第18章 - 1

つんつん頭を見送った後、漸くタマムシシティに着いた。
日が暮れているが、人間は多いので、獣道を通る。
「いったーーい!」
暫くすると、後ろで叫び声が上がった。
ミミロップが小石を踏んだようだ。
「ちょっとピカチュウ、ここ歩きにくいわよ!」
「もう少しだ、我慢しろ。」
お約束の細い木は、腕輪の力で破壊する。
しかし、探せどもロケット団のアジトらしき物は見つからない。
どういう事なんだ?
すると、遠くにロケット団員が居るのを発見した。
「なに?相棒がやられただと!?しかも普通のトレーナーと野生のピカチュウに!?」
どうやら俺たちの話をしているようだ。
しかもよく見ると、ミミロップにボールを投げてきた奴だ。
よくあのボルテッカーに耐えられたな。
「え?サカキ様が?わかった、すぐアジトに帰還する。」
「おい、あの団員についていくぞ。」
「どうかしたんですか?」
ロゼリアが質問する。
「あいつならアジトの場所を知っているはずだ。中に入ってボスを潰す!」
「なるほど……」
迷っている暇はない。すぐに後を追うことにした。


なんと、団員が行った先はゲームコーナーだった。
少々疑問を感じながらも追いかける。
しかし、この光景…どこかで見たような…。
先に進むと、チラシを守るようにロケット団員が立っていた。すかさず電撃を叩き込む。
「ミミロップ、俺を抱き上げてくれ!」
「えっ!?」
「いいから早く!」
やはり身長が低いと色々不便だな…
取り敢えずチラシをめくると、案の定スイッチを発見。
[押してみよう!ポチッとな!]
すると、床がスライドして階段が剥き出しになる。
「間違いない、ここはロケット団のアジトだ。くれぐれも慎重に行動しろ。以前のミミロップのように捕獲されるからな。」
こうして俺たちはロケット団アジトに侵入した。


階段を降りると比較的広い場所に出た。
目の前にはすぐにまた次の階に降りる階段がある。
とりあえずこの階を見渡してみたが、観葉植物が奥に幾つか飾ってあるだけだ。
それと別の部屋に続くであろう廊下が左右に二つ…か。
どこに組織のボスが居るのかわからない。ここはまずこの階を探索してみるとしよう。

「ちくしょう!あのピカチュウ、今度見かけたらただじゃおかないぞぉ!」
! 下の階から誰かが昇ってくる音が聞こえる。
「とりあえずあの物陰に隠れるぞ!」
ミミロップ達に指示を出し、急いで奥の植木鉢の影に隠れる。

「何とかノルマをクリアしないとまた怒られる…。うう…ポナヤツングスカ支店なんて絶対ごめんだ…。」
先程のロケット団員のようだ。俺達には気付かず、トボトボと俺達が降りてきた階段を上がりアジトを出ていく。
「…行ったか。」
「ポ、ポナヤツングスカ?」
「確かロシアの奥の方です。」
「ふ、ふぅん。」
「…奴の左遷先などどうでもいいだろう。先を急ぐぞ。」


―その頃、地上ゲームコーナー

「ここの警備なんて、もっと俺よりさらに下っぱの役目なのに…。」
ブツブツ言いながら先程のロケット団員はポスターの前に立っている。

「ちょっと、そこのお兄さん。」
赤い帽子を被った少年がロケット団員に声をかける。
「あん?何だよ、お前。ここはガキの来るとこじゃねーの!帰った帰った。」
ニコリと少年は笑う。
「そうはいかないんだ。僕はこの下に用があるからさ。」
「な、何でそんなこと知ってるんだ!?」
ロケット団員は驚く。その顔を見て少年はニヤリと笑った。
「その様子だとやっぱりこの下にアジトがあるんだね。」

「何なんだよお前!?」
「最近、ポケモンを売りさばく組織の噂を聞いてね。気に入らないからそれを潰しに来たんだ。」
少年はロケット団員をきっ、とにらみつける。
「う…く、ばれちゃしょうがない!行け!マタドガス!」
「ドガー!」
ロケット団員はたじろぎ、ポケモンを出す。
「さっさと片付けるよ、リザード!」
「グガァッ!」


俺達は地下二階をこっそりと探しまわったが、ボスを見つけることはできなかった。
「この階には何も無さそうだな……。」
「途中で他とは違う壁があったけど、あれは何だったのかしら。」
ミミロップは首を傾げる。
確かに、壁というよりは門みたいな物があったが……考えても分からなかったので俺達は下へ降りる階段まで戻ることにした。

「……周りに誰もいないな……?よし、降りるぞ。」
「ん?まって~。あしおとがする~。」
ムウマージが誰かの足音に気づいた。
これは……俺達が降りてきた階段から、人が降りてくる!
「ロケット団だ!隠れろ!」
俺達はすばやく近くの物陰に隠れた。降りてきたのは、やはりロケット団だった。だが、なぜか半泣きだった。
「ボス~、変なガキにやられました~。リザードを連れた…。」
そいつは俺達が降りようとしていた階段を、よろよろ降りていった。
「……何だ?あいつ。」
「ピカチュウさん!また誰か降りてきますよ!」
ロゼリアが小声で言う。まったく、慌ただしいアジトだ。


次に降りてきたのは、何と赤帽子をかぶった少年だった。
ロケット団だと思った俺は少し驚く。
(何だ?あんなヤツがここに何の用だ……?)
俺は少し考えてはみるが、答えが見つかるはずもなかった。

