第18章 - 3

「俺に聞きたいことだと?」「アンタ、アルセウスを知っているだろ?」あまりのことにヒードランは驚きを隠しきれなかった。「なぜおまえごときが俺の主人の名を知っている!」「………やっぱりあれは夢じゃなかったんだね」「……………」「そうか、おまえはパルキアが言っていたあのときの戦いにいたのだな」「そういうことよ。ピカチュウ以外あの戦いの記憶は消されているみたいだけど、どうやらアタシの記憶は消し損ねたみたいだね」「えっ、記憶?アルセウス?いったい何の話?」ムクホークとフライゴンは全く話についていけない。「時間が戻って、何もかもが元通りになって、本当に起きたことなのかわからなかったけど、これで確信がもてたわ」ニャルマーが続ける。「アタシの記憶が正しければ、アルセウスはまだ復活していない。そうよね?」「うむ………その通りだ。今は転生したディアルガとパルキアが主人を復活させるために飛び回っている」それを聞いたニャルマーの目が光る。「ねぇ、アタシと手を組まないかい?」「なに!?」


「いまこの世界には神がいないんだろ?これほどのチャンスはもう二度とないよ」「どういう意味だ?」「神が復活する前にあたしたちが神の力を手に入れるんだよ。つまり、16枚の石板を集めるのさ」「しかし、あの石板はわが主人にしか使えんぞ」「いや、アタシにはできるさ。『猫の手』でね」「なるほど、確かにそれなら………だが、なぜそこまでする?今の世界がそんなにいやなのか?」「そういうわけじゃないさ、ただ………なんでもない。で、協力してくれるのかい?」ヒードランはしばらく考え、不意に笑い出した。「フハハハハ、面白い!お前ごときがどこまでやれるか見てみたくなった。いいだろう、協力してやる」「交渉成立ね」「だが、私はここから動けん。代わりにこれを渡そう」ヒードランが赤い石板のかけらをニャルマーに渡した。「石板同士はお互いに引きつけあう。これを頼りに探すんだな」「わかったわ、ムクホーク、フライゴン、出発するよ!」「え、え~と何処へ?」ムクホークとフライゴンはきょとんとしている。「とりあえず、外に出るよ。その間にあんたたちにもわかるように説明するわ」フライゴンの背中に飛び乗る。「さあ、いくよ!」


―ハードマウンテン奥地
「さて…。」ニャルマー達が去った後、ヒードランは自分の巣穴に帰ろうとしていた。だが突如、目の前の空間がひび割れ、その裂け目からミロカロスが姿を現す。
「!パ、パルキア………。」たじろぐヒードラン。ミロカロスはその様子を見てニコリと微笑むが、目は笑っていない。「お久しぶりですね。」
「ど、どこから見て…。」怯えながらそう質問するヒードランに、ミロカロスはニコニコと微笑みながら嫌味ったらしく答えた。「はて?どういった意味の質問でしょう。何か見られては不味いことでもなさっていたんですか?」震えたまま無言でいるヒードラン、ミロカロスはその様子を見て無表情で言い放つ。「答えによっては石板をこっそりと隠していた時のように、またあなたを始末しなければなりませんね。」青ざめるヒードラン。
「そういびるなパルキア。ヒードラン、もういい。行くがいい。」突然、最初からそこに居たようにボーマンダが姿を現す。許しをえたヒードランは逃げ出すようにその場から立ち去った。「あら、もういらっしゃったのですか。楽しいのはここからでしたのに…残念ですわ。」ミロカロスは残念そうに言う。「その喋り方もやめろ。」「まったく、いいではないですか。このくらいの戯れ。」ミロカロスはむくれながら渋々、素の喋り方に戻す。そんなミロカロスを無視し、ボーマンダは本題に入った。
「これで予定通り、か?」


