外トバリ周辺の巡視をさせているため来れん」
「ども」
「七武海とやらじゃなかったんですかい? まあ、そこの席に座って、全員揃うまで待っててくだせぇ」
「うむ」

 その数分後、玄関の方から今度は扉を乱暴に勢い良く開ける音がした。
「やっと来やがったな」
普段と変わらない様子で陽気にマニューラが食堂にやってくる。
「てめーからオレを呼ぶなんて珍しいじゃねえか、糞カラス。ヒャハハ!」
「……遅刻だ。早くそこの席に座りやがれ、マニューラ」
いつもの調子で「糞ネコ」と返してこないドンカラスに、つまらなそうな顔をしながらマニューラは用意された自分の席に向かった。
「で、何の用だよ?」
マニューラは遅刻してきた事を悪びれる様子もなく、食堂のテーブルに頬杖をつきだらしなく座る。
「ぐぐ……まあ、いい」
ドンカラスはマニューラのその態度にカチンときたようだ。
だが、ハクタイ以外に住むポケモン達がいる手前、いつものようにくだらない事で喧嘩を始めるわけにもいかず、何とか自分を抑え込む。


「これで全員揃ったな。あー、この度はわざわざ遠い所から――」
「そんなのはいーからさっさと要件を言え」
マニューラはふてぶてしい態度で毛繕いをしながら、ドンカラスの話を遮った。
「いい加減にしやがれよ糞ネコぉ!」
ついに我慢の限界がきたのかドンカラスがテーブルをバンと叩く。
「ヒャハハ! さっきから気取ってやがるからだ糞カラス!」
そんなドンカラスをマニューラは嬉々として煽る。
やれやれといった感じでエンペルトが、マニューラの挑発にのって熱くなっているドンカラスを止めた。
「まあまあ……いいから本題に入ろう、ドン。」
「ぐ、そうだった。では本題に入るとしやしょう」

ドンカラスはシンオウのタウンマップを広げて食堂の壁に張りつけ、今回の要件を説明し始める。
「最近、フローゼルをリーダーにブイゼル他水棲ポケモン共が徒党を組み、海賊を名乗ってシンオウの沿岸地域のポケモン達を襲ってるんでさぁ。」
「あー、そーいやキッサキの方にも、そいつら来やがったな。目障りだったからオレとニューラ共でボッコボコにのしてやったら、それから来なくなったが。ヒャハハ」
「トバリ周辺にも現われた。俺達七人の侍で蹴散らしてやったが」
「七英雄じゃ無かったんですかい? ……ええ、あっしらも奴らを何度か追い払っていやす。ボスの手下のあっし達がいる地域はこの通り大丈夫何だが――」
ドンカラスはサインペンを器用に羽で掴み、タウンマップのナギサ周辺をくるりと囲んだ。

「この辺が問題なんでぇ」


「ナギサか。そこは俺達、荒野の七人の、ちょうど管轄外だ」
「……もう突っ込む気も失せやした。ゴホン、そう、ボスの息のかかった者が誰もいない。それをいいことに奴らナギサ周辺に本拠地置いて、好き勝手やってやがんでぇ」
「で、どーすんだぁ?」
ドンカラスはタウンマップの223番水道から少しそれた、岩場がある辺りにバツ印を付けた。
「偵察に行かせたヤミカラスの話によると、奴らの本拠地のある場所はこの辺らしい。ここを攻め込み、奴らを一網打尽にしちまおうってわけでぇ」
「なるほどな。で、行くメンバーはどうする? ここにいるポケモン全員でぞろぞろ行くわけにはいかないだろう。俺達が不在の隙を突かれるかもしれないしな」
エレキブルの問いに、ドンカラスは少し考えた後答える。
「そうだぁな。あっし、エンペルト、エレキブル、ドーミラー、それと……あんまり気が乗りやせんが、マニューラって所かね」


「わかったポ……ゴホン」
「了解だ。我ら七武海、エレキブルとドーミラー、海賊討伐に力を貸そう」
「しょーがねえなぁ。暇だしやってやるぜ。ヒャハ!」

ドンカラスは左羽でキュッと、頭の帽子みたいな羽毛を被り直す様な仕草をする。
「へっ、決まりだな。マニューラ、締めはてめえに任せやした。一発、士気が高まるようなやつをお願いしまさぁ!」
「ヒャハハ!任せな!」
マニューラはテーブルに上がり、すうっと大きく息を吸い込んだ。そして荒々しく声を上げる。
「聞けえ、てめーら! これから潰しにいくのは何だ!?」
「223番水道にいる海賊!」食堂に集まるポケモン達が、マニューラに一斉に応じる。
マニューラはニッと不敵な笑みを浮かべた。
「そのとーり!飼い主が留守の間に、番犬が間抜けなせいで住み着かせちまった害虫共だ!オレ達、間抜けな番犬は、おっかねえ飼い主様が帰ってくる前に、害虫共に噛み付いて教えてやんなきゃならねえ――」
マニューラはテーブルから飛び降り、ピカチュウのマントにも刺繍されている雷をモチーフにした紋章を、食堂の壁に鉤爪で刻み込んだ。
「このシンオウの家主は、オレ達の飼い主であるピカチュウだってな!ヒャハハハハ!」
「おうッ!」
ポケモン達が沸き返る。

そんな中、ドンカラスはぼそりと呟いた。
「あの壁、帰ってきたらあの糞ネコに直させねぇとな……」――


――ドンカラス達は海賊達の本拠地周辺にたどり着く。
だが、そこにはフローゼルとブイゼル達、そして大勢の水棲ポケモン達が待ち構えていた。
「どうやら感付かれていた様で。こりゃまたすげぇ数だ」
「けっ、よゆーだ。あん時に比べりゃ何でもねーぜ! ヒャハハ!」
ドンカラスは帽子をかぶり直すような仕草をする。
「……へっ、そうだな。よし、行くぞ! てめぇら!」

――翌日、ナギサシティの海岸には大量のブイゼルと、水棲ポケモン達が気絶した状態で打ち上げられていた。
専門家達は磁場の影響だとか、環境汚染の影響だとか色々と説をのべたが、真相はわからずじまい。
ナギサシティの住民や近隣のトレーナーに記者がインタビューしたが、どれも役に立たちそうもない内容ばかりだったようだ。

その内容を幾つか紹介する。
「黒い猫みたいなポケモンが、沢山いるマンタインの背中から背中へ飛び移って、次から次へと襲ってくるサメハダーを辻斬りで倒してたよ。すごかったな」
「大きくて黒い鳥ポケモンがブイゼルの群れのみずでっぽうを避けながら、ペリッパーを何羽も撃墜していました」
「浮上してきたホエルオーに天気が荒れてもいないのに、雷が落ちてた……怖い怖い。何かそのホエルオーには、沢山テッポウオとオクタンがひっついてて、まるで戦艦みたいだったぜ」
「鎧を着たペンギンみたいなのがフローゼルと、アクアジェットで一騎打ちしてた」
「黒い猫が何か丸い板みたいな物でサーフィンしてた」
「ブイゼル達が海岸にたくさん打ち上げられた日の夜、ハクタイシティに住んでる友達から、何か例の幽霊屋敷から楽しそうに宴会してるみたいな音が聞こえたって、怯えて震えた声の電話きた」
以上。

- 46 -
スポンサーリンク
スポンサーリンク