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第14章

クチバシティを抜けその北の6番道路添いの林のなか、ピカチュウ一行はイワヤマトンネルを目指し歩いている。

「ねぇ、いい加減機嫌直してよ~、ピカチュウ。」
「うるさい、黙れ。」
ディグダの穴でミミロップ達にからかわれてから、ピカチュウの機嫌は悪いままだ。
ピカチュウはムスッとした顔をしながら、ずんずんと早足でミミロップ達から離れて先を歩く。

「も~…。」
「ミミロップさんがしつこくからかうからですよ~…。」
「むぅ~…。」
「な、何よぅ。ロゼリアちゃん達だってノリノリだったじゃない…。」
「だ、だって~…!」
「ぼわわ~ん…。」
ミミロップ達がごにょごにょやっていると、ピカチュウが苛立ち振り向く。

「遅い、何をやっている!」
「フニャァッ!?」
ドシーン!!
ピカチュウが大声を出すとその声に驚いたのか、何かが木の上から落ちてきた。

「いてててて…何が起こったんだニャ…。」


呆気にとられるピカチュウ達。
「な、何なの?」

木から落ちてきたのはばけねこポケモン、ニャースのようだ。
「あんたが大声出すから、驚いて木から落ちちゃったニャ…。」
「あ、ああ…すまない。」

「でも木の上で何してたのよ…。」
「気持ち良く木の上でお昼寝してたのニャー。それなのにひどいニャ。」
ニャースは安眠を妨害され怒っている。

ミミロップはピカチュウに近付き耳打ちする。
「ね…、どうするの?」
「いつも通りだ。」
「何をひそひそ話してるんだニャー?」
「ああ、すまない。少し俺の話を聞いてもらいたい。」

「ふん、嫌だニャー!ボクはお昼寝邪魔されてご機嫌ななめなのニャー!あんたニャをバリバリ引っ掻かないと気が済まないのニャ!」

いつも通り。


バリバリ引っ掻かれては適わないのでバリバリ痺れさせてやった。
とはいえ安眠を妨げたのは確かにこちらが悪いし、なるべく多くの手下がほしい。
「これで許してくれないか?」
俺が差し出したのはマサキの家から盗んできた、ゲームセンターのコインだった。
「ゆ、許すニャー!きれいニャー。」
どうやらご機嫌が直ったようだ。せっかくだ、6番道路の管理をしてもらおう。
「頼むぞ。」「分かったニャー」

「あれ!コインがないぞ!!泥棒だー!!」
マサキの不幸は続く。

国道を示す6番道路の看板がだんだん古びてきた。
どうやら大都市ヤマブキシティへの道にもっと効率のいい道ができたらしい。

「なんか怖いよ。」
「大丈夫だ、早く来い。置いていくぞ」
俺は後ろも振り向かず憮然として言った。
突然後ろから歩む音が聞こえなくなった。俺が後ろを振り返った次の瞬間――

「じゃあ一人で行けばいいじゃない!」

突然ミミロップが泣き出した。


「…何を言っている?」
突然のミミロップの言葉に俺は驚く。

「何よ、いつも一人で突っ走っていっちゃってさ…。私の気持ちも知らないで…。」
ミミロップはえぐえぐ泣き続ける。
?…何かが不自然だ。ロゼリア達は何処へ?
まわりの景色も歪んでいるような…。木の色も灰色で………。

「…なんてな。」
ミミロップが泣くのを止め黒い稲妻をに放つ!
「!?」
咄嗟に横に飛び稲妻を避ける。
「何をする!?」

「くくく…はーはっは!俺の世界にようこそ、ピカチュウ。」
ミミロップの姿が徐々に…あの黒いピカチュウの姿に変わる。

!!