「ええ、我らがダークライの引き起こす厄介事の処理に追われて自由に動けぬ今、あの様に自由に動ける手駒が必要ですからね。少々、小細工をさせてもらいました。」「…あの様な奴らにやらせて大丈夫なのだろうな?」ボーマンダは無表情ながら少し不安げに尋ねる。「問題無いでしょう。石板を集めたところで、アルセウス様でなければどうにもできません。持つ者の秘めた力を少し増幅し放てるくらいです。アルセウス様があのピカチュウに与えた腕輪程度と言ったところですか。」ミロカロスは淡々と答える。「それがあの猫に対する丁度良い目眩ましになる、か。」ミロカロスはニヤリと笑う。「ええ。我らの代わりに必死に石板を集めてくれることでしょう。」
それを聞きボーマンダは呆れたように言う。「…相変わらずだな。」「はて?何のことでしょう」とぼけるようにミロカロスはそう言った―


俺は人間を恨んでいる。だから野望がある。そして今に至る…はずだった。人間を恨んでいない…そんなことは無い。「お前は人間を恨んでいないのか」
「俺は人間に対して何の感情も持ってない。利用するためのもの。それだけだ。」厄介な奴だ。
「まだ否定してやってもいいぜ。お前は大きな誤解をしている。」ダークライがそう呟くと、ダークライの前に、大きな黒い塊ができた。
「それは、お前が弱いってことだよ!」


「待て、ダークライ」サカキがダークライを片腕で制する。「このままお前が暴れては大切な商品に傷がついてしまうだろ?おいお前たち、さっさとポケモンたちを運び出すんだ」「は、はい!」下っぱたちが急いでポケモンたちを運び出す。「さて、ダークライ。私は忙しいので失礼するよ。まだお前を信用する理由が無いからな。こんな子ネズミどもはお前が始末しておけ。私が直接手を下すまでも無い」「………わかった」「では、お前に私の道具を貸してやろう」そういってサカキはボールからサイホーンを出す。「ククク、私をがっかりさせるなよ」サカキが倉庫から出て行く―――


「道具か………少しは役に立ちそうだな。」ニヤリとただでさえ不気味な外見のダークライが薄ら笑いを浮かべた。何を考えている……?「…サイホーンか……今はタイプ相性的に不利だな…それにあっちのポケモンは何だかわからないし…。」
赤い帽子を被っている、帽子と同じ色の服を着た人間は俺の横でぶつぶつ独り言をしている。
「行け、奴等を倒せ。」ダークライがサイホーンに言ったのはそれだけだった。サイホーンが突進して俺達に向かってくる。
と同時に、赤い服の人間はモンスターボールを投げて叫んだ。「ピカチュウ、アイアンテール!」ボールの中から飛び出してきたのは俺と同じ……それもハナダシティで見かけたピカチュウだった。ボールから飛び出した勢いのまま、サイホーンの眉間にアイアンテールが打ち込まれる。
「僕は捕まっているポケモン達を助けたい。頼む、力を貸してくれ。」人間は俺にそう頼んだ。ポケモン相手に頭まで下げて。シンオウの赤帽子といい、何故そこまでする?
「ここで時間をかけてたら、サカキ達は行方を晦ましてしまう。捕まっているポケモン達を助けられないんだ。」


突然、人間はあのピカチュウの方を振り向き「アイアンテール!」と叫んだ。丁度サイホーンが突進してくる所だった。あのピカチュウはアイアンテールでサイホーンを弾く。
「ピカチュウ、あの人悪い人間じゃないんでしょ?一緒に戦った方がいいんじゃない?」「ダークライもいますし、あの人だけじゃきっと敵わないですよ!」「やられちゃうよ~ムウマージ、いっしょにたたかいたい~」
俺は………。
「ピカチュウ!」「ピカチュウさん!」「ピカチュウ~」
「………やめだ。」「「「え?」」」「ダークライに惑わされ、いい様に操られてた……考えるのはやめだ。」
俺はもう人間なんてどうでもいい。だからあの時、シンオウからカントーに旅立ったんだ。人間に復讐するためではなく、ピカチュウの名を、カントーにも知らしめるために。
「ミミロップ、ロゼリア、ムウマージ。あの人間に加勢するぞ。人間がサイホーンを止めてる間にダークライを……」そこで俺は気が付いた。サイホーンはあの人間と戦っている。それではダークライは何をしている?
ダークライの方を見ると、今まさにあくのはどうを放とうとしている所だった。味方のはずのサイホーンまで巻き込むつもりか!?
「俺の言葉がお前を惑わすためだった事にようやく気が付いたか。だが遅かったな、ゲームオーバーだ。」