「したっぱは大したことなかったな…さてと。全員倒して聞きこみすれば、ボスの居場所も分かるだろ。」
赤帽子の少年はそう言うと、俺達が来た道を駆け足で進んで行った。
「……ひょっとしてあの人、ロケット団を倒す気じゃ……。」
「私もそう思う。」
ロゼリアとミミロップは言う。確かにそんな言葉を口にしていた。
「……だからといって、味方というわけではない。先を急ぐぞ。地下三階!」
「……ピカチュウ。うん、そうよね!分かった!」
「そうよね!了解です!」
「そうよね~。」
ロゼリアとムウマージはミミロップのマネをする。
ミミロップは顔を赤くする。
「もう~、怒るわよ!」

「……人間の味方なんていらない。俺にはこいつらが居れば、それでいい。それでいいんだ。」
俺はふざけ合う三匹を見ながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


「十万ボルト!」
「へぶらっ!」
俺はアジト地下二階階段前に来た。
それにしても変な気分だ。赤帽子の姿が脳裏をよぎる。

「階段を降りる。地下三階だ!」
俺はその気持ちを振り払うように言った。階段を下りると…
「見張りがいますね。」
「ロケット団か…」
その時、
「そこにいるのは誰だ!」
近づいてくる団員。戦闘を回避するのは難しそうだ。俺は三匹に隠れるように指示して飛び出した。
「おや~?飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな。いけ!アーボック!」
「キシャー!」
こんな所で遊んでるほど暇じゃないのに。
「たたきつける!」
俺はアーボックを秒殺した。
「ちくしょー!なんだってんだよー!覚えてやがれ!」
「待て!逃げるな!」
「あれ?逃げられない?え?」
ムウマージのくろいまなざしがロケット団員を逃げられなくしているのだ。
「口封じだ。十万ボルト!」
「ヘナップ!」
その場に倒れるロケット団員。
「これで五時間は起きない。先行くぞ。」
「ぽわ~ん。」


俺達は地下三階の探索をはじめた。地下二階と構造がよく似ていた。
「ボスはどこにいるのかしら?」
「手がかりの一つでもあれば探しやすいんだが……ん?何だあれは?」
俺は、周りをキョロキョロしていると、矢印の書かれたパネルが並んであるのを見つけた。
「なんだろう~これ~。」
「同じ向きの矢印がずら~っと……。もしかしたら、この矢印通りに進んだらボスの所につくかもしれませんね!」
ムウマージとロゼリアが興味深そうにパネルを見る。俺はロゼリアの発言に呆れた。
「…いや、それは違うなロゼリア。あの先を見てみるがいい、矢印が他方向に分かれているだろう。おそらくこれは侵入者を欺くためのワナだ。何が起こるか分からん、うかつに踏むんじゃないぞ。」
俺は皆に警告した。触らぬ神になんとやらだ。
「じゃあ先に進む?ピカチュウ……きゃあ!」
ミミロップは足がもつれたのか、突然転んだ。そして、矢印の書かれた床の上に倒れこんでしまった。
「いたた……あれ?何か世界が回って……きゃあああ!」
「ミ、ミミロップ!?」
なんとミミロップは回転しながら、矢印のパネルを進んでいった。


『節分?』

―――シンオウ、森の洋館にて。
ドンカラスが洋館の二階の一室で何やらゴソゴソしている。
ちょうど、部屋の前を通りかかったエンペルトがそんなドンカラスに気付き声をかけた。
「ドン、何をやっているポ…ゴホン、んだ?」
そのまま何かをガチャガチャやりながら、振り向かずにドンカラスは答える。
「あん?またあの出っ歯が役立たずを連れてくると言いやがるから、対策をしてたんでぇ。」
対策?と疑問に思ったエンペルトはドンカラスに近付き、手元を覗き込む。
なんとドンカラスがいじっていたのは二丁の機関銃だ。
「ちょ、ドン、それは…!?」
驚くエンペルト。ドンカラスはその様子を見てニヤリと笑う。
「安心しなせぇ、殺しゃしねえ。これはあっしの部下に作らせた特別製でやして…。」
ガシャリと機関銃からマガジンを外し引っ繰り返すと、バラバラと豆がこぼれた。
「撃つのは自然に優しく豆!当たりやがったとしても軽い痣ですみまさぁ!」
エンペルトは呆れたのか何も言えず、ぽかんとしている。
「お~い!ド~~ン!………」
外からビッパの嬉しそうな呼び声が聞こえてくる。
「来やがったな…!」
ドンカラスは豆機関銃を器用に二丁、チャキッと構え、窓から飛び出す。

「自分から飛び出して来るなんて、そんなに僕が友達を連れてくるのが楽しみだったかお?今日連れてきたのは寒さに弱いオニゴーリ君…ってドン、その銃はなんだお!?」
「鬼は外でさぁ!!」
バララララ…そんな外から聞こえてくる、静かな森にふさわしくない雑音を聞きながらエンペルトは呟く。
「今年も福は来そうにないポチャ…。」

続かない


「きゃぁぁぁぁぁ…」
ミミロップは見えなくなってしまった。
「ミミロップさーん!」
ロゼリアが呼んでみるが返事が無い。何かあったのだろうか?
「ムウマージがたすけてくる~。」
「そうか。おまえには足が無いからな。連れ戻して来てくれ。」

「ムウマージさん、遅いですねえ…」
あれから五分経ったが、ムウマージの姿はおろか声も聞こえない。しかしその時、
「ただいま~」
「ムウマージ!どうだったか?」
「ムウマージもてない~」
ああ…ゴーストとノーマルは効果がないからな。
「仕方がない。行くぞ。」
俺たちは移動パネルに乗った。

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