第16章 - 2

ボーマンダが飛び去った後、間もなくミミロップ達は目を覚ました。
「う~ん……あれ?私……」
「ふぁ~あ……いつの間に眠ってたんでしょうか?」
「よ~く~ね~た~」
「目を覚ましたか…大丈夫かお前達。特にミミロップ。」
俺は手下達を険しい顔で見る。
「あ、ピカチュウ!そういえば私変な夢見たなー。何かピカチュウが二人いて、それで……あれ?思い出せないけど、確か嬉しいことを言われたような……。」
元気そうなミミロップの顔を見て俺は安心した。
「思い出せないものは思い出さなくていい。それより話したいことがある。実は……」

「あれ?何か足音が聞こえるよ?」
ミミロップが耳をピクピクさせながら言った。俺も耳をすましてみる。
「……これは、人間の足音か?しかも一人や二人じゃないぞ……!」


「まずいな、どこか隠れる場所は……。」
俺は辺りを見回すが、隠れられそうな場所は無かった。
「まずいです、来ますよ!」
ロゼリアが小声で言った瞬間、次々と人間が階段から上がってきた。
(くそ、戦うか………。ん?)

俺は人間達に見つかったと思い身構えた。が、どうも奴らの様子がおかしい。
まず、目がうつろで生気がない。まるで何者かに操られているような……。
「ど、どういうこと?私たちが見えてないの?」
ミミロップがつぶやく。それは俺が聞きたい。

「ま、まさか!」
ロゼリアが急に大声を出した。俺は少し驚く。
「ど~したの~?」
「塔を登るときに話したじゃないですか。108人の人間により封印したポケモンのこと…これはその復活の儀式では?」
そういえばそんな事を話していた。
だがそれには108人の命がいるはず……ここには十数人しかいない。
大人数は入りきれないから何人かに分ける気か……?


しかし妙だ。ダークライの用意した抜け殻は破壊したはず……なのに儀式が継続している。
ということは………

俺は抜け殻を破壊した方を振り返った。
すると、何と抜け殻の破片が宙を舞っている。まさか再生するのか?

その頃、黒いピカチュウは塔の上に浮いていた。
「ククク……そんな簡単に終わらせないぜ。三人の命じゃ大した力はなかったが、次は105人の命をプラスする。まずは優秀な手駒を増やさないとな……。」


俺は再生していく抜け殻に向かって10まんボルトを放つ。しかし全く効果はなく、みるみるうちに再生していく。
「くそ!止まらない…!」
「人間達の血の気がどんどんひいてるわ……。」
「しぬすんぜんだ~」

人間達などどうでもいいが、さすがに死なれると目覚めが悪い。
何より、あのポケモンの手下が増えるのはごめんだ。
もしまた俺の手下に危機が迫ったら……。
俺はそんな思いを電撃に託し、放った。

「諦めてたまるか……ボルテッカー!!」
俺は電気を纏い抜け殻に突進した。抜け殻はすでに形を取り戻しつつある。
「間に合え………!」

「そろそろだな……さあ復活だ!」
塔の上の黒いピカチュウがそう言い放つと、体から黒いオーラがわきでてきた。


「ナイトメア、あくむ、共に最大出力!」
黒いピカチュウから強烈なオーラが塔の最上階に流れ込む。
「準備は整った。さあ出でよ………」

「ぐはあっ!」
黒いピカチュウに向かって、どこからかエネルギー弾のようなものが放たれた。それは見事に命中する。
「今のは、はどうだん!?誰だ………!」
黒いピカチュウは辺りを見回す。すると彼の目に、宙にふわふわ浮かぶ白いポケモンが映った。
「……お前か。何者だ?」
「ここらは僕の散歩コースなんだけど……よそ者が何か用?」
白いポケモンは黒いピカチュウの問いを無視し、はどうだんの力をためはじめた。
(何だこのポケモン……しかしさっきのダメージのせいで儀式が中断してしまったな。邪魔だこいつ……。)
「はどうだん!」
白いポケモンは技を放つ。
「こいつなめやがって……あくのはどう!」
黒いピカチュウも技を放つ。二ひきの技は激しい音をたてて激突した。


二ひきの放った技は見事に相殺された。
(互角だと……?何なんだこいつ…。これ以上派手にやるとまた余計な邪魔が入るかもな……仕方ない。)
黒いピカチュウは大量の霧をまとった。
「逃げるの……?弱虫だね。」
白いポケモンは皮肉混じりに言う。黒いピカチュウはギリッと歯を鳴らした。
「次に会った時……それがお前の最後だ。」
そう言い残すと黒いピカチュウは姿を消した。
「うおお………何!?抜け殻が消えていく……。」

場面は変わって塔内。抜け殻が突然消えたせいで、ピカチュウのボルテッカーは空振りした。
「あ、人間達が倒れていきます!でも顔色も良くなってきてる……。」
どうやら儀式は中断されたらしい。
が、ありったけの力をこめた俺のボルテッカーは止まらない。
「やばいぶつか……ぐわあ!」
俺はすさまじい勢いで壁に激突、貫いてしまった。
「ピ、ピカチュウ!?」
ミミロップが叫ぶ。しかし俺はすでに塔の外であたふたしていた。
「俺としたことが…くそ、落ちる!」


なんとミミロップ達は俺を追って立て続けに俺が貫いた穴から飛び下りた。
「お、お前達まで落ちてどうする!」
「だって、だって心配だったんだもん!」
「つ、つい何も考えずにやってしまいました……」
「ムウマージはういてるけど~つかめない~……」
ムウマージは悲しそうに言う。
このままじゃ地面に叩きつけられて全滅だ……どうする!

(サイコキネシス……)

「な、何??」
突然俺達の落下のスピードが急激に落ちた。そしてゆっくりと地面に降りた。
「な、何だ今のは……。何が起こった?」
俺は周囲を見渡す。
不思議がる俺をよそに、ミミロップ達からワッと歓声があがる。
「奇跡よ奇跡!すごおい!」
「きせき~。」
「奇跡……なのでしょうか。エスパータイプの技のような感じがしましたが……。」
そんな俺達を、遥か上空から白いポケモンが見ていた。

「ふう、危ないな。それにしても変わったピカチュウだね…いつか一緒に遊んでみたいな。」
そうつぶやくと白いポケモンは姿を消した。


一体、何だったのだろう?またミロカロスの仕業だろうか…?
だがいつものアレとはどこか違ったような…。
まあ何であれ全員無事だったのだ、よしとしよう。

異変に気付いた人間の野次馬達が、ポケモンタワーに集まってこようとしているのが見えた。
この場に長居は無用。ほとぼりが冷め人間が散るまでしばらく身を隠し、さっさとこの町を離れるとしよう。
はしゃぐミミロップ達に指示を出し、その場を離れ近くの岩場に身を隠す。

「あら皆さん、お久しぶりですわね。」
そんな時、待ち構えていたかのようにミロカロスが現れた。


やはり先程、俺達を助けたのはミロカロスなのか…?
「げ、ミロカロス…。何んであんたがこんな所にいるのよ~?」
ミミロップが不機嫌そうな顔をして聞く。どうしたというんだ?
「ええ、少しこの町に用事がありますの。」
ミミロップの態度を気にする様子もなくミロカロスは答える。
…今回の事件に関することか?
「それとピカチュウさんにお話があります。またいつものよう…。」
「いいだろう。俺も聞きたいことがある。」

いつものようミミロップ達に下がるように命じた。
ミミロップはよりいっそう不機嫌そうになる。はて?

「何だってのよ~!?」
「気になりますね~。」
「またなにかもらえるの~?」


ミミロップ達が十分離れたことを確認し、ミロカロスにたずねる。
「先程、俺達を助けたのはお前か?」
「? 何のことでしょう?」
ミロカロスは不思議そうに聞き返す。どうやら違うらしい。

「いや、何でもない。気にするな。それで用事、とは?」
「今回の件の後始末です。随分とまあ派手にやってくれたようなので…。人間に私達の存在を気付かれるわけにはいきませんし、ダークライの存在は私達の責任でもあります…。」
………。
「方法は?」
「いつものように。死人は残念ながら戻せませんが他の人間達の記憶を消し、元の場所に帰すことは私達に残された力だけでも可能です。」

はあ、とミロカロスは大きなため息をつく。
「それと塔の壁もどうにかしないといけませんね…。ディアルガめ…後始末の苦労も知らず…。」
……俺も壊したなど言えない。


「…ダークライに関することはもうお聞きになりましたか?」
「…ああ。」
「…またあなた達の前に姿を現すことでしょう。くれぐれもお気を付けて。私達も出来る限りの協力はさせてもらいます。」

「アルセウスは…?」
「…………今はダークライを何とかしなければいけません。」
どういう事なんだ…?
「そうそう、最後に一つ。タマムシシティについて嫌な噂を聞きました。
何でもポケモンを売買している人間の組織のアジトがあるとか…。確かめてみては?」
ロケット団…!

「それでは私はこれで…。」
そう言うとミロカロスは去っていった。

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