「ピカチュウ、そっちの黒いのに電光石火だ!」ダークライが悪の波動を放とうとした瞬間、赤服の人間のピカチュウが電光石火の一撃を決めそれを阻止する。「ぐっ、このガキっ!」ダークライは赤服の人間を睨む。赤服の人間は得意げに言った。「ふふん、僕が一匹だけに集中してると思った?」「ちっ…」ダークライは何をしていると言いたげに、サイホーンの方を見る。「ぐ~が、ぐ~がが~!」サイホーンは赤服のピカチュウのアンコールを受けたのであろうか、無意味に尻尾を振らされていた。「…えぇいっ! アホがっ!」ダークライは苛立ち叫ぶ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。俺は一気にダークライとの距離を詰め、尾を振りかぶる。「ピカチュウ、アイアンテール!」同じように赤服のピカチュウもサイホーンに仕掛けようとしていた。「ピカッ!(食らえッ!)」「ピカー!(食らえー!)」 俺と赤服のピカチュウの叫びが重なる。そして同時に鋼鉄と化した尾を互いの敵に叩きつけた。「ぐうっ」手応えありだ。「ぐがああぁ…」サイホーンが赤服の人間のピカチュウの一撃で倒れこむ。「ちっ、使えん道具だ」ダークライがサイホーンが倒れたのを見て言い放つ。「よそ見をする暇はあるのか!?」俺は追撃の電撃を放つがダークライはそれをかわし、倒れたサイホーンの真上にふわりと浮かび上がった。「使えん道具は…」ダークライは両手を掲げる。するとサイホーンの体が黒い球体に包まれた。何をする気だ!?「使えるようにするしかあるまい」


小ネタ『私だって萌え系うさぎだもん』
ムクホークは傷つき、扱き使われてきた体を羽休めでなんとか回復してきた。しかしそれにも限度があったのだ。「ハァ………今日も一人虚しく羽休め、誰か僕に愛の手を………」ニャルマーとフライゴンが寝ているさなか見張り番として起きていたのだ………鳥目なのに。そんなとき目の前の草むらが揺れる、その音に反応するが何分鳥目ゆえ視認は困難である。「だ、誰!?」「貴方………こんなに傷だらけじゃない、大丈夫?」その謎のポケモンはそっとムクホークに近づき傷だらけの羽に手を添えた。ムクホークの眼前に長く揺れる耳が目に入る。(ま、まままさか憧れのミミロップたん!?!?)彼女は暗闇の中ムクホークの傷を癒してくれた、その癒しがあまりに気持ち良かったのかムクホークは眠りこけてしまった。その晩、ムクホークはミミロップたんの夢を見たのは言うまでも無い。
翌朝、ムクホークが目を覚ますと彼女の姿はなく目の前にはオレンの実が落ちていた。「夢………・・いや、この手当てのあと、夢じゃない!!」無駄にはしゃぐムクホーク、するとまた草むらが揺れる。「ミミロップたん!?」しかし草むらから出てきたのはミミロップではなくみずうさぎポケモンのマリルリだった。「あ、目が覚めたんですね。」声の主を前にムクホークは固まっている。「?どうかしました?」「………違う」「え?」
「僕のミミロップたんはこんな水風船じゃなくてもっとスラッとしたナイスバディーなんだぁ!!」
ピシッと音を立て固まるマリルリ、感謝こそされどまさかこんな言い草とは思わなかったからだ。何かの物音で目覚めたニャルマーが何か丸いものに叩きつけられたであろうムクホークを発見したのは数分後の事であった。
癒しってのはアクアリングってことでww

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