――その頃、6番道路。
「ピカチュウ!?突然、倒れてどうしちゃったのよぉ!?」
「…寝ているようですが…。」
「くるしいかおで、うなされてる~…。」


「ねえ!起きてよピカチュウ!!」

――とりあえず、こいつを倒さなくてはならない。10万ボルト!
黒いピカチュウは影分身で技をかわす。
「ククク…随分と御山の大将気取りじゃないか。手下はそうは思ってないがなぁ!!」
「黙れ。さっさと消えてもらおう。」
「そうも行かないんだよ。死ね!」
黒いピカチュウが大きく口を開けると、全身から力が抜けていく。なぜだ!

――その頃6番道路。
「う~」
見る見る顔が青ざめるピカチュウ。
「やだよ、やだよ、ねぇ起きてよピカチュウ!!」
必死にピカチュウの体を揺するミミロップから大粒の涙がこぼれピカチュウの体を濡らす。
「ミミロップさん…ピカチュウさん起きてください!」
「おきろ~!」

「――ぐうう。どうやら邪魔が入ったようだ。…しかしまずい夢だ」
「(…夢?)」
「いつか殺してやる。その時を楽しみにするんだな!」
「…」

黒いピカチュウは消え、目を覚ますとミミロップの顔があった。その顔は涙でくちゃくちゃになっていた。


「ん、あ…どうしたお前たち。」
「どうしたじゃないよ。私たちの気も知らないで。一人で突っ走りすぎよ」

――!!まだ終わってないのか!?
俺はとっさに手下たちから距離を取った。

「どうしたんですか?」
「ぼわわ~ん」
色は、ある。ゆがんでもいない。どうやら現実のようだ。

「…すまなかった。ちょっと大人げなかった。許してほしい。」
「許してあげない。」
「ミミロップさん…」
「ゆるしてあげようよ~」
「そうか…ではここでお別れか。」
「バカっ!何言ってるのよ。イワヤマトンネルまでおんぶさせてくれたら許してあげる。」
「バカバカしいっ!…おんぶしてもらおう…」
「ピカチュウは一人で頑張りすぎなのよ。私たちをもっと信頼してよ。」
「ああ、すまない。イワヤマトンネルはこの林道を道なりに行ったところだ。」
「じゃあ、行きましょうか。」

気を取り直して、俺たちはイワヤマトンネルへ向かった。
ミミロップの背中は――非常に心地が良かった。


ミミロップに背負われながら考える。
う~む…何故こんな事に…?うまく乗せられたような…。
威厳も何もあったものではないが、もう疲れて動けん。仕方ない…か。

途中、ヤマブキシティへ黒い服を着た人間達が向かっていくのが見えた。
「あれは何でしょう?」
「おまつり~?」
あれは…いや、おかしい。奴らの組織は何年か前に壊滅した筈だ…。
……疲れて幻覚か何かでも…見ているのだろう…。とても眠い……。
…そういえば…前にも…背中の温もり……どこかで…………。

――なんだ…?夢?
俺がピチューで…ピカチュウに背負われている…?
おかしな夢だ。なんだろうこの夢は…。
だがこのピカチュウの背中…心地いい…。誰なんだろう…。
思い出せない……俺の記憶は…気付けばトキワの森にいて…
その頃から人間への憎しみは強く…そして油断して人間に捕まって……。
そんなこと…今はどうでもいい…か。
この心地良さに身を任せていよう………――


「そういえば、イワヤマトンネルってどんなポケモンたちがいるんですか?」
「…」
「へらへらしたかおでねてる~」
「寝かせておいてあげようよ。ピカチュウも疲れてるんだよ。」
「そうですね。」

一向はイワヤマトンネルの入り口に立った。
「不気味ですね。」
「ムウマージはへいき~…うそ~」
「ピカチュウ、ついたわよ。」
「んん…」

「すごい気持ちよさそうに寝てましたね。」
「へらへらしてた~」
「どうだった?私の背中は。」
「う、うるさい!行くぞ。…お前の背中は最高だったぞ…」
「なんか言った?」
「なんでもない。さっさと行くぞ。」
「あかくなってる~」
「熱があるんじゃないですか?」

一向はイワヤマトンネルに入った。

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