第18章 - 2

「ミミロップさん!」
ミミロップはすごく遠くに飛んでいた。声が聞こえないわけだ。
「この奥がボスの部屋みたいですね。」
「ピカチュウまちがった~。」
「ぷぷっ…ピカチュウは侵入者を欺くためのワナとかいって…」
俺はあんな事言わなければよかった。そう思った。
「ゴホン。よし!ドアを開けるぞ。」

…届かない。
「ちくしょー!なんだってんだよー!こうなったら…」
俺はイワークに貰った雷の石を取り出す。
「…?雷の石?」
「これを使えば進化できる石ですね。」
「ムウマージみたい~」
「これで進化してやる!もうこんな低身長とはおさらばだ!ハハハハハ!」

テロレロ デンデンデンd…

「あれ?進化が止まった。」
「フン…まあいい。もう一度だ。」

テロレロ デンデンデンデンデンデn…

「…止まりましたね。」
バキッ!俺は雷の石を叩き割った。
「あれは不良品だ。気持ちを入れ替えて行くぞ!」
ボスの部屋の扉をアイアンテールで破壊した。


ふう、先程は苛立った勢いで雷の石など使いそうになってしまったが、危ないところだった。
俺が今のピカチュウの名を世に知らしめて、世界中のポケモンを手下にするなどという野望を持ったのは元はと言えばアルセウスの所為だ。
だが、今や俺は自分の意志で成し遂げようとしている。
これはピカチュウである時に思い立ったこと。進化してライチュウになってしまっては意味が無いのだ。
それに俺はピカチュウという種に誇りを持っている。
進化する気はない。これから先も、ずっと。
この思いが心の底にあったため先程は雷の石の力を遮り、進化できなかったのだろうな。

――扉を開けた先はボスの部屋では無く、大勢のポケモンが幽閉されている倉庫だった。


俺達は驚いた。
部屋に居るポケモンは、全て両腕両足を拘束されている。
「何よこれ…」
「酷いです…」
「こわ~い…」
よく見ると、後ろに人間が居る。
「ほぅ、お前たちだな?近頃暴れているというのは」
「ピカッ!?(何!?)」
何故コイツは俺たちのことを知っているんだ?
「フッ、驚いているようだな。私も無駄な時間は使いたくない。私の名はサカキ、お前たちはダークライを知っているな?」
「!」
「その様子だとやはり知っているようだな。ソイツにお前が我が組織を潰そうとしていると聞いてな。」
どうやら事態は予想以上に悪化しているようだ。念のために頬袋に電気を溜める。


サカキはボールを取り出した。その中には黒い影をまとったポケモンが入っていた。

「………ダークライ!」
俺はサカキをにらむ。

「しかしこのポケモンの力は凄まじい。これなら近いうちに世界征服を果たすのも不可能ではない。」
サカキは笑う。すると突然、俺の頭に誰かの言葉が聞こえてきた。

「くく……ピカチュウ、久しぶりだな。」
「この声…ダークライか!」
俺は心の中でヤツに話しかける。
「みての通り、俺はこの人間と手を組んだ。まあ、俺はこいつを利用して人間とポケモンを支配するつもりだがな。やはり人間の支配をするには人間がいた方がいいだろう?」
「……世界を征服するのは俺だ。お前なんぞに世界は渡さん。」
俺はヤツに言い返す。ダークライの笑い声が聞こえる。
「クク…人間を拒むお前に、世界征服ができるかな?」
「何!?」

俺はヤツの言葉が理解できなかった。人を拒めば征服できない……どういうことだ?


「頭の悪いお前に、分かりやすく教えてやる。人間の支配を進めると支配された人間がポケモンを捕え、従わせる。人の支配=ポケモンの支配となるのさ。さらに、脆弱な人間どもはちょっと恐怖をちらつかせれば簡単に言うことを聞かせられる。世界を回ってポケモンを配下にするより、格段に楽なのさ。」
ヤツは俺の今までの行動をあざ笑うかのように言う。俺はさすがに動揺してしまう。

「俺は……俺のやり方じゃ、世界は……。」
「くく…今までの自分を否定されて悔しいか?……何ならさらにお前を否定してやろう。」
「何……?」
そうダークライが言い終わった直後、部屋の入り口から一人の人間が走ってきた。

「到着。……お前がサカキか。」
やって来たのは赤帽子の少年だった。
「あれ?あの人さっきの……。」
ミミロップ達も彼に気付く。
「ふ、君か。我々のアジトで暴れているという少年は。よくここまで来れたものだな。」
サカキが少年に話しかけた。赤帽子はフッと笑う。


「団員の一人からサカキが倉庫に向かったって情報はホントだったね。あとはお前を倒せば……って、このピカチュウ達は?」
少年は俺達に気づいた。俺は少年の方を見る。

「……人間……。」
「クク…お前の嫌いな人間が来たぞ?拒むんだろ?」
ダークライはピカチュウに言う。
「フ、何も言わないのか?分かってるぞピカチュウ。お前が人間を、もう大して恨んでないということが!」

「!!!」

俺はダークライの言葉を聞いた瞬間冷や汗がどっと出た。
(……俺が人間を恨んでない?)


その頃シンオウ地方では・・・・

「なぁ、俺たちだけでここに来たのはまずくないか?」
「本当に臆病だねアンタは」
ニャルマーとムクホークはシンオウから少し離れた島に来ていた。
「ピカチュウ達はカントーの方に行っているんだ。チャンスじゃないか。今のうちに仲間を増やして……ちょっとアンタ!聴いているかい?」
「あぁ、ここには知らないポケモンしかいないし、人間もいっぱいいるし、変な火山もあるし……ミミロップたんに会いたい……」
「ダメだねこりゃ」
なんだかんだで砂あらしが吹き荒れる場所に着く。
「アタシの勘ではここいらに強力なポケモンがいると思うんだがね…」

数分後………
「あれは……」
「フライゴンじゃないか、ついてるねアタシらは。」
「まさかあいつを仲間にするつもりか?もし攻撃してきたら…」
「まぁ、その時はその時だね。」
「そ、そんな~」
ニャルマーがフライゴンに話しかける。
「アンタ、フライゴンだね」
「そ、そうだけど、僕に何か用?」
凶暴な奴ではないようだ。
「あたしはニャルマー。突然だけど、アタシたちの仲間にならない?」
「な、仲間!ぼ、僕なんか仲間にしても何の役にも立たないよ……」
フライゴンの声が裏返る。
(………なんなんだいこいつは)


「なんでだい?」
「だ、だって僕ドラゴンなのにぜんぜん強くないし、そのせいでトレーナーにも捨てられちゃったし……」
どうやら自分に自信がもてないらしい。
「ったく、情けないねあんたは!もっと自分に自信をもちな!」
「で、でも………僕なんてどうせガブリアスの劣化……だし………」
これではらちがあかない。
「……わかった。あんたを仲間にしようとしたアタシが間違っていたよ。」
「………」
「ムクホーク!こんな腰抜け倒しちまいな!」
「「えぇ~!?」」
ムクホークとフライゴンが同時に叫ぶ。
(ヒソヒソ……いや、いくら自分に自信がなくても俺じゃかなわないよ………)
(いいんだよ、適当に負けてやればあいつにも自信がついて仲間になってくれるかもしれないだろ)
(なるほど…)
ムクホークがうなずく。
「よしっ、お前なんかこのムクホーク様がボコボコにしてやるぜ!」
ムクホークが芝居がかった口調でいう。
「そ、そんな~」
「いくぜ!」


ムクホークがフライゴンに向かって飛び出す。
「うわ~んおまえらなんか大嫌いだ~」
フライゴンの後ろから流星群が降り注ぐ。
「えっ、ちょっ、そんな技使えるなんてきいてな………ミミロップたーーん!」
あっという間にムクホークの丸焼きができた。
(こいつは……予想以上にやってくれそうだね)
「こ、これが僕のちから……」
「どうだい、アタシたちと一緒に頂点を目指してみないかい?」
「ぼ、僕……やってみる!」
フライゴンが仲間に加わった!
「ほら、あんたたち行くよ!」
「うん!」
「ミミロップたんに手当てしてもらいたい……」
三匹は更なる仲間を探しに旅立つ……


「さて、フライゴン、アンタここいらのことには詳しいんだよね?」
「ま、まあね…」
「じゃ、ここいらを統率しているのは誰だい?」
「た、たぶんヒードランかな。一時期いなくなったらしいけど、今はいるみたい」
「じゃ、そいつのところへ行くよ!」
「で、でも実際あったこと無いし……いるのは火山の奥深くだし………」
「ごちゃごちゃ行ってないでさっさ行くよ!」
「は、はい」
ニャルマーがフライゴンの背中に飛び乗る。
「アンタもちゃんとついて来るんだよ!」
「わかってるよ………」
ムクホークがしぶしぶ答える。

空を飛べる分、早く目的地に着いた。
「こ、ここら辺のはずなんだけど………」
フライゴンが自信なさそうに言う。
「この俺に何か用か?」
突然上から声がした。
「アンタがヒードランかい?」
動じずにニャルマーか問う。
「いかにも、俺がヒードランだ。お前たちは誰だ?見かけん顔だが」
「アタシはニャルマー、こっちはムクホーク」
「で、こんなところまで何の用だ?」
「ちょっと聞きたいことがあってね………」